秋田県大仙市の雄物川河川敷(大曲花火大橋下流)で開催される「大曲の花火 全国花火競技大会」は、長岡まつり大花火大会や土浦全国花火競技大会とともに、日本三大花火の一つに数えられる全国屈指の花火大会です。全国から選抜された花火師たちが、日本の花火界で最高峰の栄誉とされる内閣総理大臣賞を目指して競い合い、精巧な10号玉や独創的な創造花火を披露します。大曲の花火ならではの競技内容や見どころに加え、2017年大会で撮影した迫力ある大会提供花火や美しい競技花火の映像を紹介します。
全国花火競技大会の歴史
花火の街として知られる秋田県大仙市で開催される「大曲の花火 全国花火競技大会」は、1910年(明治43年)に諏訪神社の祭典余興として始まった「第1回奥羽六県煙火共進会」を起源としています。当時、東北各地の有名花火師が一堂に会して技術を披露する催しは珍しく、花火文化の発展に大きく貢献しました。
当時の大曲では、花火製造の先進地であった三河国(現在の愛知県)の花火師による共進会も同時に開催されており、その高度な製造技術に刺激を受けた地元の花火師たちは、新たな技術の習得と品質向上に取り組むようになりました。その後、1915年(大正4年)に「全国煙火大競技会」、1946年(昭和21年)に「全国花火競技大会」へと名称を変更し、全国の花火師が技術と芸術性を競う大会へと発展しました。
1964年(昭和39年)には、従来の割物花火とは異なる表現方法を競う「創造花火」が正式な競技種目として加わり、2000年(平成12年)からは総合優勝者に内閣総理大臣賞が授与されるようになりました。100年以上の歴史を受け継ぐ大曲の花火は、花火師たちが技術を磨き、その成果を披露する日本を代表する競技大会となっています。
全国花火競技大会の内容
例年8月の最終土曜日に秋田県大仙市の雄物川河川敷で開催される全国花火競技大会は、新潟県長岡市の「長岡まつり大花火大会」や茨城県土浦市の「土浦全国花火競技大会」と並び、日本三大花火の一つに数えられています。
一般的な花火大会とは異なり、全国から選抜された花火業者が作品の完成度や芸術性を競うことが最大の特徴です。競技は「昼花火の部」と「夜花火の部」に分かれ、夜花火では「10号芯入割物の部」「10号自由玉の部」「創造花火の部」の3種目が行われます。
内閣総理大臣賞が授与される花火競技大会は、大曲の全国花火競技大会と土浦全国花火競技大会の2大会であり、大曲では参加業者の選抜や過去の競技成績に応じた定期的な入れ替えも行われています。花火師にとって出場そのものが大きな目標となる大会であり、各業者が技術と創造性を尽くして製作した花火が雄物川の夜空を彩ります。
また、競技花火のほかにも、大規模なワイドスターマインが展開される大会提供花火や、ナイアガラを使用したオープニング花火などが用意されています。精巧な一発の花火をじっくり鑑賞する競技と、広い打ち上げ幅を生かした迫力ある演出の両方を楽しめることも、大曲の花火の魅力です。
昼花火の部
2017年 大曲の花火 全国花火競技大会 昼花火
夕方から行われる「昼花火の部」は、明るい時間帯に煙の色彩や形状、変化する様子を競う、日本で唯一の昼花火競技大会です。以前は内閣総理大臣賞を決定する総合審査の対象外でしたが、2017年からは昼花火の成績も総合評価に加えられるようになりました。
競技では5号玉を5発打ち上げ、色鮮やかな煙で模様を描く「煙竜」や、大きく広がる煙が菊花火のように見える「煙菊」など、昼間でも美しく観賞できる花火が披露されます。夜花火とは異なり、煙の色彩や変化、形の美しさ、作品タイトルとの整合性などが重要な評価要素となります。
夜空に輝く花火とは一味違い、青空や夕暮れの空に色とりどりの煙が広がる幻想的な光景は、大曲の花火ならではの見どころです。掲載している2017年の大曲の花火「昼花火の部」の動画では、各花火師が趣向を凝らした作品の数々を紹介しています。
10号玉の部
夕方の昼花火が終了すると、いよいよ夜花火の競技が始まります。夜花火では、直径約30cmの10号玉(尺玉)による芯入割物花火と自由玉をそれぞれ1発ずつ打ち上げ、さらに創造花火を披露して審査が行われます。
