自動車タイヤ交換後に脱落しないホイールナットの締め付けとトルクレンチの使用方法

トルクレンチでホイールナットを締め付ける

先日のジムニーのタイヤ脱落で幼稚園から帰宅途中の女の子が重体となった人身事故がありましたが、自動車業界で15年勤務していた時にタイヤとホイールの脱落防止のために考えたホイールナットの締め付け方の事と、締め付ける時の注意点について記事にしました。

札幌で起きたジムニーのタイヤ脱落事故の事

スズキジムニーのタイヤ脱落事件
11月14日午後、札幌市西区で走行中のスズキ ジムニーからタイヤが脱落して、近くを歩いていた4歳の女の子に直撃し、意識不明の重体となった事故がありました。
タイヤが脱落したジムニーは、リフトアップをしてオーバーフェンダーを取り付けていた構造変更をしていない違法改造車であったとの事で、トレッド幅を広げてタイヤとホイールを外側に出すワイトトレッドスペーサーも取り付けていた事が原因ではないかと注目されていたものです。
運転していたのはジムニーのオーナーではなく、元整備士の会社員、若本豊嗣容疑者(49)がハンドルを握り、事故後に過失運転致傷の現行犯で逮捕されています。

事故を起こしたジムニーを整備したか何かの手を加えた後に起きた事故との事で、違法改造という点ばかり注目されていましたが、個人的には若本容疑者がホイールナットを締め忘れたか、強度の低いボルトまたはホイールナットの使用、またはボルトが長くて袋ナットの頭に底付きしていたかのどれかかが原因かと思っております。

違法改造自体は良くない事ではありますが、違法改造をしたのが理由でホイールごと外れてしまうという事は無いので、若本容疑者が走行前に十分なチェックを怠ったのが原因だったのでしょう。
仮にスペーサーが理由であれば強度が低い中国製のワイドトレッドスペーサーを使用していたのが原因でしょうけど、その場合でも走行時のフィーリングで異変には気づきます。

ホイールナットが緩む原因

ホイールナットの種類 テーパー座と平面座

ネジ山が合わないホイールナットの使用

車両の製造メーカーや大きさによって、ボルトの太さやネジ山のピッチに違いがあり、太さやネジ山のピッチがボルト側とナット側で合っていないと適正トルクをかけても締まりません。

  • M12×1.5 トヨタ・レクサス・ホンダ・三菱・マツダ・いすゞ・ダイハツ
  • M12×1.25 日産・スバル・スズキ

ネジ山のピッチが合わない場合は、締め付ける時に適正トルクで締め付ける事が出来ていても、ネジ山が潰れて噛んでいるだけなので、最後まで締まらない事でガタツキが発生します。

座面形状が違うホイールナットの使用

純正ホイールではトヨタやレクサス、三菱の一部車種で平面座を使用し、ホンダ車で球面座で使用している以外は、だいたいのメーカーでナットの先が絞り込まれている形状のテーパー座が採用されています。

平面座のホイールナットを採用している車種に社外ホイールを取り付ける場合は、M12×1.5のテーパー座のホイールナットを取り付けなければいけなかったり、球面座を採用しているホンダ車に社外ホイールを取り付ける場合にも、トヨタ系と同じM12×1.5のテーパー座のホイールナットに交換をしてからホイールを取り付けなければいけません。
座面形状が違うホイールナットを使用して締め付けるのも、緩みやガタツキの原因になります。

ボルトの長さに合わない袋ナットの使用

ホイールナットには、ピッチや座面形状が違う以外にも、ボルトがナットから突き出る形状の貫通ナットとボルトが完全に隠れる袋ナットの2種類があります。
ナットが完全に見えなくなるホイールキャップを使用している場合は貫通ナットを使用する事が多いのですが、外側から見てナットが見えているタイプのホイールは袋ナットを使用している場合があります。

特に袋ナットで注意していただきたいのは、ロングボルトにショート用のホイールナットを使用すると、袋ナットの頭にボルトが底付きをしてしまい、締まっているようで締まりきっていないという症状を引き起こします。
ワイドトレッドスペーサーを取り付けた時などは、ボルトが長めになっている事もあるので、袋ナットの長さは適正なのかしっかり確認をしていた方が良いでしょう。

