レコーディング中の音量調整が不要で、過大入力による音の歪みを排除し、小さな音でもノイズが気にならない失敗のないレコーディングを目指して開発された、32bitフロート録音フィールドレコーダー、ZOOM F3のレビューです。
記事内の目次
音量調整不要!ZOOM F3 32bitフロート録音フィールドレコーダーのレビュー
16bitと24bitについて
音楽を販売する記録媒体として従来からあったアナログレコードやカセットテープに変わって、デジタル情報を記録するメディアとしてコンパクトディスク、いわゆるCDが普及し始めたのが1980年代後半から1990年代前半の頃です。
アナログレコードやカセットテープは摩耗や伸びによる劣化が見られる記録媒体でしたが、それに代わって販売数を伸ばしていったコンパクトディスクは、樹脂等で作られた厚さ数ミリ程度の円盤の表面に、微細な凹凸を形成し、半導体レーザーの光をディスクに照射する事で記録されたデータを読み込む非接触式の記録メディアです。
傷や汚れなどで読み込みにくくなった場合を除いて半永久的に音質が変わらない記録媒体として売り上げ数を伸ばし、1991年にはカセットテープとアナログレコードなどを合わせた収益を追い抜いて、CDは55%の収益額に達しました。
カセットテープと一緒に音楽を聴くメディアとして中心的な存在だったアナログレコードは、EP盤で直径7インチ(17cm)に片面5~8分の音楽を収録する事が可能で、LP盤においては直径12インチ(約30cm)に片面25分ほど収録出来ました。
その後登場したコンパクトディスクは、シングルCDとして販売する事が多かった8cmCDで約20分、アルバムCDとして販売する事が多かった12cmCDで約74分もの楽曲を収録出来たのです。
CDの登場で大幅な小型化と長時間の収録が可能になった反面、従来のアナログ記録方式から微細な凹凸を半導体レーザーで読み込むデジタル記録方式に変わり、CDはサンプリング周波数44.1KHz、量子化ビット数が16bitのデジタルデータで記録されていた事から否定的な声も少なからずあったのです。
サンプリング周波数が44.1kHzであれば人間の可聴域のほぼ全面をカバーできる20Hzから20KHzの音を記録できるのですが、ビット深度が16bitだと65536段階となり、ダイナミックレンジに換算すると人間の聴覚が持つ120dBよりも少ない96dBのダイナミックレンジで記録されて滑らかさも失われていた上、ノイズフロアが占める割合も高かったのです。
その場でレコーディングをしていた人や生演奏を聴いていた人にとっては気付く事かもしれないけど、デジタルデータで音楽を聴いていた人のほとんどは多分気付かなかったとは思いますが、デジタル記録は本来の音源が持っているはずの情報量が削減されるというデメリットもありました。
その後登場した24bit音源は、いわゆるハイレゾ音源と呼ばれるものであり、96kHz/24bitでCDの約3倍、192kHz/24bitで約6.5倍の情報量を持つと言われています。
24bit音源は、16bitの96dBよりも広いダイナミックレンジを持ち、耳が健康な青年が認識できる音よりも広い約144dBのダイナミックレンジを収録する事が可能で、微細な音から大きな音まで幅広い音を収録できます。
全ての人がCDの音源とハイレゾ音源の区別が付けられるかどうかと言うと、そうでもないとは思いますが、レコーディングの現場となると話は別で、可能な限りS/N比が大きい状態で収録出来て、微細な音から大きな音まで記録出来ていた方が良い事は間違いありません。
32bitフロートとは?
16bitや24bit音源は、過大入力を受けると音が歪み、小さな音の音量を上げるとノイズも一緒に増幅されてしまう事もあるため、適正な音量で収録しなくてはいけない音量調整の必要性が課題でした。
例えば大きな音と一緒に小さな音も聞かせたい場合には、大きな音の領域に対してリミッターやコンプレッサーを効かせて圧縮し、小さな音も聞こえるようにすれば良いのですが、その際は一緒にノイズ量も大きくなってしまったり、大きな音をクリッピングさせてしまったりなど、後々修正出来ない問題に直面する事もあります。
特にリハーサル無しの一発撮りであった場合に適正な音量で収録できていなかったり、リハーサルで音量を合わせたはずなのに、本番でリハーサルの時よりも音が大きかったなんて場面も経験した人もいるのではないでしょうか?
