外付けストレージや周辺機器をパソコンに繋ぐためのUSB端子ですが、規格や端子形状が増えすぎて、とうとう分かりにくくなってきちゃいましたね。形が違うのであれば物理的に入らないけど、同じ端子形状で規格が違うのは本当に分かりにくいのです。この記事ではUSB端子の形状や規格についてまとめました。
記事内の目次
分かりにくくなったUSB端子形状と規格の事
USBとは?
USBとは、ユニバーサル・シリアル・バス(Universal Serial Bus)の頭文字を取った名称で、パソコンに周辺機器などの外部機器を接続するためのシリアルバス規格の1つです。
例えば、カメラの撮影データを読み込む時や、外付けハードディスクを接続するときなどにも使用されてきていますが、互換性を保ったまま時代の流れと共にデータの転送速度向上やコネクター形状の変更が重ねられてきました。
この規格は、ヒューレット・パッカードや日本電気、マイクロソフト、Apple、インテルなどが加入しているUSBインプリメンターズ・フォーラム(USB-IF)が策定しており、現在に至るまでUSB 1.0から4.0までの規格や様々な形状のコネクターが作られてきました。
USB端子形状と規格
USB Type-Cの登場までは、規格によって色が変えられていたり形状を変えていたりと、一目で分かりやすいように作られてきましたが、USB Type-Cの登場以降は、マイナーバージョンが乱立して分かりにくくなっているのです。
現時点で発表済みであるUSBの規格を以下の表にまとめました。
USB規格 | 転送速度 | コネクタ形状 | 給電容量 | 発表年 |
USB 1.0 | 半二重 12 Mbps(1.5MB/s) | Type-A Type-B Mini-A Mini-B Micro-A Micro-B | 500mV | 1996年1月発表 |
USB 1.1 | 半二重 12 Mbps(1.5Mb/s) | Type-A Type-B Mini-A Mini-B Micro-A Micro-B | 500mV | 1998年9月発表 |
USB 2.0 | 半二重 480 Mbps(60MB/s) | Type-A Type-B Mini-A Mini-B Micro-A Micro-B | 500mV | 2000年4月発表 |
USB 3.0 | 全二重 5Gbps(625MB/s) | Type-A Type-B Micro-B Type-C | 900mV | 2008年11月発表 |
USB 3.1 Gen1 | 全二重 5Gbps(625MB/s) | Type-A Type-B Micro-B Type-C | 900mV | 2008年11月発表 |
USB 3.2 Gen1 | 全二重 5Gbps(625MB/s) | Type-A Type-B Micro-B Type-C | 900mV | 2008年11月発表 |
USB 3.1 Gen2 | 全二重 10 Gbps(1.25GB/s) | Type-A Type-B Type-C | 1000mA (USB PDは1.5A~3A) | 2013年8月発表 |
USB 3.2 Gen2 | 全二重 10 Gbps(1.25GB/s) | Type-A Type-B Type-C | 1000mA (USB PDは1.5A~3A) | 2013年8月発表 |
USB 3.2 Gen2×2 | 全二重 20 Gbps(2.5GB/s) | Type-C | 1000mA (USB PDは1.5A~3A) | 2017年9月発表 |
USB 4 | 全二重 40Gbps(5GB/s) | Type-C | 1000mA (USB PDは1.5A~3A) | 2019年9月発表 |
パソコンやオーディオ機器、カメラやオーディオインターフェイスなどの機器を複数持っていると、端子形状の互換性が無いミニUSBとマイクロUSBのケーブルが一方的に増えてしまう問題がありましたが、Type-Cで統一されれば問題が解消されるかと思いきや、同じ端子で転送速度の違いと名称増えすぎ問題が発生しました。
コネクターについてはUSB 2.0のType-Aは白、USB3.0のType-Aは青など、同じコネクター形状でも一目で分かるようになっていましたが、Type-Cにおいては同じコネクター形状でも転送速度が違かったり、そもそも規格名称が違うだけで同じ規格であるなど、ユーザーを混乱させるような事が起こっているのです。
USB 3.0
USB 3.1 Gen 1 ← 従来のUSB 3.0のこと
USB 3.1 Gen 2 ← USB 3.1で新しく拡張
USB 3.2 Gen 1 ← 従来のUSB 3.0, USB 3.1 Gen 1のこと
