最大4チャンネルのXLR/TRSコンボ入力を備え、ファンタム電源の供給にも対応。一眼レフカメラのレンズを交換するような感覚でマイクカプセルを付け替え、様々な収録環境に対応できるハンディ型リニアPCMレコーダー「ZOOM H6」のレビューです。
※ZOOM H6の後継シリーズとして、32bitフロート録音に対応した「ZOOM H6essential」が登場しています。本記事でレビューしているのは旧型のZOOM H6です。
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32bitフロート録音とは何ぞや?と思った方には、同じく32bitフロート録音に対応したZOOM F3のレビュー記事をご紹介します。
11年間使い続けたZOOM H4nのこと
ZOOM H4nを初めて購入したのは、2009年のこと。
当時はソニーの民生用ビデオカメラで撮影していたのですが、オーディオの自動レベル調整機能が悪さをして一定の音量で収録できないだけでなく、外部マイクを使用しても手動で録音レベルを調整できませんでした。
そこで散々悩んだ挙げ句、外部で収録した音声と映像をミックスすればいいんじゃないかと思い、導入したのがZOOMのハンディレコーダーH4nです。
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当時のYouTubeでは音声を高音質で収録している人が少なく、私が見ていた範囲では珍しい試みでしたが、音量が大きい場面でも音割れすることなく収録できました。
これほど長く使い続けたのには理由がありまして、2011年3月11日に発生した東日本大震災で自宅が浸水し、ほぼ全ての家財が使い物にならなくなった中、唯一無事だった機材がZOOM H4nでした。
ステンレス製の防湿庫を作って保管していたのですが、津波で浸水した後、庫内に水が溜まっていたのには苦笑いするしかありませんでした。それでも生き残ったZOOM H4nは、自分にとってお守りのような存在でした。
実際のところ、XLR端子に外部マイクを接続する使い方がほとんどだったのですが、内部で接触不良を起こすようになってからも補修しながら騙し騙し使い続けていたため、今回ZOOM H6に買い替えることになったのです。
リニアPCMレコーダーZOOM H6のレビュー
中古だけど綺麗なケース付きで届きました
どのくらい使用されていたのかは分かりませんが、今回は中古で安いZOOM H6を見つけたので、そちらを購入しました。
前オーナーが丁寧に扱っていたのでしょうけど、ケースは傷も少なく、とても綺麗な状態で届きました。
2020年に発売されたマイナーチェンジ版のZOOM H6/BLKにはMSステレオマイク・カプセルが付属しませんが、今回購入した旧型H6の中古品には同梱されていました。
ソフトウェアのライセンスやクイックガイドは付属していませんでしたが、MS処理に使用するMSデコーダーのVSTプラグインは、Adobe Auditionに読み込ませることで使用できました。
ZOOM H4nとH6の外観・操作性を比較
接触不良を起こしていたH4nのXLR端子は、硬化型のシーリング材でがっちり固めて動かないようにしていたのですが、もともとXLR端子と本体ケースの間に隙間があり、コネクターを何度も抜き差ししているうちに内部で接触不良(基板の剥がれ?)を起こすようになってしまいました。
H6の外観が汚れて見えるのは、表面のラバーコーティングが経年劣化でべたついてしまうためのようで、中古で購入したこの個体に限らず、マイナーチェンジ前のZOOM H6では同じような状態になることがあるようです。
この個体も見た目がかなり汚くなっていたので、ラバーコーティングを剥がしてしまいました。
シリコンオフでラバーコーティングを地道に剥がしたところ綺麗になりましたが、ペイントリムーバーやシンナーは下地まで溶かしてしまうことがあるため、使用しないように注意が必要です。
H4nとH6を比較すると本体は一回り大きくなっていますが、操作性はかなり改善されています。以前は本体側面の録音レベル調整ボタンを押し、調整するトラックを選択してからレベルを変更するという3段階の操作が必要でしたが、H6では設定メニューを呼び出さずに、本体上部のダイヤルで各入力の録音レベルを個別に調整できるようになりました。
ただし、ハイアングルで撮影する場合には必ずしも使いやすいとは言い切れず、ダイヤルの側面にも数字を記載してくれていたら良かったんじゃないかとも思います。
従来の機種では大音量を収録する際、外部アッテネーターを間に入れないと過大入力になってしまうことがありましたが、ZOOM H6には各入力に-20dBのPADスイッチが備わっているため、大音量の収録時にも外部アッテネーターを使わずに入力信号を減衰させることができ、便利になりました。