強度が低い軽量ホイールナットの使用

ドレスアップやばね下重量の軽減が目的で、アルマイト加工をしたジュラルミンやチタン製のホイールナットを使用する人もおりますが、ドレスアップをしても個人的には使用したくない部品の一つです。
ジュラルミンはアルミニウムよりも強度が高いアルミニウム合金の一種ではありますが、強度は鉄よりも劣るため、伸びてしまったりネジ山が潰れてしまうような弊害もあります。
強度が高い7000番台の超々ジュラルミンならまだ良いのかもしれませんが、中華製のジュラルミンホイールナットの中には強度が低いタイプもあるので、安価な製品は特に注意が必要でしょう。
また、テーパー座で正規の角度である60度になっていない製品もあるので、その場合にはホイールのテーパー角と合わず、角で接触するような形になって緩みや伸びの原因になってしまいます。

締め付けトルクの不足

だいたいの場合は若干オーバートルクになって締まっている事の方が多いと思いますが、特に非力な女性の方などはトルク不足に陥りやすいと思うので、定期的にナットの緩みを確認するか、トルクレンチを使用するのが確実です。


ホイールナットの確実な締め方

筆者の場合は複数回に分けて締め付けておりますが、一つの部品に対して複数のボルトで締め付けを行う場合は、一番最初に締めた箇所の締め付けトルクが弱くなってしまう事もあって、何回かに分けて締めた方が確実だと思うからです。
その手順について以下で解説します。

1.ボルトのセンターとナットのテーパーを合わせるために手締めする

ホイールナットの21mmソケット使用した手締め
対角に締めるのは基本ですが、ホイールのナットホールのセンターとナットのセンターを合わせるために、軽く手締めを行います。
センターが合わないまま強く締め付けると、ハンドルのブレの原因になったり、いずれは緩んで走行中にホイールごと車両から外れてしまう事になってしまうので、ナットが奥まで締まるようにホイールを揺らしながら全てを軽く締め付けます。

特にハブリングが無いワイドトレッドスペーサーやハブ径が合っていない社外ホイールを取り付ける場合は、ボルトとホイールのナットホールのセンターが合いにくいです。

そして手締めを重要視しているのは、ねじ山にナットがかかっていない状態で横着をして十字レンチやインパクトレンチで突然締めると、ねじ山を潰してしまう恐れがあるのが理由です。
万が一ボルトのネジを潰してしまった場合は、ホイールの脱着やブレーキの分解に加えボルトの打ち換えなど、高額な修理金額がかかってしまいます。
なので、ナットがある程度ねじ山にかかるぐらいまで締まった事を確認してから、工具を使用する事をオススメしています。

2.タイヤを地面に設置させられるぐらいまで締め付ける

ホイールナットの締め付け クロスレンチで締める
タイヤ交換では、ジャッキから車両が脱落してしまわないように、最大トルクでの締め付けは車両を地面に接地させてから行います。
ジャッキスタンドを使うのが望ましいですが、タイヤを持ち上げている時に大きな力をかけなければ、落ちる事は滅多にありません。
5穴の場合は対角上に5か所を適度な強さで締め付けて、ホイールナット全てに極端な緩みが無い事が確認できたら、ジャッキを下してタイヤを地面に設置させます。

5穴ホイールのナットを締め付ける順番

1→2→3→4→5でも1→2→5→4→3のどちらでも大丈夫ですが、タイヤを設置させた後の仮締めは、時計回りや反時計回りではなく、対角上に行うのが基本の作業となります。
四輪のタイヤ交換が終わるまでは、ジャッキを完全に下げ切らない状態で適正よりも少し低いぐらいのトルクで締め付けておいて、完全にジャッキを外してからチェックも兼ねて二週目の締め付けをするのが私の本締めのやり方です。

