山形県山形市の蔵王温泉スキー場で見られる、冬の風物詩「蔵王の樹氷」の見どころを紹介します。蔵王連峰の厳しい気象条件が生み出す樹氷は、まるで巨大な雪の彫刻のような姿から「スノーモンスター」とも呼ばれ、蔵王ロープウェイの地蔵山頂駅周辺では、白銀の樹氷群が広がる美しい冬景色を楽しめます。夜には色鮮やかな照明で樹氷を照らし出すライトアップも開催され、昼間とは異なる幻想的な景観を鑑賞できます。今回は、蔵王の樹氷ができる仕組みや見頃の時期、樹氷ライトアップの魅力を、実際に撮影した写真や動画とともに紹介します。
蔵王の樹氷が見れる名所への行き方
山形県山形市にある蔵王温泉は、古くから「奥羽三高湯」のひとつとして親しまれてきた歴史ある温泉地で、硫黄の香りが漂う温泉街には多くの旅館やホテルが立ち並び、冬にはウィンタースポーツを楽しむ観光客で賑わいます。
この蔵王温泉に広がる蔵王温泉スキー場は、良質なパウダースノーと変化に富んだゲレンデが魅力の東北最大級のスノーリゾートで、標高1,736メートルの地蔵山周辺から山麓に向かって滑走できるコースも整備されています。スキー場の上部には、蔵王連峰の特殊な気候によって形成される樹氷群が広がっており、スキーやスノーボードをしない観光客でもロープウェイを利用して鑑賞できます。
蔵王の樹氷を間近で見るには、蔵王ロープウェイの蔵王山麓駅から山麓線に乗車し、樹氷高原駅で山頂線に乗り換えて、標高1,661メートルの地蔵山頂駅へ向かいます。山麓駅から山頂駅までは乗り換えを含めて約20分で、天候に恵まれればロープウェイの車窓からも雪に覆われた山々や樹氷原の景色を楽しめます。
乗り換え地点となる樹氷高原駅は標高1,331メートルに位置しており、山麓と比べて積雪が多く、周囲の針葉樹も雪や氷に覆われています。さらに山頂線で標高を上げていくと、樹木の枝葉に付着した氷や雪が次第に厚くなり、独特の形をした樹氷が姿を現します。
樹氷が出来上がる理由とは?
蔵王の樹氷は、その巨大で独特な形から「スノーモンスター」や「アイスモンスター」とも呼ばれる自然現象で、蔵王連峰の気象条件とアオモリトドマツという針葉樹の存在によって形成されます。
冬の東北地方には、日本海から多くの水分を含んだ冷たい季節風が吹き込みます。この季節風は朝日連峰を越え、山形盆地を通過して蔵王連峰の西斜面にぶつかると、山の斜面に沿って上昇しながら冷やされ、雪雲を発達させます。
この雪雲には、気温が氷点下になっても凍らずに液体の状態を保っている「過冷却水滴」と呼ばれる小さな水滴が含まれており、強い季節風によって運ばれた過冷却水滴がアオモリトドマツの枝や葉に衝突すると、その瞬間に凍り付いて氷が成長していきます。
これが「着氷」と呼ばれる現象で、さらに氷の隙間に雪が入り込む「着雪」と、氷や雪の粒子が互いに結び付いて固くなる「焼結」を繰り返すことで、樹木全体が厚い氷と雪に覆われていきます。
特に蔵王の山頂付近では、冬になると氷点下10度前後の厳しい寒さと強い季節風が続くため、樹氷が風上に向かって徐々に成長し、やがて樹木本来の姿が分からなくなるほど大きな雪と氷の塊へと変化します。このようにして、同じ形がひとつとしてない蔵王特有の樹氷群が作り出されるのです。
蔵王の樹氷の見どころ
蔵王の樹氷は、11月から12月にかけて着氷や着雪が始まり、1月には成長期を迎え、2月頃になると大きく発達した樹氷群が見られる最盛期となります。3月に入ると気温の上昇によって樹氷が徐々に細くなり、融解や倒壊が進む衰退期を迎えるため、蔵王の樹氷の見頃は例年1月下旬から2月頃が中心となります。
今回訪れたのは、樹氷が衰退期を迎え始める3月上旬でしたが、山頂付近にはまだ多くの樹氷が残っており、青空と真っ白な雪に覆われた樹氷群が広がる美しい風景を楽しめました。
ただし、蔵王の樹氷が形成される地域は冬の季節風が非常に強く、雪や濃霧によって視界が遮られる日も少なくありません。樹氷の最盛期であっても、天候によっては目の前の樹氷すら見えなくなることがあり、晴天の中で広大な樹氷原を眺められるかどうかは、その日の気象条件に大きく左右されます。
私自身も何度か現地を訪れましたが、悪天候で撮影を断念したこともあり、ようやく視界が開けた日に樹氷群を撮影できました。3月上旬とはいえ山頂付近は依然として厳しい冬の環境にあり、青空の下で樹氷の造形美を鑑賞できたことは、何度も足を運んだからこそ味わえた貴重な体験となりました。
地蔵山頂駅周辺から眺める蔵王の樹氷群は、天候に恵まれると白銀の山々と無数の樹氷が連なる雄大な景観を楽しめるため、冬の東北を代表する自然風景の撮影スポットとしても魅力的な場所です。
幻想的な樹氷ライトアップ
蔵王では毎年12月下旬から2月下旬頃にかけて、指定日に樹氷ライトアップが開催されます。昼間は白銀の世界が広がる樹氷原ですが、夜になると色鮮やかな照明によって樹氷が闇の中に浮かび上がり、まるで別世界のような幻想的な雪景色へと変化します。