また、H4nではモノクロでオレンジ色のバックライトだった液晶モニターがH6ではフルカラーになり、夜間のような暗い場所でも設定内容やレベルメーターがとても見やすくなっています。
カメラのレンズ感覚で交換できるマイクカプセル
ZOOM H6では、一眼レフカメラのレンズのような感覚でマイクカプセルを付け替えることができます。
標準のXYステレオマイクのほかにも、ショックマウント搭載のXYステレオマイクやMSステレオマイク、ショットガンマイクなど、収録する場所や用途に応じて選択できるオプションが用意されています。
ちなみに、オプションのXLR/TRSコンボ入力カプセル「EXH-6」を取り付ければ外部機器を最大6チャンネル接続できるようになりますが、追加される2チャンネルからはファンタム電源を供給できない仕様になっています。
長時間の運用が可能になった電源関係
ZOOM H4nは単3電池2本で駆動していたため、+48Vのファンタム電源を供給すると1時間も経たないうちに電池切れを起こしてしまうことがありましたが、上位機種のH6は単3電池4本で駆動するため、以前よりも長時間録音できるようになりました。
メーカー公表の連続駆動時間は、16bit/44.1kHzのステレオ録音時で20時間以上となっていますが、私の使用環境ではファンタム電源を使用すると20~30分で電池残量表示が1目盛り減るため、長時間の撮影には外部電源が欠かせません。
背面の1/4インチネジ穴の下側が窪んでいるため、雲台との接触面積が少なく不安定に感じるかもしれませんが、前後のバランスが取れているので、実際に取り付けた際にぐらつきは一切ありませんでした。
H4nでは外部電源として基本的に専用ACアダプターを使用する仕様でしたが、H6ではUSBケーブルを介した外部給電も可能になりました。
以前、SATOYAMA Video Channel様にZOOM H6のことを教えていただいた際、ノイズが入るという話を聞いていたのですが、電源関係のノイズではないかと考えています。
内蔵電池やQC(Quick Charge)に対応していないモバイルバッテリーでは問題がなかったのですが、カメラのVマウントバッテリーから出力される14.8V以上の電圧を5Vに降圧し、USB端子から供給した際には音声にノイズが乗ったため、今のところは電圧変換用コンバーターから電源経由でノイズが混入している可能性が高いのではないかと考えています。
ちなみに、H4nを壊してしまった原因はこれだったのかもしれません。モバイルバッテリーから丸形プラグに変換して5Vの電源を供給していたのですが、専用ACアダプター以外の電源を使用しないよう取扱説明書に注意が記載されていたのには、それなりの理由があったのだと思います。
とはいえ、ファンタム電源が必要なペアマイクを使うと、あっという間に電池切れになってしまうので、仕方がなかった部分でもあります。
その点では、H6のUSB給電がとても助かります。
LINE OUTとHEADPHONE OUTが独立してモニタリングしやすくなった
ZOOM H4nではライン出力とヘッドフォン出力に共通の端子を使用していたのですが、H6ではそれぞれ独立した端子が設けられ、ヘッドフォンでモニタリングしながらDSLRカメラなどの音声入力端子にも接続して収録できるようになりました。
音声のモニタリングとカメラへの出力を別々に扱いたいときに不便だった部分なので、改善されていたのが良かったです。
ZOOM H6の使用感と動画サンプル
やはり外装のべたつきは気になる部分ですが、H4nと比較すると収録中の設定変更や録音レベルの調整が以前よりも容易になり、とても扱いやすくなった印象を受けました。
特に録音レベルの調整がダイヤル式になり、PADスイッチが搭載されたことで対応できる入力レベルの幅が広がったうえ、LCDディスプレイもカラーになって録音レベルや設定内容が一目で分かるようになったのは、本当に素晴らしい進化だと感じました。
機能が増えた分だけ本体が大きくなったのは仕方ないと割り切るしかないのですが、カメラバッグのZOOM H4nを入れていたスペースに収まらなくなってしまった点については、改めて考えるしかないと思います。
また、H4nでは起動後のSDカードの読み込みに時間がかかり、撮り逃してしまうこともありましたが、H6では私の使用環境で起動時間とSDカードの読み込み時間が大幅に短くなり、電源を入れてから5秒以内に録音を開始できるようになりました。
ZOOM H6の音質比較用サンプルとして、交換式のXYマイクとM/Sマイク、外部マイクのMXL CR21で収録した音声を、Blackmagic Pocket Cinema Camera 6Kで撮影した仙台空港の旅客機の離着陸映像と組み合わせた動画を用意しました。