私の場合はほとんどのシーンで適正な音量で収録出来ていたけど、リハーサルの時に問題が無かった一か所のバスドラの音だけクリッピングしてしまったなんて事もありました。
音が大きかったり小さかったり適正な音量で収録出来ていなかった場合には、ある程度は編集時に調整をする事が可能ですが、一度クリッピングしてしまった音や、ノイズフロアに近い小さな音は取り戻せないという問題があったのです。
そこで登場したのが、32bitフロート (32bit float)収録です。
一般的にはレコーディング中のゲイン調整が不要で、万が一音の過大入力で波形がクリッピングしたとしても、編集時の音量調整で元の波形の形を取り戻せるという物ですが、逆に小さな音だけを入力させてしまった際に、音量を上げても劣化しにくいという特性を持ちます。
32bitフロートというのは、24bitリニアに8bitの指数乗数を加えた記録方式で、入力された音を256段階に分けて、その1つ1つに24bitリニアを割り当てているものらしい。
しかし、今までのA/Dコンバーターでは、マイクから入力されたアナログ信号の振幅をデジタル信号として処理する際にダイナミックレンジが狭くなってしまうので、小さい音と大きな音の両方を変換できるデュアルA/Dコンバーターがとても重要な役割を果たしています。
正直な所、話を聞いてもチンプンカンプンだったのですが、その全ての技術が詰め込まれているフィールドレコーダーが、今回購入したZOOM F3です。
驚くほど小さすぎるZOOM F3
2010年頃にZOOM H4nを購入してから、2021年頃まで長く使っていたのですが、その後ZOOM H6を購入してしばらく使用していました。
この2機種はバッテリーの持続問題や音量調整の問題など、一発撮りではなかなか厳しい問題に直面して今回導入したZOOM F3。
まず、開封して驚くのがZOOM F3本体の大きさです。
H4nはともかく、H6は合計で6ch収録出来るフィールドレコーダーだとしても、サイズが大きすぎてショックマウントに乗せると徐々に横に傾いていくような事もありました。
それらと比較しても、ZOOM F3はとにかくサイズが小さく、67mmのレンズキャップより少し大きい程度の横幅75mm、縦幅77.3mm、高さが47.8mmほどの超小型サイズとなっております。
マイクカプセルを付けて外部マイクも接続してショックマウントに乗せた後に前のめりになっていたH6の約1/3近い大きさとなって、重さもマイクカプセルも含めたZOOM H6本体の約半分ほどの重さとなる242gほどになっております。
マイク入力はファンタム電源対応XLR端子2chのみ
ZOOM製品はXLR/TRSコンボジャック(XLRと標準フォン共用の端子)が採用されておりましたが、ZOOM F3ではXLR端子のみの入力となりました。(ZOOM F6も同様)
今までTRSジャックプラグを採用したマイクを使用していたのであれば、XLRプラグに変換して使用しなくてはいけません。
また、今までのZOOM社製フィールドレコーダー同様に別途マイク駆動用の外部電源が不要な、+48V・+24Vのファンタム電源供給機能内蔵です。
小型化でカメラへのマウントがしやすくなった
ZOOM H4nやH6のマイクカプセルで音声を収録する場合はタッチノイズを低減するショックマウントが必須で、ハイアングルで撮影をするとレコーダー上面の液晶モニターが見にくくなったりボタンが押しにくくなったりなどのデメリットもありました。
この場合はレコーダーを別置きにするか、内蔵マイクを使わずにレコーダーを縦向きに取り付けないと操作が難しく感じるような事もあります。
その一方で、ZOOM F3はレコーダー本体からマイクカプセルを排除しているので、裏面の1/4ネジや固定バンドでの自由な配置での固定が出来るのです。
H4nやH6でも出来たけど、外部マイクとM/Sマイクの4chでの収録をしていたので、内蔵マイクカプセルが無いからこそ割り切れるだけですけど・・。
バッテリーの持続時間は2時間超!
