花火撮影や音楽撮影で2013年から使用していたXYステレオマイクが突然故障したので、代替品として使用する新たなマイクを探していたのですが、音が良さそうなステレオマイクはどれも値段が高い・・。どっちみち購入しなくてはいけなくなるので、ショッピングサイトで評価が悪くなくて低価格なマイクを探していた所、低価格だけど評判がそんなに悪くないステレオペアマイクMXL CR21 PAIRを見つけたのでダメ元で購入してしてみたら高価格帯のマイクに劣らないぐらいの高音質で収録ができたので、この記事ではこのマイクの素晴らしさをレビューさせていただきます。
記事内の目次
MXL CR21 PAIRを購入したきっかけ
以前からフィールドレコーダーZOOM H4nやRODE NT4などのXYステレオマイクを使用していたのですが、狭い空間で音を収録するよりも大きな空間や屋外で収録する機会がほとんどで、セッティングが容易で高音質だけど音の広がりが足りないという不満は抱えていました。
2020年からはカメラをSony α7SからBlackMagic Design Pocket Cinema Cameraに変更しましたが、BMPCC6Kはマイクの入力レベルが低く、XLRマイク入力もモノラルなのでマイク単体ではほぼ使えない状態なのです。
音量調整が出来るZOOM H4nの内蔵マイクを使用しても良いのですが、バスドラムの音や花火の音の響きが綺麗に収録できない低域の軽さが気になって、RODE NT4で収録してZOOM H4nで音量を調整する手段を取っていました。
ただし・・NT4が故障してしまうまでです・・。
NT4を修理に出すか、一体型のXYステレオマイクを新規購入するのも一つの手段だとは思いましたが、せっかくなので自由に配置を変えられるコンデンサーステレオペアマイクに絞って検索をしていました。
理想はペアマイクの特性が左右でほぼ同じになるマッチドペアマイクだったのですが、RODE M5やNT5は音が良いけどそこそこ値段が高い・・。
低価格で購入できるペアマイクが無いかと探していた所、悪い評価がほとんど無いのに、一万円台の低価格で購入ができるMXL CR21 PAIRを見つけてしまいました。
MXL CR21 PAIRの仕様
■コンデンサーマイク
■周波数特性: 30Hz – 20kHz
■指向性:単一指向性
■感度: 10mV/Pa
■出力インピーダンス:200 ohms
■等価ノイズ:18 dB (A-weighted IEC 268-4)
■S/N比:80 dB (Ref. 1 Pa A-weighted)
■最大SPL for .5% THD: 134 dB
■電源:48V phantom power (+/-4V)
■サイズ:22mm x 135mm
■重量:130g
■メタルフィニッシュ:マットブラックアンドブラッククローム
■付属品:マイクロファイバークロス、マイクホルダー(“3/8、”5/8対応変換ネジ付属)
※マッチドペアではありません。
指向特性図を見る限り、単一指向性でありながら8kHzは後方の音まで広く拾っているという特性になっているみたいです。前方に関してはORTF方式のように90度を超える角度まで広げても中抜けはしにくそう。
周波数特性については5kHzから20kHzまでの波形の上下動が気になるものの、パラメトリックイコライザーでフラットに持ち込めていけそうな感じで、低域に関しては30Hzからの表記に対してRODE NT4と同等もしくはそれよりも優秀なレベルであるように見えます。
最大SPLも今まで使用していたマイクよりも9dBほど低いのが気になりますが、よっぽどじゃないと超える事は無いので、S/N比などのデータも含めて価格の割にはかなり優秀なマイクであるようですね。
気になる部分は左右の特性を揃えるマッチドペアではない事ではありますが、実際に使用してみないとわかりません。
MXL CR21 PAIRの外観
48Vの※1ファンタム電源駆動なので、他のペアマイクと同様にとても軽量でコンパクトです。
ブラッククローム部分の仕上げが汚く見えますが、使用しているうちに汚れただけなので製品はとても綺麗な仕上げですし、本体のマットブラック塗装も重厚感を感じます。
ダイアフラムはコンデンサーマイクの中では割と大きめのΦ17ぐらいなので、ノイズの低さや許容する音圧レベル、または感度などのデータににそのまま反映されているようです。
