映像撮影やYouTubeライブ配信、家庭用テレビやプロジェクターの接続など、離れた場所までHDMIケーブルを延ばしたい場面は意外と多いものです。しかし、一般的なHDMIメタルケーブルは長くなるほど信号が減衰し、特に4K/60Hzなどの高帯域な映像信号では、画面が映らない、映像が途切れるといったトラブルが発生する可能性があります。
長距離のHDMI伝送には、信号を補正するイコライザーを内蔵したアクティブHDMIケーブルや、LANケーブルを利用するHDMIエクステンダーなどの方法がありますが、以前から気になっていたのが光ファイバーを使用するHDMIケーブルです。
そこで今回は、比較的安価に購入できるAmazonベーシックの61メートルHDMI光ファイバーケーブルを実際に導入し、3メートルのHDMIメタルケーブルとの比較によって、映像と音声の遅延や画質の違い、長距離伝送の安定性を検証してみました。さらに、花火大会のライブ配信でも使用したので、実際の撮影現場での使用感も含めてレビューします。
Amazon Basic HDMI光ファイバーケーブルをレビュー
家電量販店で市販されているHDMIメタルケーブルとは?
家電量販店などで一般的に販売されているHDMIケーブルは、銅などの金属導体を使用して映像と音声のデジタル信号を伝送する、いわゆるメタルケーブルです。一般的なHDMI Type Aコネクターには19本のピンがあり、映像や音声のデータだけでなく、接続機器の情報をやり取りするための信号も伝送しています。
HDMIケーブルには規格上の一律な最大長が定められているわけではありませんが、ケーブルが長くなるほど信号の減衰や波形の乱れが大きくなり、高解像度や高フレームレートの映像を安定して伝送することが難しくなります。特に4K/60Hzなどの高帯域な映像では、ケーブルの品質や接続機器の性能によって、数メートルから10メートル程度でも正常に表示できない場合があります。
ただし、HDMIはデジタル伝送なので、ケーブルが長いからといって映像の色が徐々に薄くなったり、解像感が少しずつ失われたりするわけではありません。信号を正常に受信できなくなると、画面のちらつきやノイズ、映像の途切れ、ブラックアウトなどの症状が発生します。
今回の撮影環境では、パソコンに接続したビデオキャプチャーボードとカメラの設置場所を大きく離す必要がありました。USBケーブルにも規格や伝送速度に応じた長さの制約があり、USB 2.0の一般的なパッシブケーブルでは最大5メートルが目安となるため、パソコン側ではなくカメラ側のHDMIケーブルを延長する方法を選びました。
さすがに50メートルを超える距離を一般的なHDMIメタルケーブルで安定して伝送するのは難しいと考え、Amazonベーシックの61メートルHDMI光ファイバーケーブルを購入することにしました。
HDMI光ファイバーケーブルの構造
HDMI光ファイバーケーブルは、入力側のコネクター内部にある変換回路で電気信号を光信号に変換し、光ファイバーを通して伝送した後、出力側のコネクターで再び電気信号に戻す仕組みになっています。
光ファイバーは銅線と比較して長距離伝送に適しているほか、電磁ノイズの影響を受けにくいという特徴があり、4Kなどの高画質な映像を離れた場所まで伝送する用途にも向いています。
また、HDMI光ファイバーケーブルには、映像や音声の高速データを光ファイバーで伝送し、機器間の通信に使用する制御信号などを金属導体で伝送するハイブリッド構造の製品があります。
ただし、光ファイバーを使用していれば、どのような機器でも問題なく接続できるわけではありません。HDMIではEDIDによる機器情報の取得やHDCPによる認証、CECによる機器制御なども行われており、ケーブルの構造や接続機器との相性によっては、映像が正常に表示されても一部の制御機能が動作しない場合があります。
実際に、長距離のHDMI光ファイバーケーブルを使用した際、映像は伝送できてもカメラの制御が正常にできなかったという事例もあるので、撮影機材の遠隔操作などに使用する場合は事前の確認が必要です。
今回購入したAmazonベーシックのHDMI光ファイバーケーブルは、製品説明でARCやHDCP、EDID、CECなどへの対応が案内されているタイプです。内部を分解して確認したわけではありませんが、構造としては光ファイバーと金属導体を組み合わせたハイブリッドケーブルに近いものだと考えられます。
それにしても、61メートルという長さになると、ケーブルを広げるだけでも大変ですね。
HDMI光ファイバーケーブルには向きがある
一般的なHDMIメタルケーブルは基本的にどちらの向きでも接続できますが、HDMI光ファイバーケーブルは信号を電気から光へ、光から電気へ変換する回路を内蔵しているため、接続する方向が決められている製品がほとんどです。