このカメラは色の表現がとても綺麗で、映像に関しては申し分のない性能を発揮するのですが、内蔵マイクと音声入力のどちらも、私にとっては満足できる音を収録できないという欠点があります。
ZOOM H6 ASMR Handy Recorder with XY Microphone | Plane Spotting at Sendai Airport
のっぺりとした音になりやすい印象があるXYマイクですが、今回の収録では従来機種よりも音の立体感が強調され、音源の位置関係がしっかり伝わる音になったと思います。
低域が少々物足りない感じはありますが、14.6mmの大口径ダイヤフラムを搭載したXYH-6は高域が落ち着いて全体的にナチュラルな音になり、繊細な音まで収録できるようになった印象を受けます。
また、今回の撮影では吹かれノイズの影響も比較的少なく、屋外でもXYマイクカプセルで十分に綺麗な音を収録できました。
M/S Microphone for ZOOM H6 LPCM Recorder | Plane Spotting at Sendai Airport Shot on BMPCC 6K
旧型H6に付属するM/Sマイク(MSH-6)は、今回の収録では特にサイドマイクの感度が低く、レベルを上げるとノイズが耳障りになってしまうため、これ以上録音レベルを上げることはできませんでした。
M/S処理を行うと、滑走路の手前にある道路の音と一緒にノイズも大きくなってしまうため、離れた場所から音を収録する用途ではイマイチな結果となりましたが、XYマイクで収録したときよりも吹かれノイズの影響は少なく、ほとんど気にならない程度に収まっているようです。
どちらかというと、狭いホールで大編成の演奏を近くから収録するときの方が、向いているマイクなのではないかと思います。
MXL CR21 Pair Condenser Microphones with ZOOM H6 | Plane Spotting at Sendai Airport
ZOOM H6の3/4トラックをステレオリンクさせ、今年の夏から使用しているステレオペアマイクのMXL CR21を接続して音を収録しました。
+48Vのファンタム電源で駆動するステレオペアマイクなのですが、ZOOM H6の交換式マイクカプセルよりも低域がしっかりしていて重厚感のある音を収録でき、1万円台の低価格マイクでありながら、そのコストパフォーマンスの高い音質には驚いています。
新品で6万円以上するRODE NT4からの乗り換えではありますが、音質が低下したという印象もなく、すんなりと受け入れることができました。
H4nに接続したときと比べて音質に大差はないと思っていたのですが、外部マイクの音も以前より繊細で、音の再現力が明らかに良くなった印象があります。しかし、その分、左右のバランスを合わせるための微調整がシビアになった感じもします。
もう一点、ステレオリンクでXLR端子からの入力を1つのステレオトラックとして収録する際は、1と2、3と4の組み合わせ以外ではリンクできないため、使い慣れないうちは左右が分からなくなってしまうこともあります。
筆者の場合は3と4のトラックをステレオリンクさせ、XLR端子付近にL/R表示を書いたシールを貼って対応しましたが、ステレオリンク時には片方のダイヤルを録音レベル調整に、もう片方を左右のバランス調整に割り当てられる機能があった方が、操作は楽になるように感じます。
長年使ってきたH4nが使用できなくなってしまったのは寂しいのですが、中古でもZOOM H6を購入して良かったと思います。
初代H6の後、2020年3月にはマイナーチェンジ版の「ZOOM H6/BLK(Black Edition)」が発売されました。本体表面がラバーコーティングからシボ塗装に変更され、MSステレオマイクカプセルなどが付属しなくなりましたが、基本的な録音性能は旧型H6と同等です。
経年劣化によるラバーコーティングのべたつきを除去できる人や、あまり気にしない人なら旧型H6の中古品もお得な選択肢になりますが、正直なところ、あの触り心地はかなり気持ち悪いです。
当時は旧型H6の中古品とH6/BLKの新品にそれほど価格差がなかったため、価格差が小さいのであれば新品のH6/BLKをおすすめしたいところです。
ZOOM H6のスペック
記録メディア
SDカード 16MB~2GB
SDHCカード 4GB~32GB
SDXCカード 64GB~128GB
音声入力
マイクカプセル
XYH-6 (XYマイク)
マイク: 単一指向性
感度: –41dB/1Pa 1kHz
入力ゲイン: -∞〜46.5dB
最大入力音圧: 136dB SPL
XYH-6 (MIC/LINE IN)
コネクタ: 1/8″ステレオミニジャック
入力ゲイン: –∞〜46.5dB
