2022年6月23日、Blackmagic DesignからBlackmagic Pocket Cinema Camera 4K/6K/6K Proに対応するファームウェア「Blackmagic Camera 7.9」が公開されました。
2021年2月にBlackmagic Pocket Cinema Camera 6K Pro(BMPCC6K Pro)が発売され、同年4月にはBMPCC4K/6Kにも第5世代カラーサイエンスを導入する大型アップデート「Blackmagic Camera 7.3」が公開されましたが、今回のCamera 7.9は、BMPCC4K/6Kのユーザーにとって約1年2か月ぶりとなる大きな機能改善です。
新たにジャイロスコープのメタデータを使用した手ブレ補正への対応や、ユーザーインターフェイスの刷新、フォーカスアシストの調整機能などが追加され、従来機種の操作性が大きく向上しました。
この記事では、Blackmagic Camera 7.9のアップデート内容と、実際にBMPCC6Kへ導入して感じた改善点、同時に発表されたBMPCC6K G2と6K Proの違いについて解説していきます。
BlackmagicCamera7.9の概要
2021年4月26日に公開されたBlackmagic Camera 7.3では、BMPCC4K/6Kへの第5世代カラーサイエンスの導入をはじめ、RGBヒストグラムやLCDスクリーンのキャリブレーション機能などが追加されました。映像の色再現や撮影時のモニタリング環境が改善されたことから、当時としては非常に大きなアップデートだったと感じています。
それから約1年2か月が経過した2022年6月23日、Blackmagic Pocket Cinema Camera 6K G2の発売に合わせて公開されたのが、今回のBlackmagic Camera 7.9です。
BMPCC6K G2は初代BMPCC6Kの後継モデルにあたりますが、カメラ本体の構造や機能を比較すると、BMPCC6K Proから内蔵NDフィルターなどを省いたモデルと考えた方が分かりやすいでしょう。
BMPCC4Kの発売から約4年、BMPCC6Kも発売から間もなく3年を迎えますが、長年使用しているカメラに新しい機能が追加され、操作性まで改善されるのはユーザーとして本当にありがたい話です。
特に今回のアップデートでは、Blackmagic RAWで記録した映像にジャイロスコープの情報を活用した手ブレ補正を適用できるようになるなど、撮影後の編集作業にも関わる機能が追加されています。
それでは、Blackmagic Camera 7.9で追加・変更された内容を、公式のリリース情報をもとに日本語で整理してみましたので、ご覧ください。
BlackmagicCamera7.9のアップデート内容
Blackmagic Camera Setupについて
Blackmagic Camera Setupは、Blackmagic Design製カメラのソフトウェアアップデートや管理を行うためのアプリケーションです。インストーラーには、Blackmagic RAW Player、Blackmagic RAW Speed Test、Blackmagic RAW SDK、Blackmagic RAWプラグインなども含まれています。
なお、古いバージョンのカメラソフトウェアから更新する場合は、保存しているカスタムプリセットやLUTが削除される可能性があるため、事前にメモリーカードへエクスポートしておくことが推奨されています。
Blackmagic Camera 7.9の新機能
Blackmagic Pocket Cinema Camera 6K G2への対応が追加されました。
Pocket Cinema Camera 4K、6K、6K Proに対しては、ユーザーインターフェイスの刷新、スライダーによるフォーカスアシストの強度調整、レンズ制御およびオートフォーカス性能の改善が行われています。
また、今回のアップデート以降は、カスタムプリセットやLUTを次回以降のソフトウェアアップデート後も保持できるようになりました。
さらに、対応するPocket Cinema CameraでモーションセンサーのメタデータをBlackmagic RAWクリップに記録できるようになり、DaVinci Resolve 18の対応機能を利用することで、撮影後にジャイロスコープの情報を使った映像のスタビライズが可能になっています。
Pocket Cinema Camera 6K、6K G2、6K Proでは、Blackmagic Design製のZoom DemandおよびFocus Demandにも対応し、対応レンズのズームやフォーカスを外部から操作できるようになりました。
Blackmagic RAW 2.5の新機能
Blackmagic Pocket Cinema Camera 6K G2への対応が追加されました。
対応する主な動作環境は以下の通りです。
Macの最小システム要件
macOS 11.1 Big Sur以降(macOS 12 Montereyにも対応)
Windowsの最小システム要件
Windows 10 64ビット版以降(Windows 11 64ビット版にも対応)
追加情報