3.適正なトルクで締め付ける

トルクレンチでホイールナットを締め付ける
5穴であれば5か所を本締めするのですが、私の場合は4輪全てのタイヤ交換が終わってから、チェックも兼ねて適正トルクで本締めを行っております。
時間が経つと少し馴染んでもう少し締まるという理由が一つですが、最後に一通り通しでチェックをすると、絶対に締め忘れる事が無いというのが主な理由です。

トルクレンチのトルク表示
全てのタイヤ交換と締め付けが終わって、100km走行後にもう一度増し締めをすれば、次のタイヤ交換の時期まで外れるという事はまずありません。
むしろ、100km走行後の増し締めまでが、タイヤ交換時のナットの締め付けと思っておいた方が良いのですが、その後もたまにチェックをしておくのが望ましいです。

筆者の場合はホイールナットの締め付けに、1番目にソケットでの締め付け、2番目にクロスレンチでの締め付け、最後の本締めと確認でトルクレンチを使用しております。
その理由としては、1.ソケットの使用はホールに指が入りにくい事とボルトにナットが斜めに入ってネジ山を潰してしまう心配が無い事、2.十字レンチであればある程度トルクをかけられる事とジャッキアップ時に本締めをしてジャッキから車両が外れてしまうリスクが少ない事、3.オーバートルクやトルク不足になる心配が無く適正なトルクでホイールナットを締め付ける事が可能な事の3つが理由です。

自動車の取扱説明書に記載のホイールナット締め付けトルク
ホイールナットの締め付けトルクは車両の取扱い説明書に記載してありますが、中古車の場合は取扱説明書自体が無い場合もあるので、車両を販売している最寄りのディーラーなどで確認をした方が良いでしょう。
購入した中古車販売店の営業マンは適当な事を言う場合も少なくないので、そちらはオススメしません。

また、トルクレンチとソケットのみを使用した場合は、バンパーやドアに当たって締め付けが難しい場合もあるため、その際はエクステンションバーを使用するのがオススメです。
強度が低いエクステンションバーや角度を自在に動かせるユニバーサルジョイントを使用すると、捻じれによるトルク低下の原因になる事もあるので、強度があるエクステンションバーを使用するのが望ましいです。


使用している工具の紹介

筆者の場合はタイヤ交換の際に5つの道具を使い分けておりますので、その工具を一式ご紹介します。

難しい事を考えずにタイヤ交換を行うためにはこのぐらいあった方が良いというだけで、絶対に無ければいけないというわけではありませんし、無ければ無いで普通は締め付けオーバートルクで何とかなっているはずと思っている派です。

トルクレンチ

オーバートルクやトルク不足にならず適正なトルクでホイールナットを締め付けるための必需品です。
設定値が狂ってしまう場合もあるので締め付け後の確認用の時だけ使用するようにした方が良いでしょう。

十字レンチ

折り畳み式でコンパクトに収納できるため、車載工具としても持ち運びが可能な十字レンチです。
手早く作業を行うためにはあった方が便利な製品です。

伸縮可能なストロングレンチ

ホイールナットを緩める際にテコの原理で最小限の力で緩める事ができる伸縮可能なレンチもナットを緩める時にオススメの工具です。
緩める時はトルクレンチを使用しない方は良いのですが、これを使用すれば必要以上にトルクをかけてしまってトルクレンチを壊してしまう心配もありません。

薄口ロングソケット

ストロングレンチやトルクレンチに付属しているソケットが薄口であれば必要が無いですが、社外ホイールによっては厚口のソケットが入りにくかったり傷が付きやすい製品もあるので、傷防止用のロングソケットがあれば手締めや締め付けが楽になります。

フロアジャッキ

普通車で1か所ずつタイヤ交換をする際に、ホイールベース間のジャッキアップポイントを使用してタイヤ交換をするのであれば、2t用のフロアジャッキを使用するのがオススメです。
1.5tは軽自動車であっても車高によっては上がりきらない可能性もあるので、普通車も上げられる2t用が良いでしょう。

ローダウン車の場合は、ローダウンジャッキじゃないとジャッキアップポイントにジャッキが入らない場合があるので、ローダウン車対応のフロアジャッキがオススメです。


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