動画編集ソフトAdobe Premiere proに内蔵しているワープスタビライザーは、ビデオカメラで手持ち撮影時の手ぶれや三脚を使用しての撮影時に発生する微振動など、あらゆる手振れを強力に補正して滑らかな映像に仕上げる事ができる高機能エフェクトです。
記事内の目次
ビデオ撮影時に発生する手振れの主な原因について
昔から動画撮影時には手ぶれが付き物で、どんなに強力な手振れ補正が内蔵されているカメラでも、特に望遠域では必ず手振れが発生してしまう物です。 主に手持ち撮影時の手や体の揺れがカメラに伝わってしまう事が原因となってしまうのですが、実は自分では気づかない程の微妙な揺れでも望遠域では大きな手振れとして映像に反映されてしまいます。
最近は、一般の家庭でも三脚を使用して運動会の撮影をしたりなど、昔に比べれば三脚を使用してブレの少ない映像を撮られる一般の方も増えて来ましたが、撮影した動画を見てみると微振動が発生していたりパンやチルト時にグラグラと揺れてしまっている事もよく見受けられます。
トレーニングをすれば綺麗に撮れるというものではなく、呼吸や心拍・筋肉の振れなど、生きている限りは人体から発生する微妙な揺れが原因となっている事も少なからずありますし、三脚を使用していても脚の強度が足りなかったり油圧雲台のトルクが不足していたりと原因は様々です。
手振れの原因は様々ですが、撮影後の映像に手振れが残ってしまった場合はどうするか?というのが今回のテーマです。
Adobe Premiere Pro CCの手振れ補正 ワープスタビライザーの性能
Adobe Premire Pro CC Warp Stabilizer Effect ワープスタビライザー使用前後の比較
まず、Youtubeにアップロードしたタイ国際航空の飛行機の動画を見ていただきましょう。ワープスタビライザーを適用前と適用後の映像が続き、最後に両方を比較した動画が続きます。映像のつなぎ目に隙間を開けているのでどのぐらい補正しているのかを分かりやすくしています。
元の動画は三脚を使用しているのに振動のような揺れ方が続いていますが、不整地に洗車台2台を立ててその上に三脚を立てているので、全体的にとてもバランスが悪い状態で撮影をしています(良い子のみんなは真似しないようにw)。
画面が揺れてとても見苦しい映像にワープスタビライザーを適用すると、手振れのほとんどが無くなって滑らかな映像に仕上がっております。
また、デジタルビデオカメラやミラーレス一眼カメラでよく見られる、動く被写体が歪む現象、通称「こんにゃく現象」と呼ばれる「ローリングシャッター現象」も補正してくれます。
便利で優れものなワープスタビライザーにも少なからず欠点があり、手振れを補正をする際に画面全体を動かして揺れを抑えているので、数パーセントは映像を拡大して表示しなくてはいけないので解像度が落ちてしまいます。
また、自動補正しかないので、カメラの上下動が激しい場合は、奥の被写体を固定して手前の被写体を揺らしてしまう現象が発生してしまったり、こんにゃく現象と誤認識してしまって、映像全体を歪ませてしまう事も時々あります。
これらの副作用も設定次第では抑えられる事があるので、ワープスタビライザーの機能説明と一緒に解説していきます。
ワープスタビライザーの使用方法
ワープスタビライザーは、エフェクトのビデオエフェクト→ディストーションの項目にあります。これをタイムラインにドラッグするとエフェクトコントロールにワープスタビライザーの項目が追加されます。
追加された時点でのデフォルト設定ではサブスペースワープが適用されて、手振れ補正の処理が始まります。
これだけです(笑)
問題が無ければこれだけで終わりなんですが、前述のように被写体を歪めてしまったり、過度なクロップをしてしまったりなど弊害が起こってしまう事もあるので、その際は設定を変更して様子を見てみましょう。
次は、各設定項目の解説をします。
ワープスタビライザーの各種設定項目の解説
分析/キャンセル
基本的にワープスタビライザーを適用した時点で分析が始まっているのでクリックする必要はありません。設定を変更したりキャンセルした後に分析の項目が青表示になった際に再分析を開始するために使用します。その逆で、分析を途中で止めたい時はキャンセルをクリックします。
スタビライズ
滑らかなモーションとモーションなしの2つから選択ができます。初期設定では滑らかなモーションになっていますが、動きが無いフィックスで撮影している場合はモーションなしを選択します。
滑らかさ