内蔵できるバッテリーは、単三電池2本で、アルカリ電池やニッケル水素電池などを使用できます。
満充電したニッケル水素電池2本を使用し、マイクを+48Vのファンタム電源で駆動して最大収録時間を計測しましたが、2時間14分ほどで電池が空になり収録がストップしていました。
10000mhのモバイルバッテリーを併用して同じ条件で収録もしてみましたが、7時間7分ほどでモバイルバッテリーの残容量が半分になり、このまま続けていてもキリが無いので、ここでストップです。
多分14時間前後はノンストップで収録出来そう。
USB端子はUSB Type-Cですが、PD(Power delivery)やQC(Quick charge)を必要としない5V入力なので、USB2.0のType-A to Type-Cケーブルなどの古い規格のケーブルでも使用できます。
また、モバイルバッテリーやACアダプターでは全く問題はありませんでしたが、Vマウントバッテリーから電圧を降下させているUSB端子から5V給電をした場合は、Line出力にノイズが乗ってしまいましたので、DC/DCコンバータの種類によっては同じような事が起こってしまうかもしれません。(ZOOM F3で記録したデータにはノイズは入りません。)
USBのデータ転送速度はめちゃくちゃ遅い
USB接続をしたデータ転送は、コネクターがType-Cになったとしても5MB/s前後ほどしか速度が出ていませんでしたので、かなり遅い転送速度です。
ZOOM H4nとH6を使用してきましたが、ここだけは全く性能が変わっていないので、10年以上前からUSB端子の性能はほとんどアップデートされていないっぽい。
16bitや24bitと比較するとファイルサイズはかなり大きくなるので、高速転送を求めるのであれば、SDカードリーダーを使用して転送をした方が早く終わりそうです。
記録メディアはMicro SDカード
ZOOM H4nやH6はSDカードでの記録をしていましたが、ZOOM F3は4GB~32GBまでのmicroSDHC規格対応カードか、64GBから1TBまでのmicroSDXC規格対応カードが使用出来ます。
9時間21分の収録で48.8GBほど記録が出来ましたので、10時間以内の収録であれば64GB、数日続くようなレコーディングであっても128GB~256GBほどあれば充分足りるのではないかと思います。
記録される音声データは、相変わらず2GBで分割される使用となっておりますので、ZOOM H6の96Khz/24bit記録で1時間ほどで分割されていたのに対し、ZOOM F3ではさらに短い23分10秒~20秒ずつに分割されます。
実際に音を収録してみました。
デュアルA/Dコンバーターの勘違い
マイク入力のゲイン調整は必要が無いとは説明をしていましたが、波形表示倍率を変更する事で、記録されたデータの音量も変わります。
波形表示倍率を×1から×1024まで変更した音声データを用意してAdobe Audition上で同じ音量になるように調整をしてみましたが、×1と×1024どちらともノイズ量に違いは無く、38dBほどゲインを上げた×1の音声でも、劣化を感じられない音で収録されていました。
倍率が低い時にハイゲイン用のA/Dコンバーターを使用して倍率を高くするとローゲイン用のA/Dコンバーターを使用するような、カメラのデュアルネイティブISOみたいな使われ方をするのかと思ったら、そうではなかったようです。
また、2つのADコンバーターを自動で切り替えている点で、大きな音が入力された際の音量を下げて、小さな音の音量を上げるようなオートゲインが効いて、波を打つような音量で収録されてしまう不安も少しありましたが、記録された音声のゲインを変えずにダイナミックレンジを広げている制御が正解なようです。
なので、記録したデータからは、ローゲインとハイゲインのADコンバータが切り替わっている様子も分かりませんし、小さな音を記録している最中に大きな音が入力されても、オートゲインが働くような機能でない事は安心して欲しい。
マイクの性能がそのまま反映される
ゲインの調整が不要で大きな音から小さな音まで収録が出来るZOOM F3ですが、過大な音が入力されれば過大入力の警告は表示されます。
マイク本体の最大音圧レベルとZOOM F3本体の最大入力レベルである+4dBuを足した音量までは理論上は入力出来るはずなので、マイクの最大音圧レベルにもよりますが、人間の聴覚が耐えられなくなる140dBを超えない限りの音を収録出来るのではないかと思います。
当然の事ながらS/N比が低いマイクを使えば、その性能もダイレクトに記録されてしまうので、ZOOM F3の32bit floatを最大限に活かすのであれば、マイク本体の性能やケーブルにも気を使わなければいけません。