一部のアプリケーションには、ライセンスに基づくサードパーティ製コードが使用されている場合があります。詳細については、付属の「Third Party Licenses.rtf」を参照してください。
BlackmagicCamera7.9アップデート後の使用感
ジャイロスコープメタデータを使用したスタビライズ
今回のBlackmagic Camera 7.9で、個人的に最も注目しているのが、カメラに内蔵されたジャイロスコープのモーションセンサーデータをBlackmagic RAWクリップのメタデータとして記録できるようになったことです。
これにより、DaVinci Resolve Studio 18 Public Beta 5以降では、撮影時に記録されたジャイロスコープの情報を利用したスタビライゼーションが可能となり、手持ち撮影などで発生した映像の揺れを編集時に補正できるようになりました。
従来のスタビライザーが主に映像内の動きを解析して補正するのに対し、今回追加された機能ではカメラ本体の回転運動を記録したデータを活用するため、撮影後の手ブレ補正に新たな選択肢が増えたことになります。
実際にBMPCC6Kで撮影したBlackmagic RAWの映像をDaVinci Resolve 18でスタビライズしてみたところ、手ブレは軽減されるものの、意図的に行ったパンやチルトの動きまで補正されてしまい、映像のトリミング量が大きくなる場面もありました。
補正の強度や撮影時のカメラワークによって仕上がりが変わるため、まだ改善の余地はあると感じていますが、ボディ内手ブレ補正機構を搭載していないBMPCCシリーズにとっては、非常にありがたい機能だと思います。
6K RAWで撮影した映像を4Kに仕上げる場合にも活用できるため、手持ち撮影を行う機会が多い方にとっては、試してみる価値のあるアップデートではないでしょうか。
※2022年7月28日に公開されたBlackmagic Camera 7.9.1では、BMPCC4Kのモーションセンサーデータの精度が改善されたほか、外付けUSB-Cメディアへの収録安定性や録画ボタンの応答性なども改善されています。
一新されたユーザーインターフェイス
Blackmagic Camera 7.9ではカメラのユーザーインターフェイスも刷新され、フレームレートやアイリス、タイムコードなどの表示が小型化されたほか、ヒストグラムの表示方法も変更され、従来のバージョンよりも撮影画面が見やすくなりました。
実際に使用してみると、以前は撮影情報が密集していたディスプレイ下部がすっきりと整理され、画面全体の視認性が向上していることが分かります。
特に夜間の撮影では、暗い背景に各種情報が重なって表示されることで構図や露出の確認がしにくい場面もありましたが、今回の変更によって必要な情報を確認しやすくなった印象です。
ただ、個人的には録画中に表示する情報を自由に選択できるようになれば、さらに使いやすくなると思います。撮影スタイルによって必要な情報は異なるため、今後のアップデートでは表示項目のカスタマイズ機能にも期待したいところですね。
フォーカスピーキングも扱いやすく改良
そして、以前から改善してほしいと感じていたフォーカスアシストの強度調整にも、ようやく変更が加えられました。
従来のバージョンでは「低・中・高」の3段階から選択する方式でしたが、Blackmagic Camera 7.9ではスライダーによって1~100の範囲で細かく調整できるようになり、撮影する被写体やレンズに合わせてフォーカスピーキングの表示強度を設定できます。
私の場合、BMPCC6Kを使用して花火を撮影する機会が多いのですが、以前はフォーカスアシストを「低」に設定していても表示が強すぎることがあり、暗い夜空に広がる花火の輪郭を見ながらピントを合わせる際に不便を感じていました。
特にBMPCC6Kでの花火撮影では、フォーカスピーキングの強度を適切に設定することが重要です。光の強い部分にアシスト表示が重なりすぎると、実際のピントの状態を判断しにくくなるため、今回のように細かく調整できる機能は大きな改善点だと感じています。
綺麗な花火の映像を記録するためには正確なピント合わせが欠かせませんし、内蔵ディスプレイの視認性に不満を感じていた私にとっては、今回のアップデートの中でも特に実用性の高い変更でした。
オートフォーカスの精度改善
Blackmagic Camera 7.9では、レンズ制御とオートフォーカスのパフォーマンスについても改善が行われています。
Blackmagic Design製のシネマカメラは、ソニーなどの動画撮影向けAF機能が充実したカメラと比較すると、オートフォーカスの速度や使い勝手に不満を感じる場面もありますが、今回のアップデート後は、以前よりもピントが合うまでの時間が短くなり、合焦精度も改善された印象を受けました。
ただし、BMPCCシリーズのオートフォーカスは、対応するレンズを使用したワンショットAFが基本であり、被写体を認識して追い続ける高度なコンティニュアスAFが追加されたわけではありません。
そのため、動きのある被写体を撮影する場合や、ピントを厳密に調整したい場面では、引き続きフォーカスアシストを利用したマニュアルフォーカスが中心になりそうです。
それでも以前よりAFの反応が良くなったことは確かなので、撮影時の操作性が向上した点は素直に評価したいと思います。
同時発表のBMPCC6K G2は買いなのか?