カメラの元の動きに、どの程度の滑らかさを加えるかの設定項目です。この値を大きくすると滑らかさが増しますが、切り取られる領域が増えてしまうため解像度が落ちてしまいます。基本的には特に調整をする必要はありませんが、切り抜きが大きかったり滑らかさが足りなかったりした場合に設定を変更してみましょう。
置き換え方法
ワープスタビライザーで最も重要な項目で、映像の仕上がりに最も影響を及ぼす部分です。三脚を使用した映像であるのに、サブスペースワープを使用してしまうと過度な歪みを発生させてしまう事があるので注意が必要。
位置 位置データのみを補正する項目です。 三脚を使用して撮影した時のパンやチルト時の揺れのみで、ローリングの振れや歪みが無い時は最も良好な結果となります。
位置、スケール、回転 位置の補正に加えて、前後や回転の揺れも補正します。
遠近 フレーム全体が効果的にコーナーピンされるスタビライズを使用します。 と公式サイトに記載されていますが、あまり結果が良くないので、一度も使用した事がありません。
サブスペースワープ ワープスタビライザーの初期設定で適用される項目です。全ての手ブレに効果を発揮して、ローリングシャッターの歪みなども除去してくれます。良好な結果になる時もありますが、動きのある被写体では、画面全体を歪ませてメインとなる被写体が部分的に伸縮してしまい、違和感のある映像に仕上がってしまう場合があるのでご注意を!
サブスペースワープの場合は滑らかさを10%から15%に調整すると、被写体が歪まず仕上がり結果が良好になる場合が多いです。
境界線
フレーム スタビライズした後のエッジの制御方法です。 スタビライズのみ / スタビライズ、切り抜き / スタビライズ、切り抜き、自動スケール / スタビライズ、エッジを合成の四種類がありますが、基本的に初期設定のスタビライズ、切り抜き、自動スケールのままで大丈夫です。
三脚を使用して撮影している場合は位置だけの方が結果が良い時もあります。
自動スケール
分析後の自動スケール値が表示されます。 最大でも110%前後までで抑えられるように上の置き換え方法を変更して、解像感を失わないように設定を変更しましょう。
過度な切り抜きがある場合は正常な映像が出力されない場合がありますので、その時はワープスタビライザーの項目を一旦エフェクトコントロールから外して、過度な切り抜きが発生している要因を省く必要があります。 被写体がフレームアウトする際に手振れを認識できなくなった場合によく起こります。
最大スケールやアクションセーフマージン、追加スケールは特に触らなくても良いでしょう。
詳細分析
トラッキングの精度を上げて、より正確な映像を出力できるようにします。その代償として処理速度が低下してしまいますが、時間がある時は極力オンにしておいた方が良いでしょう(デフォルトではオフ)。
ローリングシャッターの修復
CMOSセンサー特有のローリングシャッター現象(こんにゃく現象)を修復します。基本的には初期設定の「自動リダクション」で充分ですが、大きな歪みがある時は「拡張リダクション」を使用しましょう。この機能は「遠近」と「サブスペースワープ」で機能します。
その下の項目は特に使う事も無いので省略します(笑)
手ブレで困ったときに重宝するワープスタビライザーは解像度を低下させてしまう弊害がありますが、映像を見る人が心地良く見れるようにするためにも是非使ってみる価値はありです。
是非、お蔵入りになってしまった映像で試してみましょう!
実はワープスタビライザーを使用している他の動画
ANA Boeing 747-400D 日本の空港 飛行機離着陸映像 全日空 ボーイング747-400D Plane Spotting at Japanese airport ジャンボジェット
2013年から2014年にかけて撮影したANAジャンボの退役までを追った映像です。過去に一度公開していましたが、再編集して公開しました。この映像にもワープスタビライザーを使用しています。
[4K]Genbikei 厳美渓(岩手県一関市) パステルブルーの水流と新緑が美しい風景 Beautiful Scenery of blue river in Iwate Japan
このワープスタビライザーはジンバル撮影での前後移動でも有効です。使用しているジンバルのパンモーターがガタガタになってきているのと、カメラ側で手振れ補正をオフにしていても、ここまで高精度な処理をしてくれます。
最高ですね!
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