動画編集ソフトウェアなどでVRAM容量を大量に使用するPCの作業に最適な、12GB・GDDR6ビデオメモリーとNVIDIA製GPU搭載の低価格グラフィックボード、ASUS Dual GeForce RTX 3060 V2 OC Editionのレビューです。
記事内の目次
Micro ATXよりも小さいASUS Dual GeForce RTX 3060 V2 OC Editionのサイズ
ASUS Dual GeForce RTX 3060 V2 OC Editionのサイズは、長さ20cm×奥行き12.3cm、高さ3.8cmのMini-ITXやmicroATX対応のコンパクトな自作PCケースにも収まる、2スロット占有タイプのグラフィックボードです。
フロントパネル側にHDD取り付けスペースがあるミドルタワーPCケース、Antec Nine Hundred Twoでは、ATXサイズのマザーボードよりも44mm小さいサイズに収まっております。
マザーボードよりも大きいグラフィックスカードでは、フロントパネル側に取り付けたハードディスクのコネクターと干渉してしまう事もあったので、メンテナンス性を損なわない丁度良いサイズ感だったと思います。
ステンレスマウントブラケットと8K HDRにも対応する4つのディスプレイ出力
これまでメッキ(亜鉛?)が多かったマウントブラケットは、ASUS Dual GeForce RTX 3060 V2 OC Editionで耐腐食性の高いSUS304ステンレスを採用し、湿度の高い場所での長期間の使用でも錆の発生が抑えられています。
また、最大4つまでのディスプレイに動画を出力できるDP 1.4aディスプレイポートを3ポート、1ポートのHDMI 2.1出力を備えており、いずれのポートも8K映像と動的HDR(HLG等)の出力にも対応しております。
※DP 1.4aとHDMI 2.1の出力可能な解像度はDP1.4a+DSC で最大 4k 12 ビット HDR@240Hz / DP 1.4a+DSC または HDMI2.1+DSC で最大 8K 12 ビット HDR @ 60 Hzまでをサポート。
コンパクトサイズにNVIDIA GeForce RTX3060と12GB VRAMを搭載
NVIDIA®Ampereアーキテクチャを採用したグラフィックスエンジンNVIDIA GeForce RTX 3060の搭載で、ゲーミングモードのブーストクロックで1837MHz、OCモードのブーストクロックは1867MHzまで引き上げられました。
Mini ITX幅よりも小型サイズでありながらも、動作クロックを標準値よりも高めに引き上げられたOCエディションに位置付けられているため、標準的なサイズのRTX 3060と同等以上の性能を発揮します。
また、ビデオメモリーを大量に消費するアプリケーションに最適な12GBの大容量VRAMを搭載し、ビデオメモリーを大量に使う動画編集ソフトウェアのレンダリングや3DCGの描画などでとても有利になります。
Axial-techファンを2基搭載した冷却性能
冷却機能はファンブレードの周りにバリアリングを備えたAxial-techファンを2基搭載し、直進性と流速を高めたエアーをヒートシンクに直接吹き付けて、高負荷時に発生する熱を効率よく排出します。
アイドル時や低負荷時にGPUの温度が50℃以下になるとファンストップモードが作動するようにスマートに調整された0dBテクノロジーを採用。
ミドルタワーケースでは、電源ユニットとグラフィックボードの間に熱だまりが発生して、常時ファンが回りっぱなしになっていたので、ケース内エアフローの状況によっては同じような現象が発生してしまう可能性もあります。
室温にもよりますが、GPU使用率が100%近い高負荷状態になると、冷却ファンの回転数を自動で調整をしながら75度前後でピタリと止まり、どんな事をしても(オーバークロックしても)80度以上まで温度が上昇する事はありません。
これが、直進性と流速を高めたエアーをヒートシンクに直接吹き付けるAxial-techファンの強力な冷却効果なのでしょう。
動画編集と書き出しは4Kでも割とスムーズ
8GBのビデオメモリを搭載したRTX2070 SUPERでは、RAWデータやApple prores、Avid DNxHRなどの不可逆映像圧縮フォーマットの編集や4K以上での書き出しで、メモリー容量不足エラーや書き出しに充分な速度を出せない事もありましたが、RTX3060ではカラーグレーディングやスタビライズ処理などを重ねて使用しても、充分な速度を保ったまま4Kや6Kなどの高精細映像も書き出しを行えるようになりました。