とは言っても編集で音量を上げてもノイズレベルはさほど上がっていないようなので、16bitや24bitリニアに比べると持ち上げられる音量は圧倒的に違います。
ゲイン調整不要で一発撮りが楽になった
ZOOM H4nでは、マイクレベルは1刻みでの調整が出来ていたので、ある程度はロケーションによる録音レベルの違いは把握出来ていましたが、ZOOM H6においては0~10までのダイヤル式なので、XLR入力時の左右のバランス取りや音量の調整がとても大変でした。
特にリハーサル無しの一発撮りが必要な場面では、過大入力によるゲインオーバーや左右の音量の違いなどにも気を使わなくてはいけない事もあり、また収録途中に録音レベルを変更すると編集時の音量調整に手間がかかっていたのです。
その点においては、ゲイン調整が不要なZOOM F3は、大きな音から微細な音まで正確に収録出来る32bit float収録は大きなメリットとなり、失敗が許されない場面では収録時の音量を気にせず撮影に集中できるようになります。
例えばAdobe Auditionで編集する際に、クリッピングして途中で音量を下げて音声データを読み込ませると、音量調整をした前後の音量を合わせるのが大変ですし、左右のバランスが合わないとまたその部分の編集を加えるのが大変なのです。
音量調整をしないで録音できる32bit floatは、最初から最後まで音量設定は一定なので、基本的に一括でエフェクトを適用して微調整するだけで終わりにする事も出来ますし、左右のバランスも一括編集で済ませられますね。
なので、32bit float収録が出来るZOOM F3は、一発撮りで録音した音声データを編集する時に、通しで編集できる部分で差が出るのだと思います。
自宅で収録した環境音
自宅の近くには鉄工所があり、また新幹線が通過する高架橋もあります。
静かな時は静かだけど、うるさい時はとてもうるさい音量差が激しい地域なので、音撮りには最適な場所でした。
どこかにトラックが停車していたのと、その後高架橋を新幹線が通過し、仙台空港周辺で航空大学の訓練飛行をしている小型航空機も飛んでいます。
位置関係が把握出来ていないのは、ZOOM F3で収録した音をAdobe Auditionで35dB上げているのが理由で、実際の所は小型航空機がどこを飛行していてトラックがどこに停車していたのかは分からないぐらいの小さな音量も収録できています。
35dBもゲインを上げていても16bitや24bitリニア収録ほどノイズが増幅されず、音の解像感を保ったまま音量を上げる事が可能でした。
ちなみに時々入る打刻音は、確定申告の準備でキーボードを叩いている音です(笑)。
レコーダーを外に放置していて部屋の窓やドアを閉め切っていたはずなのに、丸聞こえになるほど音がしっかりと収録されている事には正直驚きました。
ZOOM F3を使用して収録した動画
BMPCC6K BRAW + ZOOM F3 32bit float Sound | Plane Spotting at Sendai Airport
マイクはMXL CR21を使用しているのですが、周波数特性を見ると5KHz~10KHzまでが上がり気味の特性を持つはずなのに、リニア収録では離陸に伴う排気音の低音がピーク音量となり、比較的音量が低く収録されるエンジンの回転音がはっきりとしなかった印象がありましたが、32bit floatでは音量が低い領域も鮮明に収録されるようになったとも言えます。
マイクアンプを経由していないので、いわゆるマイク本来の特性で収録が出来ているイメージでしょうか。
今回の収録では波形表示倍率を×8に設定して収録しましたが、当然の事ながらクリッピング無しで、編集時に+6dBから+15dBの範囲で音量を上げてもノイズが目立つような事はありませんでした。
ちなみにレコーディング中に波形表示倍率を変更する事は出来ますが、記録したデータには反映されず、停止して次のレコーディングを始めた時に変更した波形倍率が適用されて記録できます。
また仙台空港で収録してノーマライズ処理をした音声に-24dB・比率1:2でマルチバンドコンプレッサーを適用してゲインを+12dBほど上げてみましたが、0~-24dBの範囲の音を破綻させる事もなく、自然な形で音量が低く収録されている環境音を持ち上げる事が出来ました。
音量差が激しい場面では、マルチバンドコンプレッサーを使う頻度も多かったのですが、32bit floatの音声ファイルに使用してみた印象では、16bit/24bitリニアよりも綺麗な音を保ったまま圧縮出来ているように感じます。
【4K UHD】32bitフロート録音 ZOOM F3 仙台空港 飛行機の離着陸
また、屋外撮影になると気になるのがマイクの吹かれノイズです。
ZOOM F3には低域の音をカットするハイパスフィルター(いわゆるローカット、以下HPF)が内蔵されているので、風が強い日はHPFを適用する事で、ある程度は吹かれノイズを低減する事が可能です。
