HDDやSSDを最大9台搭載可能で、ハードウェアを効率よく冷却する200mmファン2基と12基の120mmファン、最大480mmの水冷クーラー用ラジエーターも搭載可能な自作パソコン向けフルタワーATXケース、Cooler Master HAF700をレビューします。
記事内の目次
巨大なATXフルタワーケースCooler Master HAF700のレビュー
Cooler Master HAF 700 E-ATX対応 フルタワー PCケース H700-IGNN-S00 CS8710
Cooler Master HAF700のサイズ
Cooler Master HAF700の外形寸法は、自作パソコン向けATXフルタワーケースの中でも巨大な部類に入る、長さ666 x 幅291 x 高さ626 mmで、今まで大きいと思っていたミドルタワーケースAntec Nine Hundred Twoよりもはるかに大きく、本体重量も19.6kgほどあります。
大きさと重量共に、設置場所を選んでしまう大型ケースとなってしまっているため、設置予定場所の寸法や耐荷重を事前に計測しておく必要はありますが、エアフローやメンテナンス性も考慮すると、側面と背面に+15cm~20cmぐらいの余裕は見ておいた方が良いと思います。
Cooler Master HAF700の外観
巨大フルタワーケースCooler Master HAF700の色はホワイトとブラックの2色から選べますが、基本的な構造とデザインは全て共通となっております。
最大6台の120mmファンが取り付けられるアッパーパネル
大型メッシュパネルを備えたアッパーパネルは、120mmファンであれば最大6台、140mmファンであれば最大で3台を取り付け可能、200mmファンも2台取り付け可能なエアフローを最大限に考慮した設計になっております。
他の通気口や隙間への埃の付着を防止する観点から、吸気と排気のバランスを考えてファンを取り付けるか取り付けないかを一考する必要はあるかもしれませんが、水冷サイドラジエーター仕様ではトップファンがあっても無くても変わらなかった。
また、ツールレス仕様の外観の中で唯一ねじ止めがされている部品ではありますが、背面のネジを外して後方にパネルを引いて持ち上げれば、容易に取り外しが可能なツールレス仕様となっております。
電源とサイドファンの排気口を備えた右サイドパネル
右のサイドパネルには、裏側に取り付けられるATX電源ユニットとサイドファンから導かれた廃熱を処理するための大型通気口が設けられており、内蔵ハードウェア間の熱溜まりや廃熱の再循環を防止する役割を果たしてくれます。
また、右サイドパネルもアッパーパネルを取り外した状態でパネル上部を手前に引けば、ツールレスで取り外せる仕様になっていおります。
PC内部を魅力的に見せるスケルトン構造の左サイドパネル
左サイドパネルは大型強化ガラスを備えたスケルトン構造のパネルとなっており、PC内部を魅力的に見せる他、パネルを外さなくても水冷ユニットやファンの稼働状態、ASUS Q-LED等のハードウェアモニタリング機能を容易に確認する事ができます。
固い物をぶつけたりメンテナンス中にパネルを倒してしまうと、ガラスが割れてしまう可能性もあるため、HAF700の中で特に取扱いが必要な部品となっております。
200mm空冷ファンを標準搭載するフロントパネル
通気性を最大限に確保した全面メッシュのフロントパネルから見える2基のフロントファンは、「HAF 700」専用の200mm SickleFlow ARGB PWMファン”Performance Edition”となっております。
1個につき102.8 CFMの大風量をPC内部に送風をする事ができますが、最大ノイズレベルが15.7dBAに抑えられているため、フロントファンが発する騒音は全く気にならないレベルです。(風量と騒音レベルの参考値は、SickleFlow 200 ARGB PCケースファン MFX-B3DN-08NP2-R1 FN1734)
また、フロントパネルはアッパーパネルとサイドパネルを外した状態で下にあるレバーを引けば、工具無しで取り外せる仕組みになっているため、埃が詰まっても容易に徹底清掃をする事ができます。
ほとんどのPCは、フロントパネルが外せなかったり、固定ネジ数本とロックを外さないと取り外せない場合が多いため、メンテナンス性も考慮されているのが非常にありがたい。
実際に以前使用していたAntec Nine Hundred Twoも、空冷ファンにアクセスするまでの脱着過程が割と大変だった。
フロントパネルの左側に電源スイッチとリセットスイッチ、オーディオジャックが備えられ、右側にはUSB 3.2 Gen 1 Type-A端子(SS5)4つとUSB 3.2 Gen 2 Type C端子(SS10)1つが備えられています。