入力インピーダンス: 2kΩ
プラグインパワー: 2.5V対応
MSH-6 (MSマイク)
マイク: 単一指向性&双指向性
感度: –37dB/1Pa 1kHz(単一指向性)
–39dB/1Pa 1kHz(双指向性)
入力ゲイン: – ∞〜42.5dB
最大入力音圧: 120dB SPL(単一指向性)
122dB SPL(双指向性)
SGH-6 (ショットガンマイク)
マイク: 単一指向性(マイクユニット×3)
ポーラーパターン: スーパーカーディオイド
感度: –39dB/1Pa 1kHz (各マイクユニット)
入力ゲイン: –∞〜50dB
最大入力音圧: 122dB SPL
INPUT 1~4
コネクタ: XLR/TRS コンボジャック
(XLR:2 番ホット / TRS:TIP ホット)
入力ゲイン(PAD OFF): – ∞〜55.5dB
入力ゲイン(PAD ON): – ∞〜35.5dB
入力インピーダンス: 1.8kΩ or more
最大許容入力レベル: +22dBu(PAD ON)
ファンタム電源: +12/+24/+48V
(INPUT1 ~4個別にON/OFF)
入力換算雑音(EIN): –120dBu 以下
音声出力
LINE OUT
コネクタ: 1/8″ステレオミニジャック
定格出力レベル: –10dBu (出力負荷インピーダンス 10kΩ以上時)
PHONE OUT
コネクタ: 1/8″ステレオミニジャック
出力レベル: 20 mW + 20 mW into 32 Ω load
スピーカー: 400mW 8Ωモノラルスピーカー
記録フォーマット
WAV
サンプリング周波数: 44.1/48/96kHz
量子化ビット数: 16/24bit
(モノ/ステレオ、BWF準拠)
最大同時録音トラック数: 8 (通常最大6トラック+L/Rのバックアップステレオ録音2トラック)
(バックアップ録音: L/Rの入力ゲイン設定から–12dB)
MP3
サンプリング周波数: 44.1kHz
ビットレート: 48〜320kbps
(最大同時録音トラック数: 2)
録音時間 (2GBカード使用時)
3 時間8 分(WAV 44.1kHz/16bit)
34 時間43 分(MP3 128kbps)
ディスプレイ
2.0インチ フルカラーLCD(320 x 240 ピクセル)
USB
マスストレージクラス動作
クラス: USB2.0 High Speed
オーディオインターフェース動作:マルチトラックモード
クラス: USB2.0 High Speed
入出力チャンネル: 6 IN / 2 OUT
サンプリング周波数: 44.1/48/96kHz
量子化ビット数: 16/24 bit
※ USBバスパワーで駆動に対応
オーディオインターフェース動作:ステレオモード
クラス: USB2.0 Full Speed
入出力チャンネル: 2 IN / 2 OUT
サンプリング周波数: 44.1/48kHz
量子化ビット数: 16 bit
※ USBバスパワーで駆動に対応
※iPad用オーディオインターフェース動作サポート(ステレオモードのみ)
電源
単3電池 × 4 本
アルカリ電池またはニッケル水素電池を使用可能
AC アダプタ: DC5V / 1A (別売AD-17)
USB バスパワー
電池寿命
連続駆動時間: 20時間以上 (アルカリ電池使用、16bit/44.1kHz WAVフォーマットでのXYステレオ録音時)
外形寸法 / 重量
H6本体 77.8mm (W) x 152.8mm (D) x 47.8mm (H), 280g
XYH-6: 78.9mm (W) x 60.2mm (D) x 45.2mm (H), 130g
MSH-6: 58.0mm (W) x 67.6mm (D) x 42.1mm (H), 85g
付属品
取扱説明書
XYマイク・カプセル(XYH-6)
MSマイク・カプセル(MSH-6)
単3電池 × 4 本
USBケーブル
ウィンド・スクリーン(スポンジ)
Steinberg Cubase LE (ダウンロード・ライセンス)
Steinberg WaveLab LE (ダウンロード・ライセンス)
キャリングケース
ZOOM H6の購入
ZOOM H6の後継シリーズとして、32bitフロート録音に対応した「ZOOM H6essential」が登場しています。
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32bitフロート録音とは何ぞや?と思った方には、同じく32bitフロート録音に対応したZOOM F3のレビュー記事をご紹介します。















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