AmazonベーシックのHDMI光ファイバーケーブルも方向性があり、コネクターに「SOURCE」と記載されている側をカメラやパソコンなどの映像出力機器に、「TV」と記載されている側をテレビやビデオキャプチャーボードなどの映像入力機器に接続します。
逆向きに接続しただけで直ちに故障するとは限りませんが、基本的に正常な映像伝送はできません。HDMI光ファイバーケーブルを接続しても画面が映らない場合は、まずコネクターの向きを確認してみてください。
ビデオキャプチャソフトでHDMI光ファイバーケーブルを使用してみた
長距離のHDMI光ファイバーケーブルを導入するうえで気になっていたのが、映像と音声の遅延です。特にライブ配信では、カメラから取り込んだ映像と、別のオーディオインターフェースから入力した音声を同期させる必要があるため、ケーブルの違いによって遅延が発生するのかを確認してみました。
テストでは、カメラとビデオキャプチャーボードを3メートルのHDMIメタルケーブル、またはAmazonベーシックの61メートルHDMI光ファイバーケーブルで接続し、2台目のノートパソコンにインストールしたOBS Studio(Open Broadcaster Software)で映像を録画しました。
音声については、ZOOM H4nをオーディオインターフェースとして使用しています。カメラの映像とZOOM H4nの音声は別々の経路でパソコンに入力されるため、OBSで音声の同期オフセットを調整し、それぞれのケーブルを使用した場合の違いを比較しました。
最初に3メートルのHDMIメタルケーブルで録画した映像をAdobe Premiere Proに読み込み、カメラの前でスティックを叩いた瞬間の映像と音声波形を比較しました。
映像に記録されたスティックの動きと実際に音が発生したタイミングを確認し、その差を基準としてOBSの音声同期オフセットを設定しています。
Premiere Proのタイムライン上では、音声波形の表示と実際に音が聞こえる位置に1フレーム程度の違いがあるようにも見えましたが、波形の表示だけで判断せず、映像を再生しながら音のタイミングを確認して調整しました。
続いて、同じ環境で61メートルの光ファイバーHDMIケーブルを使用して録画したところ、3メートルのメタルケーブルと比較して、音声のタイミングに約0.01秒の違いがあるように見受けられました。
ただし、今回の比較ではカメラやビデオキャプチャーボード、OBSの録画処理、音声入力などの影響を完全に切り分けていないため、この差がHDMI光ファイバーケーブル自体の遅延によるものだとは断定できません。
実際の録画映像を確認した限りでは、映像と音声が大きくずれるような問題は発生しておらず、3メートルのHDMIメタルケーブルと61メートルの光ファイバーHDMIケーブルで、体感できるほどの遅延差はありませんでした。少なくとも今回のOBSライブ配信環境では、長距離伝送による遅延を過度に心配する必要はなさそうです。
次に、HDMI光ファイバーケーブルによって映像の画質に違いが出るのかを確認するため、3メートルのメタルケーブルと比較して大きな違いを感じなかったQING CAOQINGの光ファイバーHDMIケーブルと、Amazonベーシックの光ファイバーHDMIケーブルを比較してみました。
比較した画像では、Amazonベーシックの方が発色が弱く、コントラストもやや低く見えるという結果になりました。
ただし、HDMIはデジタル信号を伝送する規格であり、同一の映像信号が正常に伝送されている場合、ケーブルの長さや材質だけで色味やコントラストが変わることは基本的にありません。
今回の違いについては、接続機器間で認識された映像信号の形式やRGBレンジ、色空間、ビデオキャプチャーボードの設定などが影響している可能性もあり、Amazonベーシックのケーブルそのものが映像を劣化させたとは判断できません。
厳密に画質の違いを検証するのであれば、解像度やフレームレート、色空間などの出力条件を統一し、取り込んだ映像データを比較する必要があります。
とはいえ、今回の目的は低予算で50メートルを超えるHDMI長距離伝送を実現することだったので、61メートルという距離でも映像と音声を正常に取り込めた点には満足しています。音声についても、実際に聞き比べた限りでは明確な音質の違いは感じられませんでした。
高画質な4K映像を長距離伝送する場合は、ケーブルの対応帯域だけでなく、使用するカメラやキャプチャーボードとの互換性を確認することも重要です。安定した伝送が難しい場合には、長距離伝送に対応した業務用HDMIケーブルやHDMIエクステンダー、ワイヤレスHDMIなども選択肢になると思います。
ライブ配信でHDMI光ファイバーケーブルを使用してみた