4KのAvid DNxHR HQで長さ30秒ほどの映像クリップをMOV H.265で書き出すと、書き出し速度最大115fps約9秒ほどで書き出しを終える事が出来ました。
BMPCC6KのBlackmagic RAW Filmで撮影した1分の映像クリップを、SDR Rec.709のMP4 H.265・4Kから6Kの解像度で書き出すと、平均42fps 約1分13秒で書き出しを終えられましたが、書き出し中のビデオメモリー使用率は9GBに達します。
書き出し中の解像度を4Kから6Kまで変更しながら書き出し時間を比較してみましたが、VRAMの残容量に余裕があれば、いずれの解像度でも書き出し速度に大差は生じませんでした。
6K Blackmagic RAWで、カラーグレーディングとNeat Videoを使用したノイズリダクション処理を行って、4K HEVC Main 10 HDRで書き出すと4fps、5Kや6Kになると1~3.5fpsの書き出し速度になります。
ノイズリダクションやオプティカルフロー+スピードワープの使用では、5K以上の処理が難しくなってしまうレベルとなりますが、4Kまでであれば時間はかかっても書き出せない事はありません。
GPUの性能がほぼ同じか少し上ぐらいでVRAM容量が8GBのRTX 2070 SUPERでは、VRAM容量エラーでノイズ軽減処理を行えなかったぐらいなので、8GBから12GBにVRAM容量が増えただけでも扱える映像はだいぶ多くなりました。
GPUの性能ばかりに目を向けられがちだけど、作業内容によってはビデオメモリの容量も軽視できないレベルなのだと感じさせられます。
動画編集 RTX3060 vs RTX4060の比較
RTX3060を搭載したデスクトップPCと、RTX4060を搭載したゲーミングノートパソコンLenovo LOQ 15IRH8 82XV006JJPで同じ処理を行った際の書き出し時間を比較すると、1世代後のRTX4060の方が4fps~5fpsほど書き出し速度が遅くなっています。
RTX4060はRTX3060よりもCUDAコア数を500~800基近く減らされているため、GPUとビデオメモリーに負荷がかかるDaVinci Resolveを使用したHEVC Main10 HLGの書き出しでは、RTX3060 12GBの方が性能が高く、より高速で映像の処理が終えられるという事になります。
ノイズリダクションプラグインNeat Videoを適用したクリップの書き出しでは、GPU アクセラレーションレンダリングにおける第8世代と第13世代Intel CPUの性能差を埋められず、RTX3060は5~5.5fpsでエンコードをしていたのに対し、RTX4060では6fps~6.5fpsの書き出し速度になりました。
DaVinci Resolveの場合は、VRAM容量が足りなくなってしまった際に、映像の書き出し処理が出来なくなるビデオメモリー容量エラーを吐いてしまう事もあるので、重い処理を重ねた解像度が高い映像の場合は、VRAM容量の差が出てRTX3060 12GBの方が処理落ちしにくくなります。
FF15のベンチマーク結果はRTX4060と2070Sより下か同等ぐらい
既にRTX2070superは手放しているので、記憶の中での比較となってしまいますが、FF15ベンチマークの4K高品質設定では、RTX 2070 SUPERの性能が上か同等ぐらいとなりますので、GPUを主に使用するゲームやソフトウェアでは3060の方が10%近く性能が低く感じる事はあると思います。
VRAMよりもGPUを主に使うソフトウェアやゲームで使用するのであれば、2070 SUPERよりもスコアが高くなるRTX 3060 Tiかそれ以上のグラボをオススメします。
ビデオの書き出しでCUDAコア数の減少が結果に反映されてしまっていたRTX4060ですが、FF15ベンチマークの4K高品質設定では、RTX3060よりも400ポイント高いスコアを付けています。
低解像度の画像を高解像度にアップスケールしてフレームレートを伸ばすDLSSを有効にするとさらに差が付いて、RTX3060の5760ポイントに対してRTX4060は6522ポイントまでスコアを伸ばしました。
