動画撮影でカメラの内蔵マイクの音質では物足りない!セッティングの仕方で音の広がり方が劇的に変わる、2本のステレオペアマイクを使用した高音質で臨場感あふれるマイクの設置方法をご紹介します。
10年前ぐらいのフィールドレコーダーやステレオマイクは、XYステレオ方式のマイクを採用している製品が多かったため、それがベストなセッティングなのだろうと思っていたのですが、設置方法によって音の広がり方が変わる様々な方式がある事を知りました。
現在はステレオペアマイクを使用して、フィールドによって設置方法を変更しているのですが、その中から特によく知られているステレオマイクの設置方法を紹介します。
記事内の目次
はじめに
マーチングバンドを中心に吹奏楽演奏の収録を担当する事があるのですが、それまで使用していたXYステレオ方式のマイクから自由な配置が可能なステレオペアマイクに変更して収録をするようになりました。
30メートル四方の広いフィールドで、多い時には150人以上の団体が演奏するマーチングバンドにおいては、現地で生音を聞くと150人が一気に演奏をするような場面でも演奏者の位置関係や音の広がり、歓声などが組み合わされて、迫力のある音と美しい音色を体や耳で体感できます。
地方の大会でも全国大会でも映像や音を収録するのは、ほとんど一社に決まっているのですが、大会では無い時の隙間産業的な存在ながら、マイクの設置方法を研究しておりました。
まず初めに気づいたのは、同じ業者だとしても、会場によってマイクの設置方法が違う点です。
マイクの設置方法の種類は後ほど説明をしますが、2本のマイク感覚を大きく広げていたり、1本のマイクスタンドで2本のペアマイクに角度を付けて設置したりなど、開催する会場によって様々なのです。
設置方法の違いやミキシングの技術が凄いのは分かっていますけど、マイクセッティングがしっくりくると聴いていて全身が震えてしまいそうなほどの広がりと現地で聞いているような臨場感あふれる音を収録しているのですよね。
4年前ぐらいにその事に気づいてからは、音声収録について学び直す必要はあるのだなと感じておりました。
様々なマイク設置方法
複数のマイクを持ち込んでしっかりとミキシングをするのが確実な方法だとは思いますが、限られた人数やスペースで必ず出来るかと言うとそうではありません。
まず初めにマイクの購入が必要になってきますが、無理をしない範囲で誰でも気軽に良い音で収録するのであれば、ペアマイクか一体型のステレオマイク、またはフィールドレコーダーが理想となります。
接続方法はもちろん大事ですが、収録するフィールドによって設置方法を変えるのであれば、マイクのポーラパターンを理解してく必要はあります。
フィールドレコーダーやステレオマイクのほとんどにCardioid(単一指向性)のマイクカプセルが取り付けられていますが、マイクのカタログや取扱説明書にはどの範囲の音を効率よく集音出来るかを表すポーラパターンが表記されているとは思います。
私が使用しているマイクの場合は、横方向の音まで広く拾ってくれるタイプの単一指向性なので問題は無いのですが、o度の正面方向に対して横方向の感度が低い場合は、水平方向にマイクの角度をつけすぎるとセンター付近の音量が低くなる中抜けという現象が起きやすくなってしまうのでご注意下さい。
A-Bステレオ方式
最もポピュラーなステレオ録音方式ですが、音源から音が到達するまでの時間差(ハース効果)によって自然なステレオ感を生み出す方式で、左右のマイクの感覚を20cmから1mまたはそれ以上広げて、正面方向に向けて設置するのが一般的です。
左右のマイクを設置する位置が限られて狭くなってしまう場合は、ステレオ感が薄れてしまう事もありますが、中抜けはしにくくなる方式になります。
XYステレオ方式
A-Bステレオ方式は無指向性のマイクが使われる例が多いのもありますが、フィールドレコーダーや左右一体型の単一指向性ステレオマイクに多く取り入れられているセッティング方法です。
90度から120度方向にマイクカプセルを重ねるようにクロスさせて、左右のマイクで拾う音の時間差を最小限に抑えながら適度なステレオ感も得られる方式なのですが、収録するフィールドが広い場合にはステレオ感が薄くなって、実際に聴いた音よりも収録した音の方が音像が狭くなっている印象は受けます。
XYステレオ方式は他の方式に比べて左右の位相差が少ないので、ステレオからモノラルに変換しやすいというメリットもあります。
NOSステレオ方式
オランダ公共放送が考案したステレオマイクセッティング方式で、オランダ放送協会 (Nederlandse Omroep Stichting)を略したNOSが名称に付けられている設置方法です。
単一指向性マイクを使用して左右のマイクカプセルの間隔を30cm離し、角度を外側に90度傾けて、音量感と自然なステレオ感を両立させて収録できます。
マイクの設置場所が狭い場合には有効なセッティング方法ですが、指向性が狭く横方向の感度が低い場合には中抜けしやすくなってしまうので、その場合には角度を浅くするなどの工夫が必要になります。
打ち上げ花火等のように極端にセンター付近の音圧が高くなってしまう条件では、反響音や歓声も同時に収録するためにこの方式をよく使用しています。
ORTFステレオ方式
フランス公共放送の頭文字から名付けられたORTFステレオ方式と呼ばれているマイク設置方法で、左右のマイクカプセルの間隔を17cm、角度を110度に配置します。
NOSステレオ方式と同様に音量感と自然なステレオ感を両立させる事が出来ますが、思想的にはバイノーラルに近く、人体の構造を元に考案した方式なのだそう。
また、ボディが長いマイクの場合には重ねて設置をしなくてはいけなくなるので、少々扱いにくい印象も受けます。
打上花火の中でも打ち上げ幅が広いワイドスターマインでは、この方式を使用する事がありますが、指向性が狭い単一指向性マイクではセンター付近の音圧が小さくなる中抜けはNOS方式よりも起こしやすくなります。
参考にした映像とまとめ
STEREOBLADE MOTORIZED STEREO BAR (AB, XY, ORTF, NOS, DIN…) | Sennheiser MKH 8020 8040 Comparison
Youtube channel : AUDIOFACHWERK
これらのマイクセッティングを試した映像がYouTubeで公開されていたので、こちらの映像を参考にしましたが、私個人的にはXYステレオからORTFステレオマイクに切り替わる時の音が理想であると感じました。
フィールドによって変わりますが単一指向性マイクの場合には、15度から60度の範囲で外側に傾けるA-BステレオとNOSステレオ方式の中間が音量感と自然なステレオ感が得られているのではないかと私は感じております。
ハマると気持ちの良い音で収録出来るのですが、準備や片付けに手間がかかってしまったり動ける範囲が狭くなってしまう場合もあるので、こだわりすぎには注意して下さい。
日本国内においては、映画であっても2倍速で見たりする人が多い中で、こだわっていてもそこまで見てくれている人の比率はかなり少ないとは思いますが・・。
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