夏になると全国各地で花火大会が開催され、美しい打ち上げ花火や迫力のある花火の音を楽しむ人々で賑わいます。しかし、その大きな音が怖い、苦手だと感じる人も少なくありません。
花火の打ち上げ音をはじめ、雷や工事現場の騒音、バイクのエンジン音など、日常生活のさまざまな音に強い苦痛を感じる場合は、「聴覚過敏」という症状が関係している可能性があります。
周囲の人が症状に気づき、適切な配慮や対策を受けられている人がいる一方で、本人も周囲も聴覚過敏について知らず、単に大きな音が苦手なだけだと思いながら過ごしている人もいます。
今回は、花火大会の大きな音が怖い人や聴覚過敏のある子どもへの対策として、症状の特徴や原因、イヤーマフを使った騒音対策などについて解説します。
大きな音が怖い聴覚過敏とは?
出典:イラストAC
聴覚過敏とは、一般的には気にならない程度の音でも過度に大きく感じたり、特定の音に強い不快感や苦痛を覚えたりする症状です。
難聴などの聞こえにくさに対する理解や対策が進められている一方で、聴覚過敏は外見から症状を判断することが難しく、周囲に理解されないまま日常生活を送っている人もいます。
聴覚過敏は、それ自体が一つの独立した病気というよりも、さまざまな原因や状態に伴って現れる症状として捉えられています。そのため、単に音に敏感な人や、大きな音が嫌いな人だと誤解されることもあります。
症状の程度には個人差がありますが、花火や雷などの突然発生する大きな音だけでなく、バイクのエンジン音、工事現場の騒音、掃除機の運転音、食器が触れ合う音など、身近な生活音にも強い苦痛を感じる場合があります。
症状が強い人にとっては、周囲の人が何気なく聞いている音でさえ耐え難い刺激となり、耳を塞いだり、その場から離れたりしなければならないこともあるのです。
聴覚過敏には、耳の病気や聴覚に関係する神経の働きなどが影響する場合があるほか、ASD(自閉スペクトラム症)などの発達特性に伴って見られる場合もあります。また、不安やストレスなどの心理的な要因が症状に関係することもあり、原因や症状の現れ方は一人ひとり異なります。
ただし、大きな音が怖いというだけで必ずしも聴覚過敏とは限らず、特定の音に対する恐怖や嫌悪感など、別の状態が関係している可能性もあります。
聴覚過敏には原因や症状の仕組みが十分に解明されていない部分もあるため、日常生活に支障が出るほど音がつらい場合は、耳鼻咽喉科などの医療機関に相談することが大切です。
聴覚過敏の対策方法は?
聴覚過敏による音の苦痛を軽減する方法の一つとして、耳全体を覆うイヤーマフや耳栓などの聴覚保護具があります。
防音イヤーマフはヘッドフォンに似た形状をしていますが、音楽を聴くための製品ではなく、周囲から耳に入る音を小さくするための保護具です。大人用だけでなく子ども用の製品も販売されており、花火大会や運動会、工事現場の近くなど、大きな音が発生する場所での騒音対策に利用できます。
イヤーマフを使用することで、それまで苦痛に感じていた音が軽減され、外出やイベントへの参加がしやすくなる場合があります。花火の音が怖くて観覧できなかった子どもでも、適切な対策によって安心して楽しめるようになる可能性があります。
ただし、イヤーマフを装着すればすべての音が聞こえなくなるわけではなく、遮音性能や装着状態によって効果は異なります。特に花火のような大きな音に対しては、打ち上げ場所から十分な距離を取ることや、無理に会場へ近づかないことも重要です。
また、音への過敏さがあるからといって、静かな場所でも常にイヤーマフや耳栓を使用し続けると、かえって日常の音に敏感になる場合があります。大きな音から耳を守る必要がある場面で活用しながら、症状に応じた使用方法を医療機関などに相談するとよいでしょう。
周囲に大きな音を苦手とする人がいる場合は、本人の感じている苦痛を理解し、イヤーマフなどの使用を勧めたり、静かな場所へ移動できるよう配慮したりすることが大切です。
イヤーマフは見た目がヘッドフォンに似ているため、聴覚過敏について知らない人から、音楽を聴いていると誤解されることもあります。しかし、本人にとっては苦痛を軽減するために必要な保護具である場合もあるため、周囲の人が勝手に取り外したり、使用をやめるよう強制したりしないようにしましょう。
聴覚過敏の症状や聴覚保護具の使用目的を周囲に理解してもらうため、㈱石井マーク様が「聴覚過敏保護具シンボルマーク」を制作し、2017年10月から無償公開しています。
このマークは、イヤーマフなどが聴覚過敏の対策に使用する保護具であることや、装着している人が音に対する苦痛を感じやすいことを周囲に伝えるためのものです。
聴覚過敏は外見から症状が分かりにくいため、このようなシンボルマークが広まることで、本人が周囲から誤解される機会を減らし、必要な配慮を受けやすくなることが期待されます。
聴覚過敏のある人はもちろん、家族や友人、学校や職場など、多くの人にこのマークの意味を知っていただければ幸いです。
最後に
聴覚過敏という症状が少しずつ知られるようになってきた一方で、花火大会や除夜の鐘などの大きな音を苦手とする人への理解は、まだ十分とはいえない部分があります。
大きな音に対する感じ方は人それぞれ異なり、多くの人が楽しんでいる花火でも、強い苦痛や恐怖を感じる人がいることを忘れてはいけません。
一方で、音が苦手だという理由だけで周囲の行事をすべて中止することも、現実的には難しい問題です。花火大会のように迫力のある音も魅力の一つとなっているイベントでは、主催者と地域住民、観覧者が互いの立場を理解し、できる範囲で配慮し合うことが大切だと思います。
聴覚過敏のある人にとっては、イヤーマフなどの聴覚保護具を使用したり、大きな音が発生する場所を避けたりすることが、日常生活の負担を減らす一つの方法になります。
ただし、事前の告知がないサプライズ企画などで突然大きな音が発生する場合は、自分で対策することが難しくなってしまいます。少なくとも近隣住民には企画の内容や実施時間を事前に伝えるなど、主催者側にも配慮が必要ではないかと感じています。
花火を楽しみたい人と大きな音が苦手な人が、お互いを否定することなく理解し合える環境が広がってほしいと思います。










除夜の鐘は聴覚過敏の人で苦しんでいる人も多いので、やっぱり時代に合わないと思いますね