10号芯入割物花火は、三重芯以上の菊花火を課題玉として打ち上げ、その完成度を競う種目です。花火が開花した際に、外側の親星を含めて四つの同心円を描く「三重芯」や、五つの同心円を描く「四重芯」、さらに高度な製造技術が求められる「五重芯変化菊」など、精巧な芸術花火が披露されます。
芯の数が多ければ高く評価されるわけではなく、開花した花火が真円に近い形を保ち、それぞれの芯が均等な間隔で同心円状に広がることが重要です。さらに、星(花火の色や光を生み出す火薬の粒)の燃焼時間が揃い、全体が美しく消えていくことも完成度を左右します。
花火玉の製造段階で生じたわずかな配置のずれや星の大きさの違いが、上空で開花した際には大きな形の乱れとなって現れるため、芯入割物花火の製作には非常に高い精度が求められます。日本の花火師が長年培ってきた技術を間近で比較できることも、この競技ならではの醍醐味です。
一方、2発目に打ち上げられる10号自由玉は、課題玉とは異なる自由な発想で製作された花火を競う種目です。芯入割物花火が形の正確さや技術的な完成度を重視するのに対し、自由玉では独創性や色彩の美しさ、作品タイトルと表現内容の一致などが見どころとなります。花火師ごとの個性が色濃く表れるため、同じ10号玉でも全く異なる美しい開花を楽しめます。
創造花火の部

大曲の花火で「創造花火の父」と呼ばれる故・佐藤勲氏の発案によって、1964年(昭和39年)に正式な競技種目となったのが「創造花火の部」です。従来の割物花火のように丸く開花する形にとらわれず、自由な発想で設定したテーマを花火の色彩や形態、打ち上げのリズム、空間的な広がりなどによって表現します。
音楽と花火をシンクロさせるミュージックスターマインに似た演出も見られますが、創造花火では単に音楽に合わせて打ち上げるだけではなく、作品タイトルに込められた世界観をどのように表現するかが重要になります。
花火師によって演出方法は大きく異なり、美しい色彩の変化や立体的な構成、音楽や効果音を組み合わせた独創的な作品が次々と登場します。個々の花火の完成度だけではなく、作品全体の芸術性や構成力も楽しめる競技です。
日本最高峰の花火競技大会を楽しむコツ
日本の花火大会ランキングでも上位に挙げられることが多い大曲の花火ですが、圧巻の大会提供花火やフィナーレに注目が集まる一方で、花火師たちが競い合う競技そのものについては、詳しく知らない方もいるのではないでしょうか。
大会提供花火は観覧客を魅了する大規模な演出として人気がありますが、大会の中心となるのは、全国の花火師たちが技術と芸術性を競う競技花火です。競技には多くの時間が割かれており、一発ごとの完成度や演出の違いをじっくり鑑賞することができます。
特におすすめしたいのは、花火のプログラムに記載されているタイトル(玉名)を確認しながら観賞することです。例えば、芯入割物花火では円の重なり方や星の消え際に注目し、自由玉や創造花火では、作品名から想像するイメージが実際の花火でどのように表現されているかを見比べてみると、今まで気づかなかった花火師の工夫や技術の高さを感じられます。
審査員になった気持ちで、それぞれの花火の美しさや独創性を比較してみるのも、大曲の花火ならではの楽しみ方です。実際の大会で観覧することはもちろん、撮影した競技花火の動画を見返しながら細かな表現の違いを楽しむこともできます。
大曲の花火 関連動画
2017年 大曲の花火 全国花火競技大会 大会提供花火「生命のまつり」
2017年8月26日に開催された第91回全国花火競技大会の大会提供花火「生命のまつり」です。この年から打ち上げ幅が約900mに拡大され、音楽に合わせて色鮮やかな花火が次々と打ち上がる、迫力あるワイドスターマインが披露されました。
大会前日までの豪雨によって雄物川河川敷が冠水し、開催が危ぶまれる状況でしたが、関係者による懸命な復旧作業によって無事に大会が開催されました。一部に点火されなかった花火も見られたものの、夜空いっぱいに広がる美しい花火は、開催に至るまでの苦労を感じさせる印象深いプログラムとなりました。
