トヨタのMクラスミニバンである、90系ヴォクシーハイブリッドの電気式4WD車、E-Fourで宮城県と山形県を結ぶ山岳道路、蔵王エコーラインを走行してみました。なんちゃって4WDとも言われるE-Fourですが、積雪路面での実際の走行性能や特性などをレビューしていきます。
記事内の目次
トヨタ90系ヴォクシーハイブリッドE-Fourで積雪路面の山岳道路を走行してみました!
トヨタ新型ヴォクシーとノアのE-Four
トヨタのハイブリッド車に搭載しているE-Fourは、前輪をガソリンエンジンとフロントモーターで駆動し、後ろに駆動用のリアモーターを搭載してプロペラシャフトを介さずに後輪を駆動する電気式4WDの事です。
今までのE-Fourはリアモーターの出力が極端に低く、30km/hまでしかアシストをしてくれない仕様で、発進時以外はほぼリアモーターが駆動力を生み出さない「なんちゃって4WD」とも世間では言われていたのです。
ところが新型の90系ヴォクシーとノアのハイブリッドでは第五世代のTHSⅡを初めて採用して、リアモーターの出力は30kW(41ps)、最大トルクも84N・m(8.6kgf・m)まで拡大し、モーターがアシストできる最高速度も150km/hまで伸びたとの事。
この出力とトルクがどのぐらいかと言うと、通称軽トラと呼ばれるアクティやハイゼットトラックよりも最大出力が少し低くて、最大トルクは1000ccのNAエンジンを搭載しているコンパクトカーと同じぐらいになります。
0発進や低回転から最大トルクと最高出力を発揮するモーターの特性上、速度が上がれば全く同じにはならないのですが、軽トラや1000ccクラスのコンパクトカーのエンジンで後輪を駆動しているぐらいの出力と思っておいて良いでしょう。
実際に積雪路面の山岳道路を走行してみました。
走行したのは、宮城県と山形県を結ぶ蔵王エコーラインで、宮城県側は蔵王のお釜、山形県側は蔵王の樹氷で知られる山形蔵王温泉を通る山岳道路です。
冬は積雪による冬季区間規制を行っているため、蔵王エコーラインを通って両県を往来する事が出来ませんが、宮城県側は蔵王連峰の標高1100メートル地点にある「すみかわスノーパーク」付近まで走行をする事が可能です。
比較的緩やかなように見えて、傾斜がきつい所では約10%前後の勾配があるらしいのですが、登りながら加減速をする急カーブあり、スキー場のコースが開放されていなければ通行する車両も少なくて、積雪路面の走行性能を試すには最高のロケーションです。
冬季通行止め区間の手前付近まで行けば5cmぐらいは雪が積もっておりましたが、12月の積雪量としてはかなり少ない方で、近年の暖冬傾向が徐々に強まってきている様子も伺えます。
上り勾配は滑っている様子も少なくぐいぐい進む!
滑りにくい雪質だった事もありますが、グリップしていない方向に滑っていくようなFFらしい滑り方をするわけではなく、リアモーターが適度にアシストしながらぐいぐい登って行き、ある程度速度が出てフロントタイヤがスリップしていない状態を検知し続けると、徐々にリアモーターの出力を下げてFF走行に自動で切り替わります。
FFでの走行に切り替わったとしても、スリップして前輪と後輪の回転差を検出すれば、リアモーターを駆動させて再び四輪駆動に移行、トルク配分はFF走行で前輪100:後輪0固定になりますが、リアモーターでアシストしている時は、最大で前輪20:後輪80まで臨機応変に駆動力を配分します。
滑ればTRCが効いてくるけど、そもそもTRCが効くほど滑る事自体が少なく、あえてべた踏みでもしないとスリップしているような感覚がほとんどありませんが、凍結気味の路面ではリアタイヤも一時的に滑っている時もあるので、それなりにリアモーターも仕事をしてくれているのは、アクセルを踏み込んだフィーリングで感じます。
その一方で下りの減速時には、モーターが発電をする際の抵抗を利用した回生ブレーキが前後軸ともに効いてくるので、FFハイブリッド車の前輪だけの回生ブレーキやFFガソリンエンジン車のエンジンブレーキよりも、より安定した減速も可能にしています
上りのカーブで実感するリアモーターの力!
Snow driving at Zao Japan | dashcam | TOYOTA 90 VOXY HYBRID S-Z E-FOUR ZWR95W
FF車やFR車を乗り継いでいるので積雪路面の蔵王エコーラインを走る時の特性は分かっているのですが、4輪駆動車を所有したのは90系ヴォクシーが初めてです。
FF車で積雪路面のカーブ出口付近で加速を始めると、アンダーステアが強く出て外に膨らんでいく傾向がありますが、90系ヴォクシーハイブリッドE-Fourは乾燥路面のカーブでもトルク配分をリアに寄せながら加速を始め、外に膨らみにくいような制御を行います。
路面を蹴っているというよりは、後輪が加速時の抵抗にならないようにバランスを保ちながら押しているような感覚で、そこそこ強めにアクセルを踏みこむとリアモーターがアシストしている事を体感できる事もあります。
かなり強めにアクセルを踏み込んだ後に、アクセルをオフにすると、リアモーターの駆動力が抜けるまでのタイムラグがあるのか、それとも1.7tの車重のせいなのか、外側に滑ったら少々収まりが悪そうな挙動をしたのは少し気になる所。
FFとFRを運転している時のフィーリングとは特に違うと感じたのはここでしたが、パニックになるほど長く続くような滑り方ではなく、アクセルを抜いた時にグリップが戻るのが少し遅いと感じる程度です。
よっぽどオーバースピードでカーブに突っ込んでいかなければ、雪道でも思っていた以上に普通に走れるというのが90系ヴォクシーとノアのE-Fourの特徴なのだと思いますが、制御自体は日産のアテーサE-TSなどに代表される電子制御トルクスプリット式4WDのFF版に近いのだと思います。
燃費は落ちるけど買って後悔はしない
元々雪がそんなに積もらない地域に住んでいるため、ヴォクシーを購入する時はFFにするか4WDにするか迷いましたが、通常走行時にFFよりも燃費が落ちたとしても、雪まつりや冬花火を実施する雪深い地域に行くためのハイブリッドE-Fourを選んだのは正解でした。
ガソリンエンジンであれば、ある程度回転数が上がらなければ最大トルクにはならないけど、電気式モーターは0発進から最大トルクを発揮できるので、雪道での発進や低速での旋回時は想像していた以上に、フロントタイヤのグリップ力を補う制御をしてくれています。
FF車同様に雪道の走行には充分注意が必要な事は当然ですが、「なんちゃって4WD」とはもう言わせたくない、トヨタのプライドさえも感じられます。
雪がほとんど降らない地域に住んでいたり、ウィンタースポーツなどをするわけではないと言う人は、FFの方が燃費面でもお得になると思いますが、雪の多い地域や不整地を走る機会が多い人は、E-Fourを選んだ方が楽しめると思います。
ちなみにタイヤはブリヂストンのブリザックVRX3ですが、E-Fourの性能だけではなく、タイヤの性能が良かった事も今回の雪上走行で結果が良かった理由としてあるのでしょう。
雪上を走るのであればブリザックにしておけば、まず間違いないです。
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