※1ミキサーやオーディオ・インターフェースからキャノン(XLR)ケーブルを経由してマイクに必要な電源を供給する仕組みで、機器側にこの機能が備わっていない場合は、別途ファンタム電源を購入してマイクを駆動させる事が出来る
MXL CR21 PAIRの使用感
2本がセットになっているペンシル型のコンデンサーマイクなので、一体型のステレオマイクと比較すると配置の自由度が増しますが、MXL CR21 PAIRをステレオで使用する場合はマイクスタンドやステレオバーが必要となりますので別途用意しておいてください。
一本だけを使用して、モノラル入力のマイクとしてもそのまま使えるので、このマイクさえあれば音楽演奏の収録以外にも、演奏後のインタビューにもそのまま使用できる汎用性の高さが良い。
経験上の話になりますが、付属するマイクホルダーでは低域の振動がマイクスタンドを伝ってマイク本体から音として収録されてしまう事があるので、安くてもサスペンションホルダーやショックマウントの方がクリアな音で収録できます。
空気が振動する音以外の振動をマイクに極力伝えない工夫は、どの収録シーンでもとても重要なポイントになりますし、ショックマウントを使用していない場合は、どんなに高性能なマイクロフォンを使用していても板が弾むような雑味のある低音が収録されてしまいますので注意が必要。
屋外などで風の影響による吹かれノイズ対策も必要となりますが、MXL CR21 PAIRに対応したウィンドジャマー(ウィンドスクリーン)が見つからなかったので、内寸が22mm径となっているアシダ音響さんのDMC-001用を購入しました。
MXL CR21にウィンドスクリーンやウィンドジャマーを取り付けるのなら、これ以上ピッタリとフィットする製品は存在しないのではないかと思いますし、創業から70年以上の信頼と実績がある音響機器メーカー製だからこその製品クオリティがとても素晴らしいです。
それでは、MXL CR21 Pairで収録した動画も用意しておきました。
MXL CR21で収録した映像
2021年 能代港疫病退散サプライズ花火 Noshiro Surprise Fireworks Show 2021
全ての視聴環境に対応するために音量を調整していますが、価格の割に音質がとても素晴らしいですし、左右の音量の差はほとんど気になりませんでした。(現場のスピーカーが左側にあったので音楽は左側に偏っています。)
今回のマイク配置はNOSステレオ方式(オランダ公共放送の配置)でしたが、音の広がりはまずまずの結果でしたので、次はORTF方式も試してみたい所です。
感度が高めなのでノイズがとても少なく、ノーマライズやコンプレッサーを使用して音量を上げてもノイズが乗りにくい所はとても印象的で、RODE NT4からの入れ替えとなりますが、フィールドを選ばずオールマイティに使用できるMXL CR21 PAIRの音質にはとても満足しています。
機材を減らすどころか日に日に機材を増やしちゃってセッティングがめんどくさくなっているような気がする・・。
2021年 わたり夏の夕べ 亘理町サプライズ花火
ORTF方式で収録した花火の映像です。収録後はノーマライズとパラメトリックイコライザーでMXL CR21の周波数特性に基づいたフラット化のみを行いました。
打ち揚げ花火の音が軽いのは、高度規制で4号玉までしか上げられない事と打ち上げ場所からの保安規制線ギリギリの場所から撮影を行っている事に起因するものであって、こんなもんです。
幅を広く使った演出では、マイクセッティングの自由度が増した恩恵を受けて、XYマイクと比較すると左右に流れる音の位置関係が明瞭になり、発射音のリアルさもRODE NT4と変わらないレベルです。
周波数特性に基づいてパラメトリックイコライザーを使用したフラット化を行いましたが、ウィンドジャマーを使用した場合は高域が減衰するので、低域と中音域以外は調整をする必要は無かったような気がします。
MXL CR21と他に購入した物
SMALLRIG マイクショックマウント 振動防止 角度調整可能 カメラシューズ/ボンポール用 1859
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