フロントパネルのUSB端子はマザーボード上のUSBピンヘッダを使わなければいけないのですが、USB Type-A端子は1つのコネクターから2つに分岐されているため、内蔵のピンヘッダが1つしか無ければ使用可能なUSB端子は2箇所に制限されてしまいます。
また、Type-C端子もマザーボード上にUSB3.2 gen2スロットが無いと使えなくなる事に注意が必要です。
120mmファン2台とツールレスPCIスロットを備えたリアパネル
リアパネルには、120mm SickleFlow ARGB PWMファンを2基標準搭載し、工具を使わずにPCIスロットに取り付けたグラフィックボード等のハードウェアを容易に脱着できるツールレスPCIブラケットを搭載。
PCIスロット横のレバーを引けばロックが外れて、PCIスロットに挿入をした拡張ボードを容易に脱着する事ができます。
それ以外の場所は、ほぼ全面が通気口になっており、吸気と排気のバランスが悪くなってもそれ以外の場所が排熱を逃がして、内部に熱が溜まりにくい構造になっております。
背面のマザーボード取付パネルは脱着が出来ない構造になっているので、内部のエアフローは基本的に正圧としておいた方が隙間などに埃が詰まりにくく、脱着可能な部品の洗浄のみで済むかと思います。
Cooler Master HAF700にハードウェアを取り付ける
電源ユニットは奥行き200mmサイズで干渉の可能性あり
電源ユニットは、CorsairのHX1200を取り付けていますが、このPCのハードウェア構成に対してオーバースペックすぎるぐらいなので、ここまで容量が大きいユニットは取り付ける必要がありません。
HDD取り付けの際に別途説明をいたしますが、ケーブルカバー裏面スペースに取り付けたHDDと電源ユニットのコネクターが干渉してしまう事もあるため、長さ200mmの電源ユニットは選ばない方が良さそうです。
実際にCorsair HX1200のマザーボード24ピンコネクタとHDDが干渉してしまって、3.5インチHDDを取り付けられない場所が生じていました。
裏側配線スペースは電源ユニットと同じぐらいの奥行きがあるため、ほぼ全てのケーブルを裏配線で処理をする事ができます。
ドライブベイにストレージを取り付ける
電源ユニットの上部は回転式の3.5インチHDDx4台または2.5インチSSDx4台を取り付けられるドライブベイになっており、背面スペースの容量も大きいHAF700が得意とするところでもあります。
4つ全てを埋めてしまうと、回転式ドライブベイの重みでロックが外れてしまいやすくなる欠点もありますが、右側サイドパネルを閉じてしまえば何とか押し込む事はできました。
また、ファンのレイアウトや吸排気状態によっては、下側ハードディスクが電源ユニットの熱の影響を受けやすくなってしまう事も気になる所。
背面には、ARGB(アドレサブルRGB) GEN2コントローラーとファンハブとARGBコントローラーが付属しますが、ファンハブはマザーボード上のシャーシファンコネクタ1ヶ所からの分岐となって連動するため、個別の回転速度制御は行えない仕様になっております。
ケーブルカバー裏面ブラケットにはツールレスでストレージの脱着が可能なゴムが取り付けられており、ストレージ裏側のネジ穴の位置に合わせて調整をする事ができます。
3.5インチハードディスクを2台取り付けて収めた時には問題がありませんでしたが、後でマザーボードの24ピンコネクタが干渉する事が判明してからは下側ハードディスクを取り外してしまっています。
マザーボードと水冷ユニットの取り付け
水冷クーラー仕様にする場合は、サイド、上下、前方後方の5か所から好みの場所にラジエーターを取り付ける事ができますが、取り付けるストレージの数によってはサイドラジエーター仕様が最も拡張性が悪くなってしまいます。
今まではPC外部にステンレスボックスを外付けして内部に480mmラジエーターや水冷ユニットを取り付ける、完全外付け仕様としていましたが、これをHAF700に移植するとなると、サイドラジエーター仕様しか選択肢がありません。
この構成では、側面に取り付けられるはずの3台のストレージと水冷リザーバーなどが行き場を失ってしまうため、ボトムやトップにも取り付けられる420mmサイズ以内のラジエーターに抑えておくのがオススメです。
マザーボードはMini-ITX, Micro-ATX, ATX, E-ATX, SSI-CEB, SSI-EEBに対応しているため、取り付けられないマザーボードはほぼ無いと思っておいても良いでしょう。
