秋田県大仙市高梨にある旧池田氏庭園は国の名勝にも指定された大庭園で、秋には紅葉の名所としても有名な観光スポットです。
まだまだ木々が色付いていない時期に訪れてみましたが、敷地の広大さと共に池田氏が築き上げて来た歴史や功績などを知る事が出来る場でもありました。この記事では大庭園の景色と共に池田氏庭園の見どころを紹介していきます。
記事内の目次
東北三大地主とも呼ばれた池田家の歴史
旧池田氏庭園は秋田県大仙市の観光名所で、秋には紅葉が美しい事でも知られていますが、この大庭園を築き上げて来た池田氏とはどのような人物なのか? その功績や歴史と共に解説していきます。
池田氏の始祖は、江戸時代初期に高梨村肝煎を務めた孫左衛門にさかのぼると伝えられていますが、その時代から東北三大地主となるまでの成長過程はよく知られておらず、まだ研究段階ではあるそうです。
最盛期を迎え始めるのは、弘化2年(1845年)から明治34年(1901年)まで生存していた第12代当主池田甚之助の頃で、秋田銀行の頭取や明治憲法下の帝国議会の上院である貴族院議員を1期務め、明治22年には市町村制の施行による初代高梨村長にも選出されるなど、地域の政治経済発展に尽力を尽くします。
その後を引き継いだ第13代当主の池田文太郎は、第2代の高梨村長に就任すると耕地1046町歩(約10K㎡)を所有した池田氏は最盛期を迎え、私財を投じて社会資本の整備や社会福祉・教育向上など、小作人や使用人の福利厚生の拡充に努めます。
現在の池田氏庭園の形になったのは、第14代当主の池田文一郎の頃で、明治29年に発生した東北地方最大規模の内陸直下型地震であった陸羽地震による主屋倒壊をきっかけに、日本人初の公園デザイナーで近代造園の祖とも呼ばれた長岡安平の設計のもとに敷地を拡大して、大正時代初期に旧池田氏庭園は完成しました。
昭和5年には払田柵(ほったのさく)の発掘調査にも物的・経済的支援を行い、翌年には秋田県内初の国の史跡に指定された事でも知られています。
旧池田氏庭園の見どころ
旧池田氏庭園は仙北平野のほぼ中央部に位置し、上空から見ると池田家家紋の亀甲桔梗を意識した六角形に造成した4万2千㎡の広大な敷地の中に、主庭園、東部の奥庭、北西部の平庭の3区分に分けられていて、大きな池を中心に配した池泉回遊式庭園と呼ばれる日本庭園の様式に沿って作られています。
旧池田氏庭園の正門
旧池田氏庭園の正門は薬医門と呼ばれる形式の造りで、名前の由来には諸説がありますが門扉の隣に出入りが簡単な戸を設けて患者の出入りを楽にした医院の門という説もあります。
ここには地域住民のために一般開放されていた無料診療所があり、診療代を支払える者を抜いた人々には薬代も含めて池田氏が負担していたそうです。
庭園の入り口である受付棟へ
中に入るには受付棟での受付を済ませます。個人での入場であれば入口横にある券売機で入園券を購入してフロントの方に渡せば受付が完了します。料金は、高校生以上一人300円。
観光ついでに写真を撮影する人もいると思いますが、園内は三脚や一脚、自撮り棒の使用は禁止となっていますので、ご注意下さい。
米蔵と味噌蔵
右が米蔵・左が味噌蔵です。新しい建物にも見えますが、米蔵は老朽化に伴う修復工事を終えたばかりなのだそうで、明治20年頃に建築した床面積162㎡の米収蔵庫となっています。全体で6,000俵ほどの収蔵力があったとか。
高さが4mほどある庭園内の雪見灯籠や景石などを運ぶために使用していたソリも味噌蔵横に展示しています。長さは長いもので全長7.6mほどあり、積雪の多い雪国ならではの運搬方法として利用されていました。
底の直径が1.8m、高さが2mもある六尺桶は、通気性に優れた杉材を使用して作られていて、味噌や醤油、酒を仕込むために使用されていました。
展示しているのは味噌を仕込むための桶であったようですが、最大で約6トンもの味噌を一度に醸造できて、池田家最盛期の使用人150人換算で2年間はまかなえる量であったとか。
味噌蔵の中には他にも非公開の貴重な展示物もあり、そちらの扉は固く閉ざされておりました。(一応中は見えます。)
池田家を支えた調理場跡
最盛期には日雇いも含めて使用人は150人ほどで、池田家の調理場では1日に2俵(約120kg)の米を炊き、残ったご飯はオニギリにして正門前に置いて地域の方々にも分け与えていたそうです。
調理場も含めて旧池田氏庭園の随所では、莫大な富を得たとしてもいかに地域の方々を大切にしてきたかを伺えるような場面も見受けられます。
私設図書館として建築した洋館
庭園内で一際目立っている洋館は、池田氏の居住のために作られた物ではなく、地域の青少年教育や地域振興を目的に大正11年に竣工した私設図書館で、秋田県内初となる鉄筋コンクリート製の建造物となります。
比較的最近の話になりますが、2017年には「旧池田家住宅洋館」として国の重要文化財にも指定されました。
結婚式場のようにも見える洋館内部は、金唐革紙と呼ばれる貴重な高級壁紙が貼られています。元々はスペイン製の「金唐革」が元となった壁紙で、ヨーロッパの花を象徴するスイセンやチューリップなどの花々が描かれています。
2階もありますが、保護を目的に特別公開時に見学が可能になるとの事。事前予約制で、初夏と夏季、秋季の3期間に午前と午後のいずれかで拝見する事が可能となっています。
郷土の風景美を取り入れた大庭園
その土地に適した「自然木」を使用して地域の自然特色を生かす近代造園の祖、長岡安平の設計思想を反映した池泉回遊式庭園で、池のある主庭園を中心に平庭と内庭が作られています。写真右側の雪見灯籠は前述したソリで運んだものとされ、高さ直径共に国内最大級の4mにも達します。
主庭園の隣に作られた、平庭も美しく作りこまれています。ここには当時使用していたと思われる滑り台の跡地も残されていて、地域の子供達のために開放していた場所でもあったのかもしれません。
こちらが池田氏庭園内の中でも一際ノスタルジック感を放っている内蔵と呼ばれる建造物で、全部で三棟が連なっています。
紅葉の名所として有名である旧池田氏庭園ですが、庭園の美しさ以外にも池田氏が持つ郷土愛や地域の人々を大切にする想いを感じられるような施設ではあったのかと感じます。
秋田県大仙市は花火の街としても知られ、夏の大曲全国花火競技大会以外にも毎月のように花火が上がります。払田柵と共に大仙市観光の際は立ち寄ってみてはいかがでしょうか?
旧池田氏庭園 所在地や交通アクセス情報
住所 | 東北地方/〒014-0805 秋田県大仙市高梨大嶋1 |
日程・時間 | 2019年4月27日(土)~11月10日(日) 9時~16時 |
入園料 | 300円(高校生以下無料) |
駐車場 | 101台(正門前21台) |
交通アクセス | 羽後交通バス 千屋線「金堀バス停」下車、徒歩5分 秋田自動車道 大曲ICから車で10分 |
撮影 | 撮影可 三脚や一脚等の撮影補助器具は使用禁止 写真公開時には、制約がありますので現地でご確認下さい |
マップコード | 138 736 378*05 |
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