別の日に仙台空港で撮影をしていた際は風が強めだったのですが、私の場合は、編集時にマルチバンドコンプレッサーを適用して吹かれノイズを低減しております。
波形上はゲインオーバーしているような箇所も、波形の形を崩さずに音を圧縮出来ているため、目立つような音の歪みなども発生しておりません。
【4K HDR HLG】圧巻の音楽花火ショー! 宮城花火大会 in 村田町 SUGO FIREWORKS FESTIVAL 2023
大音量の収録環境となる花火大会でも、クリッピングする事が無く、綺麗な音で収録できました。
花火の打ち上げ場所から収録場所の距離や花火の大きさによって音量が変化し、またオープニング花火は一発撮りという難しい状況でも音量調整が不要な32bit float収録が大きなメリットとなります。
特にXLR入力の2つのチャンネルが連動しないZOOM H6では、収録時に音量を変化させた後の編集がとても大変だった記憶がありますが、音量調整が不要になった事で編集時の音量調整もとても楽になりました。
また、音楽の音が小さく収録されてしまうため、マルチバンドコンプレッサーを使用して花火以外の音量を底上げいたしましたが、16bit/24bitリニア収録と比較して音を極力劣化させないままダイナミックレンジを圧縮できたような気もします。
小型化されているけど操作性は良かった
ZOOM F3は従来機種よりも小型化された事でディスプレイやスイッチ類がチープになったようにも見えますが、メニューや再生ボタンとRECスライダーの位置が真逆に取り付けられている事で、操作ミスをしにくくなりました。
ZOOM H4nやH6はRECボタンの隣が再生ボタンで、カメラを操作しながらだとレコーダー側の操作ミスも時々起きていたので、ZOOM F3はボタンの配置にも失敗のないレコーディングを目指す気配りがされています。
ただし、一度収録を始めてしまうと、電源ボタンとRECスライダー以外はほとんど触る部分が無いのではないかと思います。
LINE出力にディレイやリミッターをかけられるけど?
ZOOM F3のLINE出力にリミッターやディレイを適用させられますが、ディレイはサンプルレート192kHzの設定で無効になる仕様らしい。
スタンバイ状態では有効になっていたような気がしますが、BMPCC6Kはディレイ15msで丁度良かったので、これが無効になるのはかなり痛い。
接続する機器によってはカメラ内部収録とZOOM F3での収録を切り離して記録した方が良いのかもしれませんが、撮影時の誤差の範囲なのか偶然なのか、テスト時は無効になっていなかったような気もします。
カメラ本体でも多少は遅延が発生している機材もあるので、ドラムをスティックで叩く瞬間などがずれて違和感を感じる場合は、映像編集時に調整をする方が良いのかもしれません。
マイク入力にもディレイをかけられますが、ライン出力同様に192kHz記録で無効になります。
カメラのRAW現像のように収録時よりも編集テクニックが重要になる
今までの16bit/24bitリニア収録では、マイク配置や音声記録レベルの調整など、収録場所の環境に合わせたセッティングが重要視されていましたが、32bit float収録のZOOM F3ではマイクの配置さえしっかりと固めておけば、編集時にどうにでもなる記録方式なのです。
まさに写真のRAWやデジタルフィルムのLogのような記録方式が、32bit floatであると思っても良いでしょう。
初めて使用する人は分からないかもしれないけど、凄い事
これから初めて32bit float収録を始めるという人には伝わりにくいかもしれませんが、最大96kHz/24bit収録でバッテリーの持ちが悪かったZOOM H4nやXLR入力のマイクゲインの調整やバランス取りが難しかったZOOM H6を使用した事がある人なら、失敗のないレコーディングを目指して開発されたZOOM F3の凄さは感じられるのではないかと思います。
長々と記事を執筆しましたが、一言で言うと収録する時に何も考えなくても良い!そんな機材です。
音量調整が不要で、一発撮りでも失敗が無いZOOMの32bit float収録フィールドレコーダーZOOM F3を是非使用してみてはいかがでしょうか。
これから花火大会やネイチャー映像を撮影した際にYouTubeにアップロードいたしますので、その時にはこの記事にも映像を追加していく予定です。
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ZOOM社の6ch収録PCMレコーダーはこちらの記事でご紹介しています。
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