裏配線が楽に出来た分、ATXサイズマザーボードを使用した場合は、水冷ユニットが無いと割とスカスカに見えてしまう印象は受けました。
ちなみに水冷ユニットは、爆熱Core i7 970の時に購入をしてから継続使用していたもので、グリスバーガー仕様CPUでは全く無意味な冷却性能となっておりました。
リザーバーやHDDの取り付け
ボトムスペースに取り付けられている回転式ラジエーター/ファンブラケットのロックを外すと、フロントパネルやアッパーパネルに設けられているラジエーター/ファンブラケット取り付けスペースに移設させる事も可能です。
こちらもサイドラジエーター仕様にすると干渉してしまう場所が生じてしまうため、やはり480mmラジエーターを取り付けてしまうと、拡張性がかなり制限されてしまう要因になってしまいます。
回転式ラジエーター/ファンブラケットにHDDマウントパネルを取り付けてHDDとリザーバーを取り付けていますが、別途リザーバー取り付け用ネジ穴やブラケットがあれば良かったのが少々残念。
水冷ユニットに取り付けるホースの位置を決める
空冷仕様であれば、ファンを取り付けてPWMとARGBコネクターを接続すれば済みますが、水冷仕様の場合は各水冷ユニット同士をチューブで接続しなければいけません。
水枕(ウォーターブロック)→ラジエーター→リザーバー→ウォーターポンプの順番に接続して、ポンプからラジエーターまで圧がかかって必ずリザーバーに空気が溜まるようにしないと、エア噛みで充分な水流を確保できない場合もあります。
水冷用チューブはAmazonや楽天市場でも販売されていますが、安価なものだと折れやすかったり、固すぎて扱い難いなどのトラブルもあったようなので、水冷ユニットを販売しているメーカー製か販売店から購入をするのがオススメです。
私の場合は、ホームセンターで見つけた特殊耐寒チューブを試験運用しておりますが、下は-55℃までの耐寒性、上は一般的なPVCホースと同じ65℃前後までの耐熱性があり、厚みもあって曲げても折れにくくなっております。
寒冷地仕様のホースである事に不安はありますが、Amazonの低評価がやばいやつよりはマシかと思う・・。
見た目がかっこいいハードチューブ仕様も考えてはいましたが、万が一のトラブル時のメンテナンス性を考慮して、今回は見送りとなりました。
脱着するパーツの中で唯一プラスネジ2つで固定されている部分になりますが、アッパーインナーパネルも取り外す事が出来るので、上から手を入れて作業をする事も可能なのです。
起動準備からチェックまで
裏配線をまとめたがHDDは下側が干渉
裏配線をまとめてHDDを2台取り付けた配線カバーを取り付けますが、ここでATX電源ユニットの24ピンコネクターとハードディスクが干渉してしまう事が発覚。
長さが200mmの大容量電源であれば同じようなトラブルに見舞われるかもしれないので、配線カバー下側にもHDDを搭載するのであれば、奥行き180mm以下のATX電源を選んでおいた方が良いかもしれません。
とは言っても、最近は1000W以上の大容量電源でも奥行き200mmオーバーのATX電源が販売されていない傾向にあるので、選んでしまう事の方が少ないとは思います。
行き場を失ったハードディスクは、ラジエーター裏のエアフローを犠牲にして一番下に取り付けをいたしましたが、グリスバーガーと水冷ユニットの組み合わせであればファンが1個減っても2個減っても多分変わらない。
ハードディスク取り付け用ブラケットは、サイドファン/ラジエーター取り付け部裏側と回転式ボトムパネル共通の部品になっているので、ラジエーター裏のHDD用に1枚、ボトムパネルのHDDとリザーバー用に2枚使用しています。
クーラントはThermal takeの色が綺麗なブルーを使用
冷却液はThermaltakeのT1000 Transparent Coolant Blue 1000mlを採用。
前回マザーボードとCPU一式を入れ替えた後に、急遽間に合わせで自動車用クーラントを使用していましたが、5年近くそのままトラブル無しで運用は出来ていたけど、流石に今回は見た目も大事なフルタワーケースなので、パソコン専用品をAmazonで購入をしました。
じょうごを使った方が手っ取り早いのですが、大柄な480mmラジエーターでも1ℓ全量を使うほど中には入らなかったようなので、ホームセンターで購入をした洗浄ビンで溢れないように注水をいたしました。
アッパーパネルを外せる構造のおかげで、ラジエーターを取り付けた状態でも上から冷却水を注入が出来るので、ここでもメンテナンス性の良さが生きております。
Thermaltake T1000 Transparent Coolant Blue 1000ml 水冷キット用 クーラント 冷却水 HS1323 CL-W245-OS00...
