Adobe Lightroom Classic CCでRAW現像をしていると、写真全体の明るさや色調を調整しても、一部分だけが明るすぎたり、反対に暗くなってしまったりすることがあります。
そんな時に役立つのが「補正ブラシ」です。写真の特定の部分だけを選択し、露光量やホワイトバランス、コントラスト、明瞭度などを個別に調整できる部分補正ツールで、風景写真の空や水面、逆光で暗くなった被写体などを自然に仕上げることができます。
この記事では、Adobe Lightroom Classic CCの補正ブラシの使い方を、実際のRAW現像画面と比較写真を交えながら解説します。基本操作から自動マスク、範囲マスクのカラー・輝度を活用した細かな補正方法までご紹介します。
補正ブラシの使用方法
Adobe Lightroom Classic CCの補正ブラシは、写真の一部分だけに明るさや色調の調整を加えられる部分補正機能です。
段階フィルターや円形フィルターが一定の形状を基準に補正範囲を指定するのに対し、補正ブラシはマウスでなぞった場所を自由な形に選択できるため、複雑な輪郭を持つ被写体にも対応できます。
例えば、逆光で暗くなった人物を明るくしたり、風景写真の水面だけホワイトバランスを変更したり、空の一部分だけハイライトを抑えたりすることが可能です。
補正範囲の境界を自然になじませる「ぼかし」や、似た色の領域を判別する「自動マスク」も備えているため、周囲の景色に影響を与えずに細かな調整を行えます。
それでは、Lightroom Classic CCで補正ブラシを使用する具体的な手順を説明していきます。
補正ブラシを使用する下準備
補正ブラシを使用する前に、まず一眼レフカメラやミラーレスカメラで撮影したRAWデータを読み込み、基本補正パネルで写真全体の露光量やホワイトバランス、コントラストなどを調整します。
最初に全体の明るさや色調を整えておくと、部分補正が必要な場所を判断しやすくなり、自然な仕上がりを目指せます。
続いて現像モジュールのツールバーにある、上の画像で赤い丸で囲んだ「補正ブラシ」のアイコンをクリックします。
補正ブラシを選択すると、マウスカーソルが二重の円に変わり、写真上を自由になぞって補正範囲を指定できるようになります。
補正ブラシで写真の一部分をなぞる
補正ブラシを選択した状態で、写真の上をマウスでドラッグすると、なぞった部分に補正用のマスクが作成されます。
画面上に表示される二重の円は、内側がブラシの中心部分、外側がぼかしを含む範囲を示しています。
現像モジュール右側のパネルでは、ブラシの「サイズ」「ぼかし」「流量」「密度」を変更できます。
広い範囲を補正したい場合はブラシのサイズを大きくし、輪郭の細かい部分を調整する場合はサイズを小さくすると作業しやすくなります。
また、ぼかしを大きく設定すると、補正した部分と補正していない部分の境界が滑らかになり、自然な仕上がりになります。
補正範囲を確認したい場合は、画面下部の「選択したマスクオーバーレイを表示」にチェックを入れます。
すると、ブラシでなぞった部分が赤く表示され、どの範囲に補正が適用されるのかを視覚的に確認できます。
赤色の濃淡はマスクの適用状態を示しており、ブラシの流量や密度、重ね塗りなどによって変化します。実際の明るさや色調の変化は、補正パネルの設定値によって決まります。
マスクの確認が終わったら、チェックを外すか「O」キーを押すことで赤い表示を非表示にできます。
画像を拡大して細かい部分を仕上げる
補正ブラシで広い範囲を塗り終えたら、写真を拡大して被写体の輪郭や細かな部分を仕上げていきます。
補正ブラシを使用している間は、写真上でドラッグするとマスクが作成されるため、左側のナビゲーターパネルから「1:1」や「1:2」などの拡大率を選択すると便利です。
今回の作例では、桜が咲く風景写真の水面だけを補正するため、岸辺や周囲の景色にはみ出さないようにブラシで丁寧になぞっています。
水面と岸辺の境界を明確に分けたいので、ブラシのぼかしは使用せず、輪郭に沿って細かく塗り分けています。
ただし、ぼかしを完全になくすと補正範囲の境界が目立つ場合があるため、写真の内容によっては少しぼかしを加えた方が自然に仕上がります。
もし補正範囲がはみ出してしまった場合は、右側のブラシ設定から「消去」を選択し、不要な部分をなぞることでマスクを取り除けます。
細かな輪郭ほど拡大表示と小さなブラシを組み合わせ、補正範囲を確認しながら作業することがポイントです。
マスクオーバーレイを非表示にして部分補正を調整する
補正する範囲を指定できたら、マスクオーバーレイを非表示にして、実際の写真を確認しながら明るさや色調を調整していきます。
右側の部分補正パネルには、露光量、コントラスト、ハイライト、シャドウ、明瞭度、色温度、色かぶり補正などの設定項目があります。
今回の作例では、黄緑色が強く出ている水面の色調を改善するため、ホワイトバランスの色温度を寒色方向に調整し、色かぶり補正もマゼンタ方向へ変更しています。
これにより、水面の黄緑色が抑えられ、青みを帯びた透明感のある色調に近づきました。
補正ブラシを使用するメリットは、写真全体のホワイトバランスを変更することなく、選択した水面だけに色調補正を加えられる点です。
桜や山、空など、マスクに含めていない部分の色調はそのまま維持できるため、風景写真の雰囲気を損なわずに特定の部分だけを調整できます。
補正前後の写真を比較する
上の写真は、Lightroom Classic CCの補正ブラシを使用する前と、使用した後の仕上がりを比較したものです。
左側が補正前、右側が水面のホワイトバランスを部分的に調整した写真になります。