この蔵王の樹氷ライトアップは、日本各地の優れた夜景を認定する「日本夜景遺産」のライトアップ夜景遺産にも認定されており、自然が作り出した巨大な氷と雪の造形物を光で演出する、蔵王ならではの冬の観光イベントとなっています。
2019年から2020年にかけての樹氷ライトアップは、2019年12月28日から2020年2月29日までの期間中、指定された47日間に開催される予定で、点灯時間は17時から21時まで、ロープウェイの上り最終時刻は19時50分となっています。
※2019~2020年シーズンのライトアップ開催日程については、樹氷ライトアップホームページよりご確認下さい。
蔵王の樹氷ライトアップを鑑賞する際に注意したいのが、山頂付近の厳しい寒さです。ライトアップの開催時期には氷点下10度以下まで冷え込むこともあり、風が強い日には体感温度がさらに低くなるため、スキーウェアや厚手の防寒着、防寒手袋、帽子、防寒性の高い靴などを準備しておく必要があります。
観光気分で軽装のまま訪れると、ロープウェイを待つ時間や屋外での鑑賞が想像以上に厳しく感じられることもあるため、長時間ゆっくりと樹氷を楽しみたい方は、十分な防寒対策をしておくことをおすすめします。
地蔵山頂駅には暖房のあるレストランや休憩できる施設もあり、寒さが厳しくなった際には屋内で体を温めることができます。ただし、悪天候によってロープウェイが運休したり、ライトアップが中止されたりする場合もあるため、出発前には天候や運行状況を確認しておきましょう。
特にカメラを持参して樹氷の写真や動画を撮影する場合は、寒暖差によるレンズの結露に注意が必要です。氷点下の屋外で冷え切ったカメラを急に暖かい室内へ持ち込むと、レンズやカメラ本体に結露が発生することがあるため、密閉できる袋に入れるなどして温度変化を緩やかにする対策が有効です。
また、デジタルカメラやスマートフォンに使用されているバッテリーは、低温環境では一時的に性能が低下し、残量が十分にあるように見えても突然電源が切れてしまう場合があります。予備バッテリーやモバイルバッテリーを用意し、使用するまでは防寒着の内ポケットなどで保温しておくと安心です。
蔵王の樹氷 関連動画
大自然の奇跡! 蔵王の樹氷ライトアップ 2021
2021年に撮影した蔵王の樹氷ライトアップの映像です。1回目は悪天候のため撮影を断念し、2回目は中腹まで何とか見えたものの山頂付近の視界が悪く、3回目の訪問でようやくライトアップされた樹氷群を撮影できました。色鮮やかな光に照らされた樹氷が浮かび上がる幻想的な夜の風景を、動画でお楽しみください。
Ice Monster 山形蔵王の樹氷ライトアップ 日本の風景 東北の雪景色
2013年2月に撮影した蔵王の樹氷ライトアップの映像です。この日は天候にも恵まれ、暗闇の中に浮かび上がる美しい樹氷群と、色彩豊かな照明が作り出す幻想的な夜景を撮影できました。
蔵王の樹氷は、限られた気象条件と植生によって形成される世界的にも珍しい自然現象であり、昼間の白銀の景色だけでなく、夜のライトアップでも異なる魅力を楽しめます。冬の山形観光や蔵王温泉への旅行を計画している方は、温泉とともに大自然が作り出す樹氷の造形美を鑑賞してみてはいかがでしょうか。
蔵王の樹氷 交通アクセスや料金情報
| 所在地 | 東北地方|山形県山形市蔵王温泉 蔵王ロープウェイ地蔵山頂駅付近(標高1,661m) |
| 期間 | 2019年12月28日~2020年2月29日(樹氷ライトアップ・期間中の指定日47日間) 開催期間はこちら 通常営業:原則年中無休(天候や点検などによる運休あり) |
| 時間 | 8:30~17:00(山麓線)・8:45~16:45(山頂線) 17:00~21:00(樹氷ライトアップ・上り最終19:50) |
| 料金 | 大人(中学生以上)3,000円・小人(小学生)1,500円(地蔵山頂駅までの往復料金・2019~2020年シーズン) 障がい者割引:5割引(適用条件あり) |
| 駐車場 | 蔵王ロープウェイ山麓駅付近に駐車場あり 冬季は平日無料、土・日・祝日および年末年始は普通車1日1,000円(当時の料金目安) |
| 交通アクセス | 山形自動車道・山形蔵王ICから西蔵王高原ライン経由で車約30分 JR山形駅から蔵王温泉行き路線バスで約40~45分 蔵王温泉バスターミナルから蔵王ロープウェイ山麓駅まで徒歩約10~15分 |
| マップコード | 569 572 054*88(蔵王ロープウェイ山麓駅) |
| 関連ウェブサイト | 蔵王ロープウェイ |
宮城県側から蔵王温泉へ向かう場合、蔵王連峰を横断する蔵王エコーラインは例年11月上旬から翌年4月下旬まで冬季閉鎖となるため、冬の期間は宮城県側から山形県側へ通り抜けることができません。仙台方面から訪れる際は、山形自動車道の山形蔵王ICから西蔵王高原ラインを経由するルートなどを利用し、積雪や路面凍結に十分注意して走行してください。











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