起動チェックが完了したら減った冷却液を継ぎ足す
ラジエーターとリザーバーを冷却液で満たす事が出来たら、いよいよ起動チェックです!
電源投入直後は、ウォーターポンプから大きな音がしてしまう場合もありますが、エアがリザーバー側に押し出されてくれれば、音が小さくなって冷却水の循環が正常に行われるようになります。
もし音が小さくならない場合は、CPUが熱暴走を起こしてしまう原因となってしまうため、ポンプよりもリザーバーを高い位置に持ち上げて空気をリザーバー上部に押し出す必要があります。
エアが完全に抜けたようでしたら、減った分の冷却水をリザーバー内に注入して、残った埃などを飛ばしてしまえば、内部の組み立ては完了です。
埃飛ばしには、Amazonで売っている電動エアダスターがオススメです!約1年ほど使用していますが、部屋の埃飛ばしや洗車後の水飛ばしなどにも重宝しているオススメのアイテムです!
起動後のARGB点灯状態とエアフロー
念のためベンチマークソフトで一通りチェックをしておく
PCを起動したらOCCTなどのベンチマークテストで負荷をかけて、異常が無いかをチェックしておいた方が良いでしょう。
Intel CPUの第8世代までは、ソルダリングをしていないダブルグリスバーガー仕様になっているので、Cooler Master HAF700のエアフローの良さでも、90℃以上の高温になるのがi7 8700の正常であって異常でもあります。
13世代CPUの不具合の件もあるので、インテルCPUは別途購入しているゲーミングノートPCが最後で、次からは多分AMDのCPUを入れると思う。
その後、オフモールで安いcore i7 9700Kが中古で販売されているのを見かけたので後日換装。
今の所は48倍以上には上げられておりませんが、常用オーバークロックで4800MHzに設定した際のCPU温度は、最高でも83℃程度に抑えられております。
第8世代から9世代にかけて、グリスバーガー仕様からソルダリングに変更された影響は絶大で、オーバークロックをしても10℃近い温度低下を確認する事ができました。
フルロードでベンチマークをかけていても、オーバークロック中のCPUとGPUの熱の影響を受けずに、マザーボードの温度がほとんど変わっていないのは、HAF 700のエアフローが良好である事の証。
セットで付属してくる200mmファン2基と120mmファン3基に、移植した水冷ユニットを内蔵させただけでも充分なぐらい、排熱を効率よくケース外に逃がしてくれています。
虹色に光るARGBファンが綺麗
フロントパネルは、200mmのARGBファン単体の光だけではなく、メッシュ全体が虹色に光っているように見える様子がとても綺麗です。
ファンの光り方はデフォルトでレインボーになっていますが、Cooler Master純正ソフトウェアのMaster Plus+を使用すれば、光り方や色・速度を自由に変更させる事ができます。
内部は480mmラジエーターに取り付けたARGBファンの主張が強すぎるが、フロントファンの大きさとの釣り合いを取るならば、このぐらい主張が激しすぎるファンの方が良いのかもしれません。
HAF700に付属したARGB Gen2対応ファン以外に使用したファンは、Amazonで購入をしたEZ-DIY FabのARGBファンではありますが、Master Plus+上からはコントロールが出来なかった。
ソフトウェアのウェブページを見てみると、対応しているのは互換性のあるCooler master製ファンや水冷ラジエーターのみがMaster Plus+上からコントロールできるARGB Gen2への対応となっている点については注意が必要です。
ケースに付属した5台のファンを認識しているので、ソフトウェア上からはARGB Gen2に対応したパーツを1台ずつ個別に設定できるようになります。
また、CoolerMaster製ARGBパーツを個別に設定できるソフトウェアMaster Plus+は、公式ウェブサイトから無料でダウンロードができます。
まとめと購入リンク
決して安くはなく、大柄なフルタワーケースではありますが、スタイルだけではなく、拡張性の高さやツールレスで脱着できるパネルを全面に使用している機能性の高さも選ぶポイントとなりました。
- とにかく光るかっこいいフルタワーケースにしたい
- ハードディスクやSSDを大量に搭載したい
- メンテナンスや清掃が容易なケースが欲しい
- エアフローを改善してオーバークロックに挑戦したい
など、パソコンの機能面だけではなく、見た目にもこだわりたいようなオーバークロッカーやゲーマーなどの他、内部ストレージが大量に必要な動画編集者にも特におすすめしたいATXフルタワーケースがCooler Master HAF700です。
Cooler Master HAF 700 E-ATX対応 フルタワー PCケース H700-IGNN-S00 CS8710
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