USB 3.2 Gen 2 ← USB 3.2で新しく拡張(2レーン)
USB 3.2 Gen 2×2 ← USB 3.2で新しく拡張(2レーン)
接続するデバイスがType-C端子で転送速度がUSB3.0同等であれば特に気にする事は無いのですが、NVMeをベースにした1GB/sを超える外付けストレージを使用する時などは、ケーブルの規格が違うだけで最大の転送速度が出せないなんて事も起こってしまい、USB 3.1 Gen 1からUSB3.2 Gen 2までは、最大の転送速度をパッケージに記載してもらわないと非常にに分かりにくくなっているのです。
特に現在使用しているシネマカメラが外付けストレージでデータを保存するタイプなのですが、USB 3.1 Gen2(USB 3.2 Gen2)のケーブルを使用しないと収録中に停止してしまう事がある上に、ファームウェアのバージョンアップと共に変更が加えられたマニュアルにもUSB3.1と3.2の両方で記載してるので、同じ転送速度の違う規格を覚えるのが大変だったのです。
そして家電量販店に行ってもUSBケーブルに記載している規格もバラバラで、しっかりとパッケージを読まないとUSB 2.0のType-Cケーブルを手にしてしまう事にも注意が必要です。
転送速度はSSシンボルで区別するようになった
以前はUSB 2.0の端子の色は白、USB3.0は青と、一目見てもすぐに分かるような色で最大の転送速度とUSBの規格を区別していましたが、これらの色はUSB仕様の一部ではなく、推奨とされてきました。
USB3.1の登場以降は、デバイスのメーカーが好き勝手に色分けをするようになり、転送速度5GbpsのUSB端子は青、転送速度10GbpsのUSB端子は赤やオレンジ、黒などのメーカーによって独自の色分けがされるようにもなりました。
現在は多くのデバイスメーカーで、USB端子付近にSSと書かれたマークを付けていますが、これは一般ユーザー向けにも分かりやすくするために、USB-IFが表示の推奨をした「SSシンボル」というもので、給電の可否と転送速度を基準としたマークで規格の区別を出来るようにしたものです。
SSシンボルに記載されているSSとは「Super Speed」の事で、SSシンボルの後方に付けられている数字で、それぞれの最大転送速度を分かりやすくしています。
USB規格 | 通信規格(転送速度) | SSシンボル |
USB1 | Low-Speed (1.5Mbps) | |
USB1.1 | ||
USB2.0 | High-Speed(480Mbps) | |
USB3.0 | SuperSpeed(5Gbps) | |
USB3.1 Gen1 | ||
USB3.2 Gen1 | ||
USB3.1 Gen2 | SuperSpeedPlus(10Gbps) | |
USB3.2 Gen2 | ||
USB 3.2 Gen2×2 | SuperSpeedPlus(20Gbps) |
外付けデバイスが必要とする転送速度の高速化で、USBの規格名称や端子形状よりも、通信規格や転送速度の方が重要になったのもありますが、乱立する規格名称よりも「SSシンボル」の方が分かりやすくなりました。
当ウェブサイトでも紹介しているLenovoのゲーミングノートパソコンLOQ 15IRH8のUSBシンボルは、SS無しシンボルがSS 5Gbps、頭に10が付いたSS無しシンボルがSS+ 10Gbpsと、独自のものが付けられていて端子の色も黒で統一されています。
USB-IFが推奨としている事で、違うマークが刻印されてしまっているのが現状でもありますが、同じ転送速度の規格名称違いよりは、端子形状と速度表記で判別しやすくなっているかと思います。
USB 4以降のマイナーバージョンの扱い
マイナーバージョンが乱立していて分かりにくくなっているのは、USBの規格を策定しているUSBインプリメンターズ・フォーラムも認識しているらしく、USB4以降のマイナーバージョンはUSB 4.×のような名称の付け方を止めて、新名称にする事を公表していたそうです。
USB 4: Everything We Know, Including Apple Support
その代わりに、USB 4ではバージョン番号を記載したラベルではなく、転送速度を記載したラベルをパッケージに付けるようにするように推奨しているとの事。
転送速度を重要視するような使い方をしている身としては有難い話ですが、果たしてこれが全ての人に伝わるかどうかは分からないですし、刻印の難しさから独自のマークが付けられてしまうような気がします。
USB SuperSpeedの転送速度が5Gbpsとは限らない
USBケーブルにもSSシンボルが刻印されて、転送速度を計測しなくても一目で分かるようにはなっていますが、PC側USB3.2 Gen2端子と外付けNVMeを手持ちのUSBケーブルで接続して、実際の転送速度を測定してみました。
