BMPCC6Kこと、Blackagic Design社の小型シネマカメラ、Blackmagic Pocket Cinema Camera 6Kが2019年に販売開始となってから、5年が経過しましたが、現行機とまだまだ戦えそうなので、内蔵されているIRカットフィルターをRAWLITE IRカット+OLPFに交換をいたしました。
この記事では、カビカビになった純正IRカットフィルターから社外IRカット+OLPFに交換するまでの手順を解説していきます。
記事内の目次
BMPCC6KのIRカットフィルターをRAWLITE IRカット+OLPFを取り付け
Blackmagic Pocket Cinema Camera 6Kとは?
BMPCC 6K(Blackmagic Pocket Cinema Camera 6K)は、オーストラリアに本社を置くブラックマジックデザイン社が開発し、2019年から販売を開始した小型シネマカメラで、ミラーレスカメラと同等のサイズでありながら、6K RAWの内部収録と空冷ファンの内蔵で長時間の記録を実現した動画撮影用カメラです。
最大13Stopの広いダイナミックレンジと、ファームウェアアップデートにより、URSA mini 12Kから採用している第5世代カラーサイエンスへの対応で、元々評判が良かった色表現をさらに進化させて、現役機種と変わらない性能を有する事になりました。
初代BMPCC4K/6Kで発生するIR汚染と経年劣化による汚れ
色が綺麗だと言われるBMPCC6Kの弱点として、NDフィルターやC-PLフィルターを使うとIR汚染が発生しやすいというのもありました。
晴天時にIRカット機能が無いNDフィルターを使うと、黒い服が赤っぽく見えるような症状が発生していたのは気付いておりましたが、これはIR汚染と言って「赤外線の影響によりデジタルカメラの映像で起こる色ずれ」が起きる現象です。
IRカットフィルターが存在しないデジタルカメラでは、この色ずれが発生してしまいますが、BMPCC6Kの本体にIRカットフィルターが内蔵されていないわけではありません。
イメージセンサーの前にある青っぽいフィルターが赤外線汚染を除去するIRカットフィルターなのですが、NDやPLフィルターを使用して撮影をすると、純正のIRカットフィルターだけでは強度が足りなくなってしまうそうなのです。
赤外線の影響が少ない曇りや暗所撮影時などでは起きにくい現象なのですが、晴天時などの赤外線の影響が強く出やすい特定条件下では、特定の色が変色してしまうような現象が発生してしまうのです。
そして、Google検索を見てみると、経年劣化でコーティング剥がれのような汚れが発生して、イメージセンサーに付着したゴミのような影が映像内に映り込んでしまう事もあるらしいのです。
5年近く使用していますが、最近は純正IRカットフィルターの汚れが酷くなって、晴天時の撮影では目に見えてセンサーダストのような斑点が映り込むようになっておりましたが、割と同じ症状が出ている方が多い事に何故か安心してしまいました。
BMPCC4K/6Kで発生する持病らしいので、多分自分のせいではありませんw
今年は屋外撮影の途中に雨に降られる事が多く、結露が発生してしまった事が影響していると思いますが、フィルター裏に埃が回らない密閉構造である反面、湿度や温度差によって結露が発生しやすい構造になっているのかもしれません。
という事で、この症状をBlackmagic Designに問い合わせた所、IRカットフィルターの交換だけでも6万円がかかってしまうそうなので、今回は社外品の中で前から気になっていた、RAWLITEのIRカット+OLPF(光学ローパスフィルター)を取り付ける事にいたしました。
OLPF(光学ローパスフィルター)とモアレ
近年は光学ローパスフィルターレスカメラが主流となってきていますが、モアレの発生を抑えるためにイメージセンサーの前に光学フィルターを取り付けている例が少なからずありました。
モアレとは、干渉縞ともいい、規則正しい繰り返し模様を複数重ね合わせた時に、それらの周期のずれにより視覚的に発生する縞模様のことです。
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カメラの高解像度化に伴ってモアレの発生を犠牲にしてOLPFを取り付けないミラーレスカメラが次々と販売されてきていましたが、シネマカメラについてはARRIやREDなどの映像専門のカメラメーカー、BMDでは最近になってURSA 12K OLPFやBMCC6KでOLPFを内蔵したシネマカメラを販売するようになりました。
最近はスチール撮影用カメラで映像も撮れるようなミラーレスカメラが次々と販売されていますが、モアレの発生を犠牲にしたスチール用光学ローパスフィルターレスカメラと、モアレの発生を抑えた光学ローパスフィルター内蔵シネマカメラと、撮影目的によって求めるものが全く逆になってきているんですよね。
そろそろBMPCC6Kを使い始めてから5年が経過していますが、外部収録機器に頼らない6K RAW内部記録の魅力と荷物の少なさから、まだまだ戦えるとの判断で継続して使用し続ける事にしました。
高感度性能の低さは気になりますが、フルフレームになったBMCC6KのダイナミックレンジがBMPCC6Kとほとんど同じですし、暗所撮影にこだわらなければIRカット+OLPFに交換をすれば同じかなと(笑)
というわけで、IRカットフィルターを社外品OLPF(光学ローパスフィルター/Optical Low Pass Filter)+IRカットフィルターに交換していきます!
RAWLITE IRカット+OLPFは個人輸入で購入!
Paypalにドルを貯めこんでいたので、RAWLITE IRカット+OLPFは公式ウェブサイトから439ドル+配送料45ドルで購入をいたしました。
オランダのアムステルダムで集荷して、日本に届くのが9日後の予定でしたが、届いたのがわずか4日後です。
途中で別途輸入関税JPY5,480円の支払いがあったものの、支払い確認後に15分でDHL施設を出発し、その日の夕方に佐川急便に引き渡され、次の日の午前11時には自宅に届いておりました。
DHLは到着予定日よりも大幅に早着するとは聞いておりましたが、5日も早く到着する事もあるのですね。
RAWLITE IRカット+OLPFの開封
海外製品故のボコボコになった箱に入ってくるものだと思ったら、萩の月顔負けの過剰包装どころか、マイクでも入っているかのようなプラスチックケースごと送られてきました。
一回ポッキリの製品にここまでしなくても良いから値下げしてと思ったけど、これはこれで使い道がありそうなので、ケーブルとネジ類のケースとして使ってしまいましょう。
内容物は、交換用OLPF本体、バックフォーカス調整用シム、レンズマウント脱着用六角レンチ、IRカットフィルター前の筒を脱着するためのプラスドライバーがセットで入ってきます。
内蔵IRカットフィルターを交換する時の道具は、これしか使いません。
BMPCC6Kのレンズマウントを取り外す
最初にレンズマウントを固定している六角ネジを取り外しますが、レンズリリーススイッチの裏側にスプリングがフリーで取り付けられているので、レンズマウントを上向きにして外すよりも横向きか若干斜め下向きにする方が安全です。
レンズマウントの4か所の六角ネジを取り外すと、バネ座金とスイッチ、マウントリングが全てバラバラになります。
リリーススイッチのスプリングが厄介で、スイッチを取り外す時にカメラ本体内部にスプリングが落ちてしまうと、最悪の場合は基盤が見えるようになるまでカメラを分解しなくてはいけなくなる場合があります。
RAWLITE公式の脱着説明動画では上向きで撮影をしていますが、購入者に分かりやすいようにしているだけで、スプリングが本体内部に落ちてしまうリスクはあります。
なので、脱着時のカメラは横向きか若干下向きで!
純正IRカットフィルター前の筒を外す
フィルター前の筒は遮光板の役目を果たしているのだと思いますが、純正IRカットフィルター前に付いている十字ネジを付属のプラスドライバーで取り外します。
一番上と横の2か所の合計3か所のプラスネジだけ取り外して、接点のプラスネジは取り外しません。
3か所のネジを取り外すと、こちらの筒が取り外せます。
正式名称は分かりませんけど・・。
純正IRカットフィルターとRAWLITE OLPFを交換する
純正IRカットフィルターのリングには全周にわたって溝が掘られているので、爪を引っかけて外側に引っ張ればフィルターごと取り外せます。
溝とは上の写真のようなもので、溝の間に入る物であれば何でも良いのですが、一番安全なのは両手の人差し指の爪です。
外側はゴム製Oリングが巻かれているだけなので、固着さえしていなければ、フィルター本体を揺すりながらカメラの外側に向けて引き抜けば簡単に外れていきます。
国内メーカーのカメラだと、イメージセンサーとフィルターの間にゴミが潜り込んでしまう事もありますが、BMPCC6Kは完全に密閉されて、フィルター前後の温度差が生じてしまう事から、結露が繰り返し発生していた可能性も考えられますね。
そのため、純正IRカットフィルターとイメージセンサーの間には、埃一つも入っていない前提で交換をしなければいけないので、ここからは手早く交換をしなければいけません。
念のため、空気清浄機をフルパワーで稼働させておいて、なるべく埃が舞わない環境で作業をしていますが、センサーの上に埃が乗らないようにカメラは横向きにしたまま交換をします。
こちらが交換をするRAWLITEのIRカット+OLPF本体となります。
純正のIRカットフィルターは、若干の反射膜があって、どこから見ても青緑色のフィルターですが、RAWLITEのIRカット+OLPF本体は、見る角度によっては赤紫色にも見えます。
純正との違いはコーティングの種類に違いがあって、RAWLITEのIRカットは、可視光を透過させて温度上昇を抑えながら赤外線を効率よくカットするホットミラーコーティングが追加されています。
RAWLITE IRカット+光学ローパスフィルターの裏側とイメージセンサーの間に埃が入らないように気を付けながらフィルターを取り付けます。
純正と違って余分な光を遮断するイメージセンサーと同じ形状の遮光板が取り付けられた枠になっているので、ケラレが発生しないように正しい向きで取り付けます。
ゴムリングで固定されているだけなので、使用中に回ってしまうのが不安だけど、ある程度固着したら多分動かないんじゃないかと思います。
純正IRカットフィルター前の筒を取り付ける
OLPF+IRカットフィルターを押し込んで完全に固定をしたら、筒を戻してプラスネジでBMPCC6K本体に固定をします。
プラスチック素材の筒なので、締め込みすぎてしまうとネジがバカになってしまう恐れがあるので、ある程度締まったら締め込みを終わらせてしまうのが無難です。
ちなみにネジがバカになってしまった場合は、プラスチックに悪影響がある金属用ネジロック剤ではなく、樹脂ねじ用ねじゆるみ止め接着剤を使用した方が良いでしょう。
また筒やレンズマウント周辺の汚れは、イメージセンサーに汚れが付着してしまう恐れが無い、フィルター取り付け後に清掃をやった方が無難です。
バックフォーカス修正用シムを挟んでリングとスイッチを取り付ける
スプリングが内部に落ちてしまわないようにピンとスイッチを取り付けて、バックフォーカス調整用シムを挟んでからバネ座金を戻します。
レンズマウントを戻してゴミを清掃する
レンズマウントを取り付けて4本の六角ネジを取り付けたら、RAWLITE OLPFの取り付けは完了です。
イメージセンサーとOLPFの間に埃が入る事は無いので、この時点でエアブローして完全にダストを除去しておいて下さい。
純正のIRカットフィルターは、反射が弱い青緑色でしたが、RAWLITEのOLPF+IRカットフィルターは、ホットミラーコーティングの効果なのか、見る角度によって光を強く反射する様子が見受けられました。
詳しい取り付け方法は、RAWLITEの公式動画も参考にしていただければ幸いです。
公式動画内では純正フィルターを工具でこじって取り外したり、ピンセットを使って脱着をしたりしてますが、フィルターのガラス面を触らないように両手の人差し指の爪を使って脱着をする方が安全なような気はします。
OLPFは効果が弱めでIRカットの効果は絶大!
色々な素材を撮りに行くよりも、カメラを車に積んで走った方が手っ取り早いと思って最初は横着をして車載動画の切り抜きにした。
RAWLITEのOLPFは、ソフトフィルターのような過度な柔らかさが無く、適度なディテールを残したまま、モアレを抑え込んでいるような感じがしました。
また、フィルター交換前のホワイトバランスについても、5500Kから6000Kの色合いが+5~15ぐらいが丁度良かったのですが、RAWLITEのフィルター取り付け後は6500Kの+30にしても赤みが強くならず、全体的に発色のバランスが良くなりました。
またBMPCC6Kの問題点だった赤い色の光が飽和する現象は、DaVinci Resolveの色域の圧縮で抑え込んでカラコレをするとどうにかなっていたと思いますが、フィルター交換後は色域の圧縮を使わないで抑え込めるようになっています。
純正IRカットフィルターの汚れが写りに影響するようになってしまった事が交換をした理由ですが、社外品に交換をしただけでワンランク上の全く別のカメラを扱っているような感覚です。
今まで使っていたLUTやPowerGradeを使ってカラコレを出来なくなったので、また作り直さなくてはいけなくなりましたが、もしフィルターの汚れで交換を検討している方は、RAWLITEのOLPFを入れてみるのも良いかもしれません。
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