今回のBlackmagic Camera 7.9と同時に発売されたBlackmagic Pocket Cinema Camera 6K G2ですが、初代BMPCC6Kの後継モデルでありながら、実際にはBMPCC6K Proをベースに一部の機能を省いたモデルという位置付けになります。
6K G2は、初代BMPCC6Kと同じスーパー35サイズの6KセンサーやEFレンズマウントを採用し、13ストップのダイナミックレンジとデュアルネイティブISOに対応しています。基本的な画質性能は従来機種と大きく変わりませんが、カメラ本体の使い勝手は改善されています。
初代BMPCC6Kから変更された主な点は、大容量のNP-F570バッテリーへの対応、ファンタム電源に対応した2系統のミニXLR入力端子、チルト式の5インチLCDスクリーン、別売の電子ビューファインダーへの対応などです。
ただし、BMPCC6K Proに搭載されている1500nitsの高輝度LCDとは異なり、6K G2の液晶は同等の輝度ではありません。また、6K Proに搭載されている2・4・6ストップの内蔵IRNDフィルターも省略されているため、この2点は購入前に確認しておきたい違いです。
バッテリーに関しては、従来のLP-E6タイプからNP-F570タイプに変更されたことで、内蔵バッテリーによる撮影可能時間の改善が期待できます。
もちろん、長時間の収録を行う場合はVマウントバッテリーなどから外部給電することも考えられますが、従来よりも大容量のバッテリーが利用できるようになったことは、機動性の面でも大きなメリットでしょう。
一方で、私が気になるのは、やはり内蔵IRNDフィルターの有無です。
BMPCC4K/6Kや6K G2で日中の撮影を行う場合、露出を調整するために外付けNDフィルターを使用する機会も多くなりますが、使用するフィルターによっては赤外線の影響で映像に色かぶりが発生することがあります。
特に濃度の高いNDフィルターを使用する際には、可視光に対する減光量と赤外線の減光量の違いによって赤外線かぶりが目立つ場合があるため、IRカット機能を備えたフィルターを選ぶなどの対策が必要です。
複数のレンズを使い分ける場合、レンズ径に合わせてIRNDフィルターを買いそろえると費用もかさむため、最初から内蔵IRNDフィルターを搭載しているBMPCC6K Proを購入した方が、結果的に使いやすく、費用面でも有利になる可能性があると考えています。
ただし、6K G2にもメリットはあります。初代BMPCC6KではミニXLR入力が1系統でしたが、6K G2ではファンタム電源に対応した2系統のミニXLR入力が利用できるため、外部マイクを使用した音声収録の自由度が高くなりました。
また、従来機種はバッテリー駆動時間が短く、長時間撮影では外部電源に頼る場面も多かったのですが、NP-F570バッテリーへの変更によって、外部電源を使用しない撮影にも対応しやすくなっています。
このようにBMPCC6K G2は、初代BMPCC6Kと比較すると操作性や周辺機器との接続性が改善されており、これから6K RAWによる本格的な映像制作を始めたい方にとっては、魅力のあるカメラだと思います。
その一方で、すでに初代BMPCC6Kを所有している私としては、買い替えによって得られる画質面でのメリットが少ないことも事実です。
個人的にBMPCC6Kシリーズの次世代モデルに期待しているのは、センサーのダイナミックレンジ拡大や高感度撮影性能の向上、特にハイライトの階調表現や暗部のノイズ特性の改善です。
花火や夜間の撮影では、非常に明るい光と暗い背景が同じ画面に存在するため、ハイライトの白飛びを抑えながら繊細な階調を残せる性能が重要になります。
今回のBMPCC6K G2は、基本的な撮影性能を維持しながら使い勝手を改善したモデルという印象が強く、映像のダイナミックレンジや高感度性能そのものを大きく進化させたカメラではありません。
そう考えると、今のところはBMPCC6Kを使い続けながら、今後のカメラアップデートや次世代モデルに期待するというのが、私の結論になりそうです。











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