どちらもRTX30系と40系の下位に位置する低価格帯グラフィックボードとなりますが、VRAM容量とCUDAコア数が多いRTX3060は動画編集向けのスペックになっているのに対し、クロック周波数とL2キャッシュが大幅に増えたRTX4060の方がゲームなどの3DCG描画で高い性能を発揮している結果となりました。
ライブ配信用エンコーダーNVENCも搭載
ビデオのエンコードに使われるGeForce GPUの独立したNVIDIAセクションであるNVIDIA Encoder (NVENC)を搭載し、OBS(Open Broadcast Software)やXSplitなどのライブ配信ソフトウェアでは、X264の1.2倍から1.5倍のパフォーマンスで高品質なライブ配信も可能になっています。
RTX3060は、NVIDIA NVENCの高圧縮映像フォーマットHEVCを使用した配信にも対応をしているため、回線速度が遅くネットワークが不安定になりがちな場所では、ファイルサイズを圧縮した途切れの少ないライブ配信を行う事もできます。
当製品でNVIDIA NVENCのH.264とHEVCは使用出来ますが、より高圧縮で高品質なエンコードを可能にしたAV1はRTX40系からの対応で、RTX30系はデコードのみの対応となっております。
3060はLHR版なので仮想通貨のマイニングには不向き
取引などのデータをブロックチェーンに保存する作業を行って、その報酬として仮想通貨を得る事が出来るマイニングブームで、マイニングに使用するグラフィックボードの品薄と価格高騰が続いた事がありましたが、ASUS Dual GeForce RTX 3060 V2 OC Editionはマイニングの計算速度を意図的に下げているLHR版(Lite Hash Rate版)となります。
品薄と価格高騰の原因となったマイナー勢(マイニングをする人)が手を出しにくい設計となっているため、ゲーマーや動画編集者の手に回りやすく、低価格に抑えられています。
お金に糸目をつけたいゲーマーや映像制作者向け
ASUS デュアル RTX3060 OC 12GB GDDR6 PCIE 4.0 HDMI 2.1 3XDP 1.4A V2
RTX 40シリーズやRTX3060Ti以上のグラフィックボードの価格がなかなか下がらないご時世ですが、ASUS Dual GeForce RTX 3060 V2 OC EditionはGPU自体の性能は良いとは言えないけど、PCI EXPRESS×16 Gen4に対応し、今まで8GBのビデオメモリで足りなく感じていたゲーマーや映像制作者にはオススメできるグラフィックボードです。
価格は、45,000円から58,000円ぐらいで推移しているので、お金に糸目をつけたい方にはちょうど良いスペックとなるでしょう。
ASUS Dual GeForce RTX 3060 V2 OC Editionのスペック
アーキテクチャ | Ampere |
GPU | GA106 |
プロセス | 8nm |
トランジスタ数 | GA106:132億 |
ダイサイズ | GA106:276mm² |
CUDAコア数 | 3584基 |
Tensorコア | 112基 |
RTコア | 28基 |
GPU コアクロック | OC Mode – 1867 MHz (Boost Clock) Gaming Mode – 1837 MHz (Boost Clock) |
VRAM メモリ規格 | GDDR6 |
VRAM メモリ容量 | 12GB |
VRAM メモリバス | 192bit |
バンド幅 | 360GB/s |
メモリスピード | 15bps |
インターフェイス | PCI Express 4.0×16 |
NVIDIA NVLink | 非対応 |
最大デジタル解像度 | 7680×4320 |
標準ディスプレイ コネクタ | HDMI 2.1×1・Display Port 1.4a×3 |
マルチモニター表示 | 最大4 |
HDCP | 2.3 |
AV1デコード | 〇 |
AV1エンコード | × |
NVIDIAエンコーダー | 第7世代 (RTX20と同等) |
NVIDIAデコーダー | 第5世代 (RTX40と同等) |
占有スロット数 | 2 |
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