2017年 大曲の花火 全国花火競技大会 特別プログラム「美しき世界」野村花火工業株式会社
大曲の花火100年記念大会が開催された2010年の翌年、2011年から新設された特別プログラムです。前年度の内閣総理大臣賞を受賞した花火業者が担当し、音楽に合わせたワイドミュージックスターマインを披露します。
2017年大会では、前年の総合優勝者である茨城県の野村花火工業株式会社が「美しき世界」を担当しました。繊細な色彩表現と音楽に合わせた美しい打ち上げが見どころで、競技花火とは異なる華やかな演出を楽しめます。
2017年 大曲の花火 全国花火競技大会 オープニング ナイアガラ付スペシャルスターマイン
夜花火の開幕を告げる「ナイアガラ付スペシャルスターマイン」は、大曲の花火のオープニングを飾る華やかなプログラムです。2017年大会では、津雲優さんが歌う「夢の空」に合わせ、全長約700mに及ぶナイアガラとワイドスターマインが展開されました。
横一列に流れ落ちる光の滝と、その上空に次々と開花する花火が重なり合う光景は迫力があり、大曲の花火の夜の始まりにふさわしい演出となっています。
2017年 大曲の花火 全国花火競技大会 最優秀賞 野村花火工業株式会社
2017年の第91回全国花火競技大会で、最優秀賞となる内閣総理大臣賞を受賞した茨城県の野村花火工業株式会社による競技花火の映像です。
10号芯入割物花火では「昇曲付五重芯変化菊」、10号自由玉では「キラキラ万華鏡」を打ち上げ、両部門で優勝しました。さらに創造花火「光の鼓動~むすんでひらいて~」でも準優勝を獲得し、総合優勝に輝いています。
五重芯変化菊の精巧な同心円や、自由玉の色鮮やかな光の変化、創造花火の表現力など、日本最高峰の花火師が持つ技術と芸術性を楽しめるプログラムです。
2017年 大曲の花火 全国花火競技大会 創造花火 優勝「水辺に集う蛍」有限会社 伊那火工堀内煙火店
2017年大会の創造花火の部で優勝した、長野県の有限会社伊那火工堀内煙火店による「水辺に集う蛍~光を燈し・舞う~」です。
10号芯入割物花火と10号自由玉でも高度な技術を披露しましたが、特に印象的だったのが、この創造花火です。一般的なミュージックスターマインのように音楽を中心とした演出ではなく、水辺を思わせる効果音とともに、蛍が光を放ちながら舞う様子を夜空に表現しています。
淡い光が静かに現れ、無数の蛍が集まって乱舞するような幻想的な演出は、創造花火ならではの独創性と美しさを感じさせる作品でした。
他にもYouTubeでは、大曲の花火をはじめ全国各地で撮影した花火大会の映像を公開しています。大会提供花火や競技花火など、さまざまなプログラムを紹介していますので、ぜひご覧ください。
Youtube リンク
大曲の花火 交通アクセスや日程情報
| 開催場所 | 東北地方/秋田県大仙市大曲 雄物川河川敷(大曲の花火公園) |
| 開催日時 | 2019年8月31日(土) 昼花火17:15~18:00/夜花火18:50~21:30 |
| 花火打ち上げ数 | 約18,000発 |
| 観覧場所 | 会場内は全て有料(2019年当時) A席(定員6名)23,000円・C席(定員5名)15,000円・パイプイス席(定員1名)3,000円 ベンチ席(定員3名)12,000円・車イス席(定員4名)14,000円 有料自由観覧エリア(1名)1,000円(当日販売) |
| 交通アクセス | 秋田自動車道 大曲ICから約7km JR大曲駅から徒歩約30分 ※大会当日は交通規制や周辺道路の混雑があります。 |
| マップコード | 138 731 610*24 |
| 関連ウェブサイト | 大曲の花火 |
この記事に掲載している開催日時や観覧席の料金などは、2019年大会の情報に基づいています。開催年によって日程や料金、観覧エリア、交通規制などが変更される場合がありますので、観覧を予定される方は公式ホームページで最新情報をご確認ください。








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