YouTube動画の視聴環境についてアンケートを取らせていただいております。近年は様々なカラースペースやガンマが乱立している映像の視聴や製作環境となっておりますが、今までのSDR映像からダイナミックレンジが広いHDRに変わろうとしている状況です。当方で運営しているYouTubeチャンネルでは、HDR映像も公開しておりますが、果たして実際にHDR映像に需要はあるのか?というのが気になって緊急アンケートを行う事になりました。
記事内の目次
HDRかSDRか?YouTube動画の視聴環境についてアンケート!
HDR映像とは?
HDRとは、High Dynamic Range(ハイダイナミックレンジ)の略称で、写真においては黒つぶれしそうな暗い被写体を明るく、白飛びしそうな明るい部分を抑えて、8ビットJPEGであれば0~255の間に明るさの違う複数枚の写真を合成してドラマティックな写真を作成する手法です。
その一方でHDR映像は、ハイビジョンテレビや4Kテレビで主流のSDR映像では最高輝度100nith(ニト:100cd/㎡)であったのに対して、最高輝度1000nitsから10000nitsまで大幅に拡張された新しい表示技術です。
HDRの写真はSDRが表示できるモニターでもHDR対応モニターでも、どちらでも表示や作成をする事が出来ますが、HDR映像はHDRの規格に対応したモニターやテレビが無いと再生または作成をする事が出来ません。
HDR映像の2つの方式
HDR映像を表示する方式として、Web配信や映画コンテンツ向けのPQ方式(Perceptual Quantization)とテレビ放送向けのHLG方式(Hybrid Log Gamma)の2つに大きく分けられ、どちらもSMPTEとITUで規格化されたガンマカーブとなっております。
PQ方式 | HLG方式 | |
主な用途 | Web配信や映画コンテンツ | テレビ放送、ライブ中継 |
特徴 | 人間の視覚特性に基づくガンマカーブ | SDRテレビと互換性のあるガンマカーブ |
輝度値の扱い | 絶対値で扱うため、表示デバイスによらず一定 | 相対値で扱うため、表示デバイスによって変動 |
提案団体 | Dolby | BBC/NHK |
関連規格 | SMPTE ST 2084、ITU-R BT.2100 | ITU-R BT.2100 |
SDRモニターとの互換性 | × | 〇 |
PQ方式は静的HDRのHDR10をはじめ、後発のDolby VisionやHDR10+の動的HDRにも採用されている方式ですが、HLG方式は表示されるデバイスによって輝度が変動する動的HDRであるため、HDR10は静的HDRに対応したHDMI 2.0aから、Dolby VisionやHLGなどの動的HDRはHDMI 2.0bから対応した規格となっております。
また、DisplayPortであれば、バージョン1.3で静的HDRへの対応、バージョン1.4では静的HDRに加えHLGなどの動的HDRにも対応しています。
とは言っても規格上の話で、本来転送できないはずのバージョンでも出来ている製品もあるっぽい・・。
HDRの規格は標準化されるのか?考察
日本国内のテレビの普及状況と言えば、1964年の東京オリンピック前のカラー化や、1988年のソウルオリンピックハイビジョン映像の試験放送、2003年の地上デジタル放送開始から2011年のアナログ放送の完全終了など、歴史的にも一つの節目を迎えた事がきっかけに徐々に新しいものに移行し、旧型の放送方式が衰退して完全終了してしまうという状況です。
その間にも3D対応テレビやメーカー独自の広色域モニターなど、標準化される事もなく不発のまま消えていった物もありましたが、ほとんどの場合は対応製品を使用しないと対応できないなどの、汎用性の低い規格であったのではないかと考えております。
HDR放送はどうかと言うと、HDRに対応したテレビやディスプレイさえあれば対応できるという状況なのですが、2020年の春から続いたコロナウィルス感染症の感染拡大があった事、我慢の日々が続く中強行開催となった東京オリンピックへの批判が相次いだ事もあり、新型テレビへの需要が少なかったのではないかと思われます。
またテレビ番組のほとんどは、4K SDR映像の規格に必要な色域であるITU-R勧告BT.2020に達していないどころか、投稿動画またはアスペクト比違いのスマートフォンで撮影をした映像を永遠と見せられられたりなど、テレビゲームやYouTube動画が先行してHDRに対応し、視聴デバイス普及の中心にいるはずのテレビ番組がかなり出遅れている状況です。
既にNHK BS4Kではコンテンツごとにダイナミックレンジを切り替えて、SDR映像はSDRのままで、HDR映像はHDR HLGで放送する事が出来るようにはなっているようですが、民放各社はSDRとHDRの切り替えに対応しておらず、ハイビジョンSDR放送を4K HDR HLGにアップコンバートして出力をしてるとの事。
HDRとSDRの両方に対応させるというのは、HDR放送用に製作してSDRにも変換できるLUTを埋め込まないといけないなど、制作する方にしてみれば手間がかかってやりたくないという感じなのでしょう。(私もやりたくないです。)
HDRにはHLG方式とPQ方式の2通りに加えて、HDR10+やDolby Visionなど、放送規格がまた乱立しているような感じになってはいますが、多分日本国内ではNHKと英BBCが共同で開発したHLGで落ち着くのではないかと考えております。
しかし、一部視聴者がテレビ番組の点滅シーンで光過敏性発作等を起こし救急搬送された事件でもあるポケモンショックの事もありますし、1000nit~10000nitの明るい映像であるHDR放送の規格が標準化されるのは、まだまだ先の数十年後の話になるのではないかと思います。
実際にHDR映像は需要あるのか?アンケート
今年の春に機材を売ってHDR映像を製作できる環境を整えましたが、2017年頃に自室のテレビを廃棄してほとんどテレビ番組を視聴しなくなった事もあって、テレビやインターネットメディアを視聴している方々がどのような視聴環境にしているのかを把握しきれていない部分があります。
果たしてHDR映像を製作するべきなのか、SDR映像のまましばらく様子を見ていくべくなのか、視聴者の視聴環境に合わせて製作していくべきなのではないかと考えました。
テレビやスマートフォンなどの視聴している環境を把握するべく、アンケートを行っておりますので、是非ご協力いただければ幸いです。
アンケートは以下のリンク(Japan Videographyチャンネル投稿)で投票が出来ます
https://www.youtube.com/post/UgkxUmsLbrn7gFhkFkEeuRcqDVDMb28lvkgz
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