みさと花火2022/08.14/LIVE配信はこちら!(一般社団法人 美里町物産観光協会より)
今回の61メートルHDMI光ファイバーケーブルを購入した大きな理由が、宮城県美里町で行われる花火大会のライブ配信でした。
当時のライブ配信では、インターネット接続に使用する光回線を近隣の方からお借りしていたため、カメラを設置する撮影場所と配信用パソコンの間に距離があり、長いHDMIケーブルで映像を伝送する必要がありました。
そこで、Amazonベーシックの61メートルHDMI光ファイバーケーブルを使用してカメラとビデオキャプチャーボードを接続し、OBSからYouTubeへのライブ配信を行いました。
上記の動画は、2022年8月14日に開催された「みさと花火」のライブ配信映像です。会場で打ち上がる花火の迫力や臨場感をリアルタイムで届けるため、カメラで撮影した映像を長距離のHDMI光ファイバーケーブルで伝送しました。
コロナ禍の2年間にわたって実際のライブ配信で使用しましたが、いずれもHDMIケーブルが原因と考えられる大きな伝送トラブルは発生せず、安定して映像を取り込むことができました。
ライブ配信では撮影機材の設置場所が制限されることも多いので、これだけ長いHDMIケーブルを使用できるのは大きなメリットだと思います。事前に映像信号の形式や接続機器との相性を確認しておけば、イベント撮影や花火大会のライブ配信などでも十分に活用できる製品だと感じました。
長いケーブルは巻き取りドラムでどうにかなった!
61メートルものHDMIケーブルを撮影現場で使用する際、映像の伝送性能と同じくらい気になったのが、ケーブルの巻き取りと持ち運びです。
実際に使用してみると、ケーブルを手作業で巻き取るのは想像以上に大変だったので、ホームセンタームサシで販売されていた巻き取りドラムを導入してみました。
ドラムを使用することで長いケーブルを比較的簡単に収納できるようになり、撮影現場での準備や撤収も楽になりました。使用したドラムは曲げ半径に余裕があり、巻いた状態でも映像信号を伝送できています。
ただし、光ファイバーケーブルは強く折り曲げたり、無理な力を加えたりすると、内部の光ファイバーが損傷したり、信号の損失が増加したりする可能性があります。製品ごとに許容される最小曲げ半径が異なるため、巻き取りドラムを使用する場合も、ケーブルをきつく曲げないように注意が必要です。
また、ドラムに巻いたまま使用できたとしても、すべての製品で同じように正常な伝送ができるとは限りません。特に撮影現場では、ケーブルを踏んだり、強く引っ張ったりしないように気を付けたいところです。
ちなみに、HDMIコネクターにテープを巻いているのは、コネクターが破損したからではありません。
屋外での撮影や設営、撤収を繰り返しているうちに、コネクターに印刷されている「SOURCE」と「TV」の文字が消えてしまう可能性を考え、接続方向が分からなくならないように目印を付けています。
光ファイバーHDMIケーブルは向きを間違えると映像が映らないため、このような小さな工夫も撮影現場でのトラブル防止に役立つと思います。
まとめ
Amazonベーシックの61メートルHDMI光ファイバーケーブルを使用して、3メートルのHDMIメタルケーブルとの遅延比較や画質の確認、OBSでの録画テスト、さらに実際の花火大会でのYouTubeライブ配信まで検証してみました。
購入後には100回程度の動作テストも行いましたが、今回の撮影環境では61メートルという長距離でも安定して映像と音声を伝送できており、通常のHDMIメタルケーブルでは難しい距離を比較的低予算で接続できたことに満足しています。
映像と音声の同期についても、今回のテストでは体感できるほどの遅延差は確認できませんでした。一方、画質比較では色味やコントラストに違いが見られたものの、ケーブル自体の問題なのか、機器の設定や映像信号の形式によるものなのかは特定できていません。
HDMI光ファイバーケーブルを導入する際は、必要な長さだけでなく、4K/60Hzなどの解像度やフレームレート、伝送帯域、接続方向、機器との相性、ケーブルの曲げ半径などを確認しておくことが重要です。
特に屋外での映像撮影やライブ配信では、当日に映像が映らなくなると大きなトラブルにつながるので、使用する機材をすべて接続した状態で、事前に十分な動作確認を行うことをおすすめします。
50メートル以上の長距離HDMIケーブルを探している方や、離れた場所に設置したカメラの映像をOBSに取り込んでライブ配信を行いたい方は、Amazonベーシックの光ファイバーHDMIケーブルも検討してみてはいかがでしょうか。
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