USB 3.0 Type-A to Type-Cケーブルの転送速度
SSマークが刻印されているUSB 3.0のType-A to Type-Cケーブルで実際の転送速度を測定しました。
USB3.0 SuperSpeedの規格上では5Gbpsで頭打ちになるはずなのですが、実際の転送速度はUSB3.2 Gen2のSuperSpeedPlus同等の10Gbps対応のケーブルになっていました。
転送速度の高速化で、定期的にケーブルの整理をしなければいけない時期というのは必ず訪れるものですが、後方互換性があるというのは非常に有難いものです。
手持ちのUSB3.0とUSB Type-A to Type-Cケーブルは全てSuperSpeed Plusの転送速度10Gbpsに対応をしていたので、シンボルは違くても実際にはSS10と同じ速度で動くという結果になりました。
USB 3.2 Gen2 Type-A to Type-Cケーブルの転送速度
SS10シンボルが刻印されているUSB3.2 Gen2のType-A to Type-Cケーブルで実際の転送速度を測定。
多少は誤差がありますが、USB3.2 Gen2の転送速度が10Gbpsにならないはずがないので、規格通りの転送速度が出ています。
シーケンシャルリードの1MQ1T1の速度が100MB/s以上速くなっていますが、SSD本体の発熱による速度低下によるものかと思われます。
USB 3.2 Gen2 SS10 Type-Cケーブルの転送速度
転送速度10GbpsのSuperSpeedPlusであるSS10の刻印がされたUSB3.2 Gen2 Type-Cケーブルの転送速度は、規格通りの速度が出ています。
PD(Power Delivery)に対応している事以外は、USB3.2 Gen2 Type-Aケーブルと大きな違いは見られません。
USB 3.2 Gen1 Type-Cケーブルの転送速度は違う
Type-A to Type-Cケーブル同様の結果になると思っていた、SSシンボルが刻印されたUSB 3.2 Gen1 Type-Cケーブルのみ結果が違いました。
シーケンシャルリード1MQ8T1では、SS10とSS5のどちらでもない768MB/sで頭打ちになり、何度測定をしても750MB/s前後の転送速度が最大となっていました。
本来であればUSB3.0 Type-A to Type-Cケーブルも本来はこの速度で頭打ちになってもおかしくないようなものですが、USB 3.2 Gen1 Type-CケーブルのみSS10シンボルの10Gbpsに対応していなかったという事になります。
ケーブルや端子の品質でどの程度マージンを持たせているかが速度差として現れたのだと思いますが、転送速度5Gbpsのケーブルが転送速度10Gbpsに必ず対応をしているわけではないようです。
PDで送れる電力も変わる
ケーブルに刻印された小さなSSシンボルでしか判別できないので、USB3.2 Gen2以上のポートが搭載されたPCを所有している場合は、間違い防止のために転送速度が遅いケーブルを処分をしてしまう事も考えた方が良いのでしょう。
また、ケーブルの品質によってはPD(Power Delivery)で送る事が出来る最大電力も変わってくると思うので、大きな電力を必要としている機器を所有しているのであれば、万が一に備えてそれ以上の性能を持つケーブルに統一した方が良いと思います。
規格を統一するのが手っ取り早そう
USB Type-Cの登場で、端子の種類が統一されるかと思いきや、USB Type-Aの高速化が止まらなかった事で、規格と端子が余計にややこしくなったような気もします。
当初は従来の規格と互換性を持たせないために、USB Type-Cを登場させたのかもしれませんが、Type-Cでも2.0ケーブルが当たり前のように家電量販店で販売されている事もあるのが現状です。
ごちゃごちゃして分かりにくくなったUSBの規格対策としては、手持ちのUSBケーブルを転送速度が最も高速なケーブルに全替えしてしまう方が、間違いが無くて済むかと思いますし、特に高速な転送速度を必須としている映像の伝送や記録、高解像度のビデオキャプチャを接続する可能性がある場合、PDで大きな電力を供給する必要がある場合は、速度違いのケーブルの混在に注意をした方が良いでしょう。
USB Type-AであればUSB 3.2 Gen2、Type-CであればUSB4のケーブルに統一しておけば、高速な転送速度を必要としている機器を接続する時に間違えてしまう事も無いはずです。
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