補正前の水面は黄緑色が強く、やや濁った印象になっていましたが、色温度を青方向、色かぶりをマゼンタ方向へ調整することで、黄緑色が抑えられ、涼しげで美しい水面の表現になりました。
もちろん、RAW現像によって実際の水の濁りが取り除かれるわけではありませんが、色のバランスを変更することで、写真から受ける印象を大きく変えることができます。
このように、Lightroom Classic CCの補正ブラシを使えば、水面だけの色調補正や、特定の被写体の明るさ調整など、写真全体に影響を与えない細かなRAW現像が可能になります。
応用:自動マスクを使用して輪郭に沿って補正する
補正ブラシには、写真の色の違いを利用して、補正範囲が周囲にはみ出しにくくなる「自動マスク」という便利な機能があります。
自動マスクにチェックを入れると、ブラシの中心付近にある色を基準として、似た色の領域を判別しながらマスクを作成します。
例えば、上の写真のように空だけを補正したい場合、自動マスクを有効にして空の部分をなぞると、山や水面など、色の異なる部分へのはみ出しを抑えながら補正範囲を指定できます。
通常の補正ブラシでは山の輪郭に沿って細かく塗り分ける必要がありますが、自動マスクを使うことで作業の手間を減らせます。
ただし、自動マスクは被写体の輪郭を完全に認識する機能ではありません。空と雲のように色や明るさが異なる部分では、補正したい領域の一部が選択されないことがあります。
反対に、補正対象と背景の色が似ている場合は、意図しない場所までマスクが広がることもあります。
そのため、自動マスクを使用した後はマスクオーバーレイで選択範囲を確認し、塗り残した部分を追加したり、はみ出した部分を消去したりして仕上げるとよいでしょう。
応用:範囲マスクのカラーで特定の色を選択する
補正ブラシの自動マスクだけでは、写真の色が複雑に入り交じる部分を綺麗に選択できないことがあります。
そんな時に役立つのが「範囲マスク」のカラーです。
範囲マスクのカラーは、補正ブラシで指定した領域の中から、特定の色に近い部分だけを選択し、補正範囲をさらに絞り込める機能です。
まず補正ブラシで大まかな範囲を塗り、右側のパネルにある「範囲マスク」から「カラー」を選択します。
次に、スポイト状の色域セレクターを使い、補正を適用したい部分の色をクリックしてサンプリングします。
すると、最初にブラシで指定した範囲の中から、選択した色に近い部分を中心に補正が適用されるようになります。
複数の色を選択したい場合は、Shiftキーを押しながらクリックすることで、最大5つまでカラーサンプルを追加できます。
また、「適用量」のスライダーを調整すると、選択した色に近い範囲を狭めたり広げたりすることが可能です。
適用量を下げると選択される色の範囲が狭まり、上げると近い色まで含まれやすくなります。
この機能を利用すれば、空と山、植物と背景など、色の違いが明確な被写体の部分補正をより正確に行えます。
ただし、補正したい場所と補正したくない場所の色が似ている場合は、範囲マスクのカラーだけでは綺麗に区別できないこともあるため、ブラシの消去機能などを組み合わせて調整してみてください。
応用:範囲マスクの輝度で明るさに応じた補正範囲を指定する
範囲マスクには、カラーのほかに「輝度」を利用して補正範囲を指定する機能もあります。
カラーが色の違いを基準にするのに対し、輝度は写真の明るさを基準として補正範囲を絞り込める機能です。
例えば、明るい雲と暗い地面が同じ写真に写っている場合、補正ブラシで広い範囲を選択して露光量を上げると、地面だけでなく雲も明るくなってしまいます。
そんな時は、範囲マスクの輝度を使い、明るい部分を補正対象から外すことで、暗い地面や被写体を中心に明るく調整できます。
使用方法は、補正ブラシで大まかな範囲を指定した後、「範囲マスク」から「輝度」を選択します。
輝度の範囲は0~100の数値で指定でき、暗い部分から明るい部分まで、どの明るさの領域に補正を適用するかを調整できます。
さらに「滑らかさ」のスライダーでは、選択した輝度範囲と、それ以外の部分との境界をどの程度滑らかにつなぐかを変更できます。
上の写真では、明るい雲の部分をできるだけ維持しながら、地面や鯉のぼりの明るさを調整するように補正範囲を設定しています。
このように輝度を利用すると、明るい空を必要以上に明るくせず、暗く写った被写体の階調を引き出すことができます。
ただし、撮影時点で完全に白飛びして階調情報が失われている部分は、範囲マスクやハイライト補正を使用しても元のディテールを復元できるとは限りません。
RAW現像では、撮影時に記録されている階調情報を生かしながら、明暗のバランスを整えることが重要です。
まとめ
Adobe Lightroom Classic CCの補正ブラシは、写真全体の色調を維持したまま、必要な部分だけを明るくしたり、ホワイトバランスやコントラストを変更したりできる便利なRAW現像ツールです。
風景写真の空や水面、逆光で暗くなった被写体など、全体補正だけでは思い通りに仕上がらない部分も、補正ブラシを活用することで細かく調整できます。
また、自動マスクや範囲マスクのカラー・輝度を組み合わせれば、複雑な輪郭や明暗差のある写真でも補正範囲を絞り込みやすくなります。
最初はブラシで細かい範囲を塗り分ける作業に手間取るかもしれませんが、サイズやぼかし、消去機能を使い分けることで、徐々に思い通りの補正ができるようになります。
写真の一部分だけが明るすぎる、暗すぎる、色が合わないと感じた時は、補正ブラシによる部分補正を試してみてください。全体の雰囲気を損なわず、より自然で美しい写真に仕上げることができます。














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