家電量販店などで見かけるUSB急速充電器にPD対応やQC対応と記載されたアダプターを見かけた事は無いでしょうか?このページでは、間違えて購入しないために、USB急速充電器で見かけるQCとPDの規格の違いと互換性について説明をします。
記事内の目次
USB 急速充電器のQCとPDの違いとPower IQの互換性
QC(Quick Charge)とは?
QC2.0やQC3.0などと記載された急速充電器を見かけた事があるかと思いますが、この規格はアメリカのQUALCOMM社(クアルコム社)が開発したスマートフォンやタブレットなどを急速充電出来る規格で、名称はQuick Charge(クイックチャージ)の頭文字から由来しています。
また、QC3.0まではAnker社のPower IQ 2.0のType-A(USB 3.0)端子は互換性のある急速充電規格ですので、この記事では同じ規格扱いとしています。
通常のUSB充電器であれば5V出力が定格電圧で、充電しようとしている機器に搭載しているバッテリーの残容量に合わせて電圧を変動させる事はありませんが、Quick Charge(QC)であれば、急速充電規格への機器側の対応・非対応を自動的に判別し、電圧や電流を自動で調整しながら急速に充電をする事が可能な規格なのです。
QC(Quick Charge)の主な仕様
技術 | 電圧 | 最大電流 | 最大出力 | リリース | 対応するSoC |
Quick Charge 1.0 | 5 V | 2 A | 10 W | 2013 | Snapdragon S4、215、600 |
Quick Charge 2.0 | 5V=3A / 9V=2A / 12V=1.5A | 18 W (9 V × 2 A) | 2015 | Snapdragon 200、208、210、212、400、410、412、415、425、610、615、616、800、801、805、808、810 | |
Quick Charge 3.0 | 3.6-20 V (200 mV刻み) | 2.6 A, 4.6 A | 36 W (12 V × 3 A) | 2016 | Snapdragon 427、429、430、435、439、450、460、617、618、620、625、626、632、650、652、653、662、665、680、685、820、821 |
Quick Charge 3+ | 3.6-20 V (20 mV刻み) | 2020 | Snapdragon 765、765G | ||
Quick Charge 4 |
3.6-20 V (20 mV刻み) (QC動作時) 5 V, 9 V (USB‑PD動作時) 3-21 V (20 mV刻み) (USB‑PD 3.0 PPS動作時) |
2.6 A, 4.6 A (QC動作時)
3 A (USB‑PD動作時) 3 A (50 mA刻み) (USB‑PD 3.0 PPS電流制限時) |
36 W (QC動作時)
27 W (USB‑PD動作時) 45 W (USB‑PD 3.0 PPS動作時) |
2017 | Snapdragon 630、636、660、720G、835 |
Quick Charge 4+ | 2017 | Snapdragon 480、480+、670、675、678、690、695、710、712、730、730G、732G、750G、765、765G、768G、778G、778G+、780G、782G、845、855、855+、860、4 Gen 1、4 Gen 2、6 Gen 1、7 Gen 1、7s Gen 2 | |||
Quick Charge 5 | 3.7-21.5 V | 5 A (50 mA刻み) | 100 W以上 | 2020 | Snapdragon 865、865+、870、888、888+、7+ Gen 2、7 Gen 3、7+ Gen 3、8 Gen 1、8+ Gen 1、8 Gen 2、8s Gen 3、8 Gen 3 |
QC2.0(Quick Charge 2.0)以降は、充電器側が5V/9V/12V/18V(20V)の中から自動で電圧を選択して、モバイル機器などの急速充電を行いますが、過充電による発火の恐れがある充電量80%以降は電圧を下げて通常充電を行います。
また、PD(Power Delivery)への対応はQC4.0から始まり、内蔵のチップがPDへの対応と非対応を自動的に判別し、非対応の場合はQCで急速充電を行います。
もちろん機器側がQCに対応出来なければ、USBの定格電圧である5V以上の電圧はかからないので、機器を破損してしまう心配もありません。
充電器または接続機器のどちらかの規格が違う場合でも、以下の表のようにQCのバージョンの低い方に合わせて自動調整をしてくれます。
充電器側対応規格 | |||||||
QC 2.0 | QC 3.0 | QC 3+ | QC 4 | QC 4+ | QC 5 | ||
機器側対応規格 | QC2.0 | QC 2.0 | QC 2.0 | QC 2.0 | USB-BC | QC 2.0 | QC 2.0 |
QC3.0 | QC 2.0 | QC 3.0 | QC 3.0 | USB-BC | QC 3.0 | QC 3.0 | |
QC 3+ | QC 2.0 | QC 3.0 | QC 3+ | USB-BC | QC 3+ | QC 3+ | |
QC 4 | QC 2.0 | QC 3.0 | QC 3.0・QC 4 | QC 4 | QC 4 | QC 4 | |
QC 4+ | QC 2.0 | QC 3.0 | QC 3.0・QC 4 | QC 4 | QC 4+ | QC 4+ | |
QC 5 | QC 2.0 | QC 3.0 | QC 3+ | QC 4 | QC 4+ | QC 5 | |
USB-PD | USB-BC | USB-BC | USB-BC | USB-PD | USB-PD | USB-PD | |
iPhone 8以降 | USB-BC | USB-BC | USB-BC | USB-PD | USB-PD | USB-PD |
また、DJI製ジンバルなどの撮影補助機器のUSB端子で、元々PDに対応をしていない高電圧を要求する給電仕様の場合もQC2.0以降の電圧変動型の給電仕様で充電をする事は可能です。
ただし、メーカーによっては保証規定の範囲外の給電となる事もあるため、保証内容に純正以外の充電アダプターを使用しても大丈夫なのかを確認しておく必要はあります。
Power IQとは?
POWER IQは、Anker社が独自開発をした急速充電規格で、2014年に誕生したPower IQ 1.0から最新のPower IQ 4.0までアップデートを重ねてきました。
PowerIQ™を搭載したモバイルバッテリーやUSB充電器にはスマート充電チップが組み込まれており、このチップが接続された機器を即座に認識し、その機器に適した最大のスピードでの急速充電を可能にしています。
技術 | 電圧と | 電流 | 最大出力 | リリース |
Power IQ 1.0 | 5V | 2.4A | 12W | 2014 |
Power IQ 2.0 | Type-A 5V=3A / 9V=2A / 12V=1.5A Type-C 5V=3A / 9V=3A / 15V=2A / 20V=1.5A |
18W | 2017 | |
Power IQ 3.0 Gen2 | 5V=3A / 9V=3A / 15V=3A / 20V=5A | 100W | 2019 | |
Power IQ 4.0 (最大140Wの場合) | 5.0V ⎓ 3.0A, 27.0W / 15.0V ⎓ 3.0A, 45.0W / 20.0V ⎓ 5.0A, 100.0W / 28.0V ⎓ 5.0A 140.0W | 100W~ | 2022 |
POWER IQ 3.0で初めてUSB PDに対応をしたものの、互換性に関わる項目で仕様違反になっていて、一部のPD対応デバイスで充電ができないという事態が発生している事以外は、Quick Charge2.0/3.0に対応した充電が可能になっております。
なので、その改善版がPower IQ 3.0 Gen2になったとも言えますので、正式にPDに対応をしたのはGen2からであるとも言えます。
USB PD(Power Delivery)とは?
USB PDは、USB Power deliveryの略称で、Apple、ヒューレット・パッカード、インテル、マイクロソフトなどが主導企業となっている、USB Implementers Forum (USB-IF)というUSBの規格作成団体が規格化したものであり、USB Type-C端子のみで対応している給電規格の一つです。
5V/9V/15V/20V/28Vの中から自動で出力電圧と電流を調整してモバイル端末やノートPCまたは、大型デジタル機器などのバッテリーを急速充電できる規格なのですが、QCやPower IQと違う点はUSBケーブルや端末がPD(Power Delivery)規格に対応していないと、使用する事は出来ません。
USB-IFが規格化したので、これから様々な機器で標準化されるかと思いますが、例えば消費電力が100Wクラスの電化製品でPD規格が採用されると、ACアダプターやケーブルが100W出力に対応していないと使用できない点については注意が必要です。
まとめ
Quick ChargeやPower IQは急速充電規格が無かった時代に作られた規格なので、その時は独自の名称を付けていても問題が無かったのだと思いますが、USB-IFがPower Deliveryの名称で規格化しているので、USB Type-C端子は全てPDで統一をしちゃっても良いような気もします。
ただでさえ、USBの規格名称が乱立してややこしい状況になっているので、一旦規格を整理して欲しい部分はありますが、Amazonや楽天市場の粗悪品を排除して、公称値と同じ性能が出る製品のみを残していただきたい所です。
探